prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「はちどり」

2020年07月25日 | 映画
ヒロインが通う習字塾の先生が書く、日本人ならたいてい読めるくらいの漢字を生徒は読めないくだりがある。
韓国ではある時期から漢字をやめてハングル一本にしたものだから、昔の文献が読めなくなった弊害が出たというが、先生の本棚にマルクスの「資本論」が置いてあるのが目を引く。
漢字だから日本人には読めるが、韓国人にはわからないことも多いのではないか。
この女性教師がどういう経緯で今の境遇にいるのか、暗示するヒントというわけだろう。

学校の教師がカラオケ行くならソウル大学に行けとうるさく連呼させるのが日本でもありそうでもっと徹底している。
父親や兄など男がかなり平気で妻や妹に手を上げたり大声を出す男尊女卑の感じも同様。

ロングに引いた画がよく決まっている。全体にアップが多い(中学生の女の子だから産毛が生えた肌がきれい)ので、時にはさまるロングがいいアクセントになる。

ヒロインが左利き(それでキャスティングしたわけでもないだろうが)なのが何気に周囲との違和感になっている気もする。

淡々とした調子で画面が展開していって、かなり唐突に断ち切るように違う局面になる。叔父がいきなり来ていきなり帰っていくところに始まり、同性愛的な感情を吐露した後輩がいきなり嫌いになったりで、もっとも衝撃的な出来事も唐突に起こるがそれはいったん淡々とした時間に還元され、未来への予感として残る。