役所広司のヤクザ役というのはこれまでもいくつもあったが、まじめに更正しようとしているのとそれを食い破って凶暴さが噴出してきそうなのが、それもシーンによって演じ分けているのではなく同居していて絶えずせめぎ合っているのが何ともスリリング。
ヤクザというほど腹をくくっていないチンケなワルが気の弱い相手に嫌がらせや居直りやカツアゲをしているのを見るとすぐカッとなってしまうのが、見ているこちらもむかっとくるから腹が立つのはわかるし、そこでぐっとこらえなくては社会人として生きていけないのがどこかおかしいのも確かで、主人公だけでなく見ているこちらも揺れてくる。
脳にどこか障害があるのではないかという仮説をテレビマンが追う、とか、母親を探したりといった脇筋に入るが、それで全部説明したりしないでそれらを含めて丸ごと人間を捉えている。
カップラーメンを作る時にプラスチックのまな板なんてでかい物で蓋をするのがなんとなく可笑しい。