検索していて、気になった本をまとめて予約していましたが、
先日全部図書館で借りてきました。
重い本を何冊も借りてしまいました。
そのうちの1冊は「ノモレ」
南米の先住民の一人に密着取材したルポルタージュです。
昔、その男ロメウの先祖らは、奴隷として、黒人や白人の下層貧民らと一緒にこき使われていた所から逃亡し、
アマゾン川の上流へ、より深いジャングルへと逃げている時、ある場所で二手に分かれ、そこで「いつかきっと再会を」と約束して生き延びたそうです。
現在は川の傍で、先住民としての生活の場所をある程度確保し、学校や病院などへも行くようになり、半自給生活を送っていますが、
「息子たちよ仲間を探してくれ・・・」と祖父らから頼まれた言葉を決して忘れることはありませんでした。
「ノモレ」とは「仲間」という意味です。
ある日、川の上流で裸族のうわさを聞き、
そしてついに・・・
『ノモレ』
国分拓 著 2018年 新潮社
2冊目は「アスベストス」
著者自身、ずっと電気工事士として現場で仕事をしていたために、アスベストの被害者です。
穏やかな筆致で、文字数も少ないのでどんどん読めてしまいますが、
いつものように読み飛ばしてはならない気がしてしまいます。
アスベストの害が明らかになってからも、きちんとした禁止措置を行わず、責任を問わず、
長く放置して、アスベストの処理方法について法律も行政も後手後手で、
ただ、患者が苦しんで亡くなるのを待っているとしか思えない国のやり方は、
水俣病などのへの対応と全く同じです。そしてまた福島の被災者に対しても全く同じ。
この本は、4つの短編からなっています。
そのうちの一つは、古いマンションをリフォームしようとして、天井板に「アスラックス」の文字を見つけ、気になって調べる夫婦の話。
最後の短編は、抽選で5階建てのマンションの5階が当たり「エレベーターはないけどええ風が入る・・・」と喜んだ家族は、
30数年後、近くの「クボタ」工場から排出されるアスベストの粉塵のために、家族で一番元気だった次男が、
夢の実現を前にして、無念の言葉を残し、中皮腫で苦しんで亡くなるのです。
現在もたぶんあちこちにアスベストが使われたままになっていると思われます。
アスベストを吸い込んでもすぐに症状が現れないために「静かな時限爆弾」と言われますが、
そのために、多くの人がすぐそばにアスベストがあっても、別に何とも思わない状況が今も続いています。
自然の中に無尽蔵にあって、とても便利な物質、と思えるものが、実は、生物(人間に)恐ろしい作用をもたらします。
考えてみれば、放射能もそうだし、水銀や鉛や銅や、石油も、使い方を誤れば、生物の命を奪います。
人はいつかもっと賢くなるのでしょうか?
『アスベストス』
佐伯一麦 著 2021年12月 文芸春秋社
図書館では、なるべく滞在時間を短くしたいので、
今は大抵、予約して、本が揃ったら借りに行くようにしています。
次回は、もう少し気楽な本を予約することにしようかなと思いますが、
この本「アスベストス」は、多くの人に読んでもらいたいと思います。