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3日前、東京に出張に行っている主人からメールが入りました。「イギリスの女流陶芸家の本をお土産に買いました。」「誰かなあ?ルーシーリーかな?」と返事を出すと「ルーシーリーです。」と返って来ました。嬉や嬉し、主人が本を持って帰って来るのを楽しみに待ちました。
今年はルーシーリーが亡くなって20年目だと聞きます。6年ほど前には新国立美術館で大きなルーシーリーの展覧会もありました。ルーシーリーの作品を日本に大々的に紹介したのは、デザイナーの三宅一生さんです。生前のルーシーリーとは交流があったと何かで読んだことがあります。フォルムの美しさばかりか、書き落としといわれる技法の模様付け、私が一番魅かれるのは数少ないブルーやピンクの器です。
6年前には朝早くから並んで新国立美術館での展示を観ました。どの作品も繊細さと併せ持つ静かなルーシーリーの世界を感じました。バーナードリーチは初めはルーシーリーを「ボタン作り」と呼び、彼女の作品を認めなかったという話も有名です。「ボタン作り」、作品が売れなかった頃ルーシーリーは陶器のボタンを作ってお金を稼いだそうです。この陶器のボタンも幾つか展示で観ました。陶器のボタンを作るという発想にも驚きましたが、小さなボタンにもルーシーリーの世界が詰まっています。このボタンを料理家の後藤加寿子さんが箸置きに使っていらっしゃるのを見た事があります。日本の箸がルーシーリーの控えめなボタンと一体になった様は素敵です。
深いブルー、静かなピンク、こんな色を何処から見つけ出して来たのかと思うほどルーシーのブルーとピンクは心が鎮まる色合いです。つい先日、日本の女流陶芸家小関康子さんが同じようなピンクの色を出しているのを知りました。ティーポットです。ルーシーの焼き物には手が出ませんが、これなら買えるかなと調べます。小関康子さんのピンクのティーポット、私のような人が多いのでしょう、売り切れでした。
この重たい写真集を携えて帰って来た主人は、まだルーシーリーの実際の焼き物を見た事がありません。東京に出張で戻るのは屢々ですが、美術館に足を運ぶ時間もないほど忙しく戻って来ます。一日に3軒もの美術館を廻る私は、この写真集を主人と見ながらすまなく思いました。主人は実はルーシーリーではなく、カルバッジョの画集を買おうと思ったのだそうです。パラパラとめくってどうも今ひとつと思ったとか。カルバッジョは実際に観るとその迫力に押されますが、画集では伝わってこないのでしょう。
陶作の時は、いつも真っ白な上下でろくろに向かっていたルーシーリー、若い頃も美しいのですが、93歳で亡くなる少し前のルーシーリーのろくろの前での横顔に一番魅かれます。