土屋太鳳のヒロインは大金持ちの医者と結婚して玉の輿に乗ったという点ではシンデレラだが、同時に医者の連れ子のまま母を務めるという点ではシンデレラのまま母の女王でもある、というシンデレラ物語の解体と再生に工夫が見られる。
ヒロイン自身が子供の頃に母親に捨てられていて、自分がその母親と同じことをするのではないかという畏れが一つの芯になる。
大金持ちの生活を描くのにケバめの原色を多用していて、赤青黄の服を着た三人が現代美術が並んだ浜辺で踊る場面など面白い絵柄。
細かいところで省力と暗示を効かせている演出には光るものがある。
場違いな環境に飛び込んでしまい、じわじわと心理的に締め付けられるサスペンス映画というと「レベッカ」をはじめいろいろあるが、途中からそういうジャンルムービーに回収されるのを拒否するかのようにかなり思いきって飛躍した展開に向かうが、伏線こそ張っているけれどラストなど正直かなり無理やり気味で匠気がかって見える。残念。