音楽が何十曲も流れ、カメラが縦横に移動し、めぐるましくカットが切り替わり、といったスコセッシのいつものスタイルは完全に息をひそめ、静止ショットの端正な積み重ねで成り立っている。
それだけに斬首シーンのカメラの動きや編集の鮮やかさが目に残る。
階段の大俯瞰、日本に近づく船の大俯瞰に「神の目」がちらっと匂う。
ポルトガル人の話なのに英語で通しているというのは妙で、一番違和感あるのはポルトガル人かもしれない。多分吹き替えになるのだろうが。
通詞役の浅野忠信など相当な長台詞をこなす。
セットや照明など日本人スタッフは基本入っていないけれど(エンドタイトルではもっぱら中国名が並ぶ)違和感なし。
イッセー尾形の意味不明の笑みを浮かべながら丸め込もうとしてくる井上筑後守がうやむやさと暴力をふるう時の容赦のなさ、要するに日本的な体質をよく出した。
窪塚洋介のキチジローが一度だけ転んでおしまいではなくて何度も戻ってきては許しを乞いまた転ぶ繰り返しというのがうっとうしくも、リアリティがある。
「市民ケーン」風のラストといい、棄教したようでしきれないのが信仰なのかもしれない。
異教徒がキリスト教徒を拷問し斬首する図というのは、アメリカでは下手するとISあたりとごっちゃにされはしないかと心配になる。
(☆☆☆★★★)
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