prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「恋の罠」

2010年05月21日 | 映画

R指定で原題が「淫乱書生」だから、どんなエロが出てくるかと思ったら、猥褻な映画ではなく猥褻についての映画という感じでした。

李王朝の謹厳な官吏が取り締まりでエロ本を手にしたところから自分もエロ本にのめりこみ、自分で書くようになったらこれが評判になり、さらに挿絵画家も巻き込んで、といった艶笑譚だけれど、一方で宮廷のやたら息苦しい抑圧的な雰囲気がよく出ているので、のめりこむ心理に説得力がある。
王や王妃ですら、というか、だからこそ一番抑圧されていてそれを下々を振り向ける構造も明確。

抑圧されればされるほど逆に反発し、それが体制に対する反抗と人間性の発露に自然につながってくる展開だが、ただし主人公の作品が人気作家に比べていまいち受けないのを「気取っているから」と版元に言われるのと似た感じがこの映画自体にもあり。

美術・衣装や撮影が贅沢で見ごたえがある。

体位を表現するのに髭面の男を相手にして実演してみせたり、机の上に小さな人間のイメージが現れて人体の構造上ムリだろと思わせる交合図をしてみせるのが可笑しい。

李王朝にも宦官(宮殿の内侍を行う内侍府)がいて、陰険に陰謀を巡らせたりするのが、国全体の上に中国が乗っかっているのをうかがわせる。
(☆☆☆★)