prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「悪人伝」

2021年02月18日 | 映画
刑事とヤクザの親分が協力して連続殺人鬼を追う、という基本的なアイデアが抜群で、ここで半分勝ったようなものだが、それ以上どの程度積み上げたかというとやや疑問が残る。

刑事とヤクザが半ばバディになる可笑しさの一方、本当に馴れ合ってしまっては緊張感がなくなってしまうわけで、どこに着地するのにはかなり苦心した様子が見られる。

韓国は死刑制度はあるのだが実際には執行しないという微妙なスタンスをとっていて、連続殺人鬼が逮捕されても事実上死刑にはならないわけで、逮捕しないでブチ殺してしまっては刑事の立場がなくなり、かといって逮捕したらのうのうと生き長らえることになる。

この矛盾を解消する方法というのは正直かなりムリがあって、細かくは言えないが、刑事にそこまでの法的権限はないだろうとは思った。

逮捕から裁判にかけてのフラッシュバックの使い方が説明そのものでまだるっこい。
殺人鬼を追い詰めたところでぴしっと決着をつけるのが本当だったろう。

そういう細かいことを言わないでマ・ドンソクの大暴れを楽しめばいいかというと、刑事の顔も立てないと根本的に成り立たない設定だから困ってしまう。

とはいえ、韓国犯罪ものの常でとにかくワルたちの顔がいい。脇の脇まで一癖ある顔が揃っている。

ドンソクの叩いてもならぬ刺されても死なないタフガイぶりと変な愛嬌を楽しむ分には十分。