「ジョーズ」のクイント船長(ロバート・ショウ)が語っていた太平洋戦争中の巡洋艦インディアナポリス号の史実をもとにした一作。
広島に投下する原爆を運んだインディアナポリス号が帰途日本軍の潜水艦の魚雷攻撃を受けて撃沈され584名もの犠牲者を出した事件だが、ウィキによるとサメによるものより救助の遅れによる体力の消耗による死亡者の方が多かったらしい。
その後、艦長がジグザグ航行をしなかった、と判断ミスを非難されて軍法会議で有罪とされたが、日本側の橋本以行(はしもと もちつら)伊号第五十八潜水艦長の証言でたとえジグザグ航行をしていても撃沈できたと証言したという話になる。
このあたり、公式的な記述をそのままなぞったような展開で、初めの方に撃沈シーンを出してしまっているので、見た目の派手さという点ではその後あまりぱっとせず、裁判での論点ももとから無理筋という感じで、なんでそういう無理筋を押し付けられたのかといううまく通っていない。
戦後すぐに日本軍人がアメリカの軍事法廷に証人として出廷したというのにちっょとびっくり。
駆逐艦と潜水艦の館長同士の対話シーンなど「眼下の敵」風なのだけれど、そこに行くまでのプロセスがすっとばされているのであまり説得力がない。
原爆投下によってアメリカの勝利と終戦がもたらされたと米市民たちが喜ぶ描写は、実際そんな調子だったのだろうが見ていていい気持ちはしない。
監督はマリオ・ヴァン・ピーブルズ。俳優出身で「黒豹のバラード」「ニュー・ジャック・シティ」など黒人としてのアイデンティティーに立脚した作品も作っていたが、一方でテレビなどでは職人仕事も多いみたい。これも後者の系統。