「それでも夜は明ける」などの主演で知られる俳優キウェテル・エジョフォーの初監督作品で、主人公の少年の父親役で出演もしている。
舞台はアフリカでも最貧国のマラウイで、干魃や洪水など不安定な水事情に悩まされている農地に安定的に水を導くべく風車を独学で作った少年の実話に基づく感動作。
オープニングの葬儀の風景から衣装や踊りなどが過剰なエキゾチズムや物珍しさを排して美的に描かれていて引き付ける。
ロケ効果が秀逸で、乾いた大地も風車が回る風景も魅力的。
エジョフォー自身黒人なわけだが、生まれはロンドンで正規の演劇教育を受けローレンス・オリヴィエ賞の受賞経験もあるキャリアの持ち主で、アメリカの黒人俳優とはやや立ち位置の違いを感じさせる。
つまりアメリカ黒人だとどうしても奴隷の子孫という白人の原罪がついてまわるが、アフリカからイギリスに渡ってきた黒人の子孫となると差別はあるにせよもう少しアフリカとの距離が近く、ストレートに感動話を顕揚できるみたい。
直接選挙による大統領制だそうだが実質独裁で、食物を分け与えない政府を集会で批判した老人を大統領の護衛がよってたかって殴る蹴るの暴行を加える場面など、形骸化した選挙による独裁政治を典型的に見せる。
学校が授業料を払わない生徒を教室から締め出すばかりか図書館を利用するのも禁じる官僚的な対応で、それを突破する主人公がそれなりに汚い現実的な手を使うのがリアル。