prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「月下の恋」

2017年02月07日 | 映画
製作総指揮の一人がフランシス・フォード・コッポラ、監督がルイス・ギルバート、原作がジェームズ・ハーバート、といったかなり不思議なメンツの組み合わせだけれど、見終えて一番印象的なのはこれがほぼ初主演の当時22歳の白い肌に黒髪、赤い唇のコントラストがはっきりしたケイト・ベッキンセールの美貌ということになる。

ホラー系とすると「アンダーワールド」のヴァンパイア役が有名だけれど、この頃から容貌は完成していて20年以上経った今でもあんまり変わらないのだから、当人がヴァンパイアなのではないかなどという冗談が出たりしている。
SLの蒸気の向こうから現れる登場シーンから堂に入っていて、出てくる男全員が夢中になるというのも納得。

心霊現象否定派の学者が人里離れた美女一人と男三人が集まった(これ自体がすでに奇怪)屋敷にやってきて、そこで数々の超常現象に遭遇していくわけだけれど、プロットに割と大きな仕掛けがしてあって、ラスト近く冒頭で描かれる学者の水死した双子の妹が絡んでくるあたり、ベストセラー作家らしいメリハリの効いたお話の作り方。

ハーバートというとナスティ(お下劣な)・ホラーといった形容をされることが多いどぎつい描写が得意な人だけれど、ここでは直接的なおぞましい描写は避けて古典的なゴシック・ホラーに寄せている。ベッキンセールがいたずらして脅かすシーンでNasty girlなんて言われ方をするのにちょっと片鱗が残っているみたい。
火災シーンの視覚的な派手さ、音響がよく出来てます。

ギルバートだとわかりやすさ先行で、あまり美的に凝ったところは見せず、撮影は「日の名残り」「アンダーワールド」のトニー・ピアース=ロバーツだけれど良くも悪くも画面はくっきり明るい。
TSUTAYA発掘良品にて。




2月6日(月)のつぶやき

2017年02月07日 | Weblog

「スノーデン」

2017年02月06日 | 映画
海兵隊に入隊したころのスノーデンが愛読書としてアイン・ランドの「肩をすくめるアトラス」を挙げていたのが意外だった。もうアメリカのリバタリアン御用達の小説のはずだから。紀伊国屋で見た邦訳を見るとまあ枕になりそうなとんでもなくぶ厚い本(1270ページ!)なので手を出す気はないが。
政府は個人のやることに口を出すべきではない、という点では思想的に実は変わっていないのかもしれない。

「フルメタル・ジャケット」調の訓練シーンや、モニターの文字列が顔に投影されている「2001年宇宙の旅」みたいな処理、HALの目のようなモニターのレンズのアップなどキューブリックばりの映像が散見する。一種冷ややかな世界の感触を出そうとしてか。

スノーデンの育ての親のようなトム・ウィルキンソンが突然大きなモニターに映って現われる時、あまりモニターが大きいので現実に現れたように見え、それが次第に「モダン・タイムズ」のサボるチャップリンを怒鳴りつける社長のように巨大化して恫喝するシーンが、映像の威圧性を端的に見せて印象的。

政府にとっての安全保障とは「テロリスト」に限ったことではなくて全国民、というより全世界の情報を握ることに他ならず、日本が同盟国でなくなったらただちにインフラを停止できるというあたりは、正直知っていることではあるけれど改めて気持ち悪くなる。
アメリカの一種の中国化というのが今に始まったことではないということか。

スノーデンがてんかん持ち(というのは事実らしい)でテグレトールを服用しなくてはいけないのを頭の働きが鈍るのがイヤだとやめてしまい何度か発作を起こすのが、昔この病気が悪魔が憑いたとも聖性を表すものとも考えられたのと、スノーデンの立場とが結びついてくる感じ。

オリバー・ストーンとすると前ほどせかせかカメラを動かしたりカットをむやみと割ったりせず割とじっくり見せるようにしているのはありがたい。毎度のことながら単純化が過ぎる感じはするが、この場合ストレートに監視社会に対して反発するのは当然と思える。

ドローンによるミサイル攻撃で巻き添えをくっている人がいるのがはっきり写っているのにぞっとする。見えているはずなのにいないことにされている人と、メディアに現れる人間との落差というものを考える。
(☆☆☆★★)

スノーデンの警告「僕は日本のみなさんを本気で心配しています」

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2月5日(日)のつぶやき

2017年02月06日 | Weblog

「未来を花束にして」

2017年02月05日 | 映画
洗濯工場で働いていたヒロインがイギリスの女性参政権を獲得する運動にふとしたきっかけから参画し次第に本格的な活動家になっていく話。

公安による弾圧はまるっきり非合法活動の取り締まりそのもので、女性たちのデモを警棒をふるって制圧したり、刑務所内のハンガー・ストライキに対して押さえつけて無理やり流動食を鼻から流し込む(窒息しないか?)といった凄惨な描写が多い。

周囲からも白眼視され職を失い家から追い出され息子も養子に出されると悲惨な展開で、さらに弾圧されたことで行動がエスカレートして爆弾を作って破壊活動するに至っては、いささか引いた。
今でこそ当たり前みたいになっている権利を獲得するのにここまでの犠牲を払ったのかと思わせるが、一方で女性たちの行進が実現するきっかけというのが死者が出たからというのは、なんだかすっきりしない。

スパイを作ろうとするなど公安のやり口の陰険さ、周囲の無理解や偏見など今でも通じるところは多い。

エンドタイトルで世界各国の女性参政権が確率した国とその年号がずらっと出るのだけれど、日本が入ってないのは見逃したのだろうか。それともスルーされたのか。

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2月4日(土)のつぶやき

2017年02月05日 | Weblog

「アラビアの女王 愛と宿命の日々」

2017年02月04日 | 映画
イギリスの上流階級に生まれて才色兼備でイギリスのどこの出先機関だろうがアラビアのどこの部族だろうがモテモテなヒロインが、最初に恋に落ちた良さげな男がギャンブル狂で借金を抱えているのを理由に父親に反対されて結婚できないうちに事故死(ということにされたがおそらく自殺)したのを引きずってついに生涯独身で通し、それがきっかけなのかどうかおよそ西洋世界にとっては未知の中近東を旅してまわるという、どうもノリにくい話。

ニコール・キッドマンならそりゃモテモテでしょうよと思うが、砂漠を旅し続けてお肌つるつるってどうよ。

アラビアの部族の描き方も「アラビアのロレンス」批判本が何冊も出ているような現状で五十年一日のようでは困ります。ラストの字幕でヒロインが部族間の境界線を引いたって出るが、それ後年のトラブルの元ではないか。

砂漠の風景は綺麗だけれど、70mmで見ている目には4Kだからどうという感じはしない。ドローンを使ったのだろう大俯瞰ショットは新鮮。

ロバート・パティンソンがロレンス役で出てくるのにびっくり。実際のロレンスは黒髪だから容姿はピーター・オトゥールより近いとはいえるし、変人ぶりはよく出ているが、イメージを壊すことが目的化しているみたいな感。

ヘルツォークとしては辺境でロケしたがる志向は満足させられたか知らないが、クラウス・キンスキーと組んだ時のような辺境をものともせず突破していくデモニッシュな迫力は出ようがない。
(☆☆★★★)

アラビアの女王 愛と宿命の日々 公式ホームページ

映画『アラビアの女王 愛と宿命の日々』 - シネマトゥデイ

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2月3日(金)のつぶやき

2017年02月04日 | Weblog

「沈黙-サイレンス-」

2017年02月03日 | 映画
タイトルに合わせたのかどうか、音楽がほとんど使われていない。メイン・タイトルでもエンド・タイトルでも虫の声などが流れるだけなのだが、十曲くらいの曲名がクレジットされるのだから不思議。

音楽が何十曲も流れ、カメラが縦横に移動し、めぐるましくカットが切り替わり、といったスコセッシのいつものスタイルは完全に息をひそめ、静止ショットの端正な積み重ねで成り立っている。
それだけに斬首シーンのカメラの動きや編集の鮮やかさが目に残る。

階段の大俯瞰、日本に近づく船の大俯瞰に「神の目」がちらっと匂う。

ポルトガル人の話なのに英語で通しているというのは妙で、一番違和感あるのはポルトガル人かもしれない。多分吹き替えになるのだろうが。

通詞役の浅野忠信など相当な長台詞をこなす。
セットや照明など日本人スタッフは基本入っていないけれど(エンドタイトルではもっぱら中国名が並ぶ)違和感なし。

イッセー尾形の意味不明の笑みを浮かべながら丸め込もうとしてくる井上筑後守がうやむやさと暴力をふるう時の容赦のなさ、要するに日本的な体質をよく出した。

窪塚洋介のキチジローが一度だけ転んでおしまいではなくて何度も戻ってきては許しを乞いまた転ぶ繰り返しというのがうっとうしくも、リアリティがある。
「市民ケーン」風のラストといい、棄教したようでしきれないのが信仰なのかもしれない。

異教徒がキリスト教徒を拷問し斬首する図というのは、アメリカでは下手するとISあたりとごっちゃにされはしないかと心配になる。
(☆☆☆★★★)

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2月2日(木)のつぶやき

2017年02月03日 | Weblog

「マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ」

2017年02月02日 | 映画
「フランセス・ハ」のグレタ・ガーウィグが主演、ニューヨークを舞台にして何をしたいのかよくわからないでふらふらし時々とんでもない真似をやらかすヒロインというところは一緒。結構やっていることははた迷惑でも見ていて頭に来そうでなんとなく許してしまうキャラクター。

子供の扱いはうまいのだな、自分が子供みたいなところがあるせいか。
風呂の中でシャボン玉を吹くシーンなど妙にメルヘンチック。

画面作り、インテリアがニューヨーク式にオシャレ。

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マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ|映画情報のぴあ映画生活

映画『マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ』 - シネマトゥデイ



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2月1日(水)のつぶやき

2017年02月02日 | Weblog

2017年1月に読んだ本

2017年02月01日 | 
prisoner's books - 2017年01月 (20作品)
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1月31日(火)のつぶやき

2017年02月01日 | Weblog