オープニング、走る長距離列車の中でマイケル・ケインがレイモンド・チャンドラーの「さらば愛しき女よ」を読んでいるので、ハードボイルドをやろうとしているのかと予感したらほぼ的中。
ちなみにこれはシナリオ段階で指定されている。
ハードボイルドというのはこの場合まず映画の文体で、タイトルバックで列車の先頭に取り付けたカメラがトンネルに入って画面が黒くなると文字が出る、それと列車の客室で起きていることのカットバックするのがなんともスタイリッシュでさりげなく格好いい。
ロイ・バッドの音楽がまたイギリスならではの味を出す。
兄を殺した相手を追って復讐するのが基本的なプロットではあるのだが、肉親との情愛といったものの描写は画面に現れず、「マルタの鷹」で相棒を殺されたらその犯人を始末しなくてはいけないといった法則・掟といったドライな感覚が先立つ。
マイケル・ケインのクールな佇まいと、特に女に対する酷薄な表情が他の人では出せない味わい。