轢き逃げにまつわる関係者を包括的、総覧的に描くのは意外と珍しい。
加害者一方でも被害者一方でもない。強いて言えば全員が不幸になる。
ひき逃げする中山麻聖と同乗者の石田法嗣がなんだかBLみたいにじゃれあっている感じ。大企業のサラリーマン同士がそうそう仲良しでばかりでいられるのかという気もする一方で、少なくとも若いうちは意外とありえるかもとも思う。
岸部一徳など監督兼出演の水谷豊が「相棒」以来つきあっている俳優も当然全然違う役で出てくるわけだが、やはり前からのつきあいというのは厚みが出るみたい。
神戸の風景、特に高台からの眺めが魅力的。冒頭の空撮や車をフロントから突き抜けるショットなどカメラワークが凝って摑みに生かしているが、その後はそれほどカメラは目立たなくなり、役者中心の演出になる。