上流階級の秀才青年が自殺したという新聞記事から始まり、すぐそれが他殺だと修正報道される。
それから六ヶ月前に遡って、どう彼が過ごしたか描かれる。ルイ・マルの「鬼火」同様、死ぬことが決まっている追青年の目に世界がどう映ったか、を追体験する構成になっている。
実質的に自殺なのに、人に頼んで殺させるのはキリスト教的というか、殺す側の荒廃が生々しい。
それにしても、フランスの青年は良い家の出でも、格好はオシャレじゃないね。
環境破壊のフィルムを見るシーン(水俣の映像も出てくる)がかなり多いのだが、アザラシを撲殺するあたりは一瞬なんかひっかかる。
ブレッソンの文体は相変わらず、という以上につき詰めたものだが、今ではかなり共有されてきたように思える世紀末感覚の始まりといった感じ。
それにしても、ブレッソン作品の主演女優はタイプがいつも共通していて、必ずうなじが丹念に撮られる。