曇、28度、90%
「肉まん」「豚まん」「中華まん」などと呼ばれるおまんじゅう、食が細かった小さい頃より好物の一つです。昔は冬にしかない食べ物でした。そして、我が家では「ポーズ」と呼んでいました。冬になると「ポーズ」ののぼりが上がる中華屋さんがあり、道に面して売っていました。湯気の匂いと温かさが「ポーズ」の記憶です。
「維新號」のポーズに出会ったのは40年以上前、東京に出てからのことです。渋谷の西武デパートの地下に売られていました。当時、「ポーズ」にこんなお値段というくらいお高いものでした。まだグルメなどという時代ではありませんでした。「肉まん」だけではありません。野菜の入った饅頭、ごま餡が入った饅頭、大きさといいすっかり魅せられました。
私が30年住んだ香港は中華圏ですが、「肉まん」的な饅頭はありません。広東料理です。飲茶で出てくるチャーシュウの入った饅頭、カスタードクリームの饅頭、黒胡麻のあんの饅頭、いずれも小ぶりな饅頭です。大きな饅頭は中国の北部に行けば街角の庶民の食べ物です。特に寒い冬の朝、仕事に出かける人たちは湯気の立つせいろの前に並びます。その列に混じって、「シイタケの饅頭」や「青菜の饅頭」を買いました。みんなと同じように立ったまま頬ばります。美味しいこと。一つでお腹がいっぱいになるほど大きくてお安い饅頭です。
それでも日本に帰ると、「維新號」の饅頭を買って帰りました。何が違うのか、皮はしっかりとしています。中の具もたくさん入っています。息子が日本に戻って以来、「維新號」の肉まんを買っても香港には持ち帰りませんでした。息子、息子の家族にお土産にしました。先日の上京の折、自分ために「維新號」の肉まんを買いました。
欲しかったのは、肉まん、ごまマン、野沢菜の饅頭でした。ところが私のすぐ前に買っていた人は、「ごまマンをあるだけ全部ください。」と言って買って帰られました。ですから、肉まんと野沢菜の饅頭を買いました。決して電子レンジでは温めません。せいろで15分、その間にウーロン茶の封を切ってお茶の用意をします。
野沢菜の饅頭は、真ん中にエビと貝柱がコロリと入っています。
肉まんは半分に割っても中の肉は形のまま割れません。かれこれ10年以上も食べていなかった「維新號」の肉まんです。
一口食べては、 ウーロン茶。このウーロン茶の選択は間違いでした。「維新號」の肉まんには日本茶の方が合うように思います。お腹いっぱい。
久しぶりの「維新號」、ずっと思っていたよりはお味が濃く感じます。甘辛いというのか、以前からこんなお味だったかなとまで思います。今では、「維新號」の肉まんよろ大きくお値段もいい肉まんがたくさんあります。甘辛いなあと思いながらも、「維新號」の肉まんに寄せる思いは憧れかもしれません。