prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「地上最大の脱出作戦」

2021年02月27日 | 映画
この映画は小林信彦の「世界の喜劇人」で「脚本に関する限りこれ以上ないほど面白くできている」という記述で知って、また脚本が「エクソシスト」を書く前のウィリアム・ピーター・ブラッティであることも予備知識として持っていた。

ブラッティというとなんといっても「エクソシスト」の原作脚本製作の人という印象が今では圧倒的に強いので、こういうコメディを作っていたのは意外だった。
ホラー作家が、たとえば楳図かずおが「まことちゃん」を描いたりすることはあるが、それとも違う。
他にも同じブレイク・エドワーズ監督で「暗闇でドッキリ」も書いていて、「銃口」「暁の出撃」といったコメディでない映画でも組んでいる。

第二次大戦中のイタリアの田舎町で連合軍枢軸軍ともにまるでやる気のないまま戦争するふりだけする、というのをいかにも諷刺ですといった調子ではなくナンセンスで描いているのが画期的で、戦争とはまるで関係なく二人組の泥棒が地下トンネルを掘ってまわっていて時々穴が地面にぼこっと空くが戦争中なので誰もおかしいと思わない、という調子。

乱痴気騒ぎの描写が盛大で、大勢が町中で西部劇のサルーンの乱闘をもっと大がかりにしたような乱闘をやらかすなど、ブレイク·エドワーズは「グレートレース」でもやっていたが、相当好きみたい。

ただ「この映画が傑作になりそこねたのは脚本が画期的であるほどには演出と編集が画期的ではなかったためである」という評言を引用して終わりというのもなんだが、実際そうなっている。