曇り,19度、85%
11月最後の週は日本の家にいました。まだ今年はひと月以上残っていますが,年内にこの家に帰って来る予定はありません。北風で庭が散らかることも承知で庭の掃除をします。家の中は拭き清めました。最後に,心ばかりのクリスマスとお正月の設えをします。
一昨年,香港の家の家具と本の一部を日本の家に送り返しました。その荷物の中に,クリスマス用の刺繍の額を入れました。 この刺繍を刺したのは息子がまだ幼稚園に入る前の頃ですから,ゆうに30数年。麻の生地がやや黄ばみ始めています。刺し上がって額に入れて飾ったこの額をしばらく眺めていた息子が,「かか,このネズミのシッポがないよ。」と左右対称にいるネズミの片方を指して言いました。未だに片方のネズミのシッポはないままです。時計台の下の飾り棚に入れました。
日本と香港を行ったり来たりのこの飾り棚には、イエス誕生の刺繍の額です。初めて金糸を使って星を指しました。金糸と麻布は引っかかりが多くて今でも一番気を遣う糸です。
最後は座敷の床の間に、ああ、何年ぶりでしょうか,お軸を掛けました。改築中に荷物をお預けしていたところで,カビをいっぱい付けて戻って来たお軸です。1年かけて,カビと匂いを除きました。壷はお軸の色に映えるように,伊万里の白磁を置きました。この白磁、彫が入っています。同じ方の作で飯盒もありました。白磁の飯盒にご飯が盛られることはなく,専ら水盤代わりに花を入れました。母のことでお世話いただいた方にお礼に差し上げ飯盒です。先日お会いしたら,大事に使ってくださってるとのこと、なによりです。
一つ一つが持つ思い出を胸に温めながら、いつかこの家でクリスマス,お正月を主人と迎える日が来ることを思います。
今頃あの家の中で聞こえるのは、時計の静かな時を刻む音だけです。