prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「ビリー・リンの永遠の一日」

2020年07月24日 | 映画
一時劇場公開が見込まれていたのだけれど、結局見送られてビデオスルーになり、CSで見ることになった。BS12でもやったらしい。

アン・リー監督作とすると「ジェミニマン」に先立ち毎秒120フレームの映像を部分的に採用したもので、上映できる映画館が限られたという事情もあったようだが、出来が今一つということもあるのではないか。
いずれにせよ、単純にテレビ画面で見ている分にはあまり関係ないが。

イラク戦争で英雄扱いされ、アメフトのハーフタイムに行われる国威発揚のアトラクション・ショーに駆り出される羽目になった小隊を、そのひとり若いビリー・リンの主観でイラクの体験などを交錯させながら描く。

テーマとすると「父親たちの星条旗」や、もっと遡ればそれこそ「西部戦線異常なし」などの、戦場に行きもしない連中ほど「英雄」を戦争宣伝に使いたがり、戦場の悲惨さの実体験を否定したがるご都合主義を描いているわけだが、過去と現在を行き来する構成がどうも持ってまわった感じで、もうひとつピリッとしない。

とはいえ、アメリカ国内でハンバーガー焼いているより軍隊にいた方がマシというあたりや、おそらく故郷では見たこともないような御馳走を見せられて何ともいえない顔をしているあたりはヒリヒリした実感が出た。

ショーの仕掛けで花火が破裂したりガスが噴出したりするとPTSDを抱えた兵が発作を起こすあたりに、国威発揚の傲慢と無神経が典型的に出た。

ショーに三人の女性歌手が駆り出されてその中の一人がビヨンセというのだが、実物のビヨンセ自身ではなく、Elizabeth Chestangという人がやっていてほとんど後ろ姿なのが微妙に中途半端。

安い言葉を並べても金をちゃんと出すかどうかで本心がわかるというのは、最近の日本のコロナ禍での医療関係者の待遇にも通じる。