夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『われらが背きし者』

2016年10月27日 | 映画(わ行)
『われらが背きし者』(原題:Our Kind of Traitor)
監督:スザンナ・ホワイト
出演:ユアン・マクレガー,ステラン・スカルスガルド,ダミアン・ルイス,
   ナオミ・ハリス,ジェレミー・ノーサム,ハリド・アブダラ他

前述の『シネマ歌舞伎 スーパー歌舞伎II ワンピース』
大阪ステーションシティシネマで観終わったのが10:50。
いつもはなかなか来ないエレベーターがラッキーなことにすぐに来て階下へ。
地下鉄御堂筋線梅田駅に小走りで向かい、なんばまで。
TOHOシネマズなんばにて11:25上映開始の本作に余裕で間に合いました。

原作は2010年(日本では2012年)に刊行されたジョン・ル・カレの同名ベストセラー。
ル・カレは1931年生まれですから、御年85歳。
1961年のデビュー以来ずっと、長くとも数年おきには作品を発表しています。
しかもどれもそこそこ以上に評価が高い。
ル・カレに駄作なしということでしょう。これってすごくないですか。

そしてル・カレ作品が映画化されると、客席に“おひとりさま”がやたらと目立つ。
この日もオンライン座席予約しようとしたら、
中央に通路のあるやや小さめのシアターで、通路寄りの端っこほぼ全席予約済み。
端っこを取り損ねた客を見ても、おひとりさま率90%以上(笑)。
ひとりでゆっくり観て余韻に浸りたい、そんな気分にさせられるのかもしれません。
ちなみに男性が圧倒的に多いんです。男心にグッと来るにちがいない。

英国人の大学教授ペリーは、自らの浮気が原因で妻ゲイルとの仲がぎこちない。
関係修復を図るため、休暇を取ってモロッコへとやってくる。
レストランでふたり、ゆったり優雅な食事をするはずが、
弁護士で高給取りのゲイルに仕事の電話が入り、ペリーはひとり取り残される。

ぽつねんと座るペリーに声をかけてきたのが、別卓の客でロシア人のディマ。
見るからに羽振りのよさそうなディマから一緒に飲もうと誘われ、同席する。
翌日、自宅で開くパーティに招かれて断れずに出席すると、
ディマから思いも寄らぬ相談を持ちかけられる。

ディマはロシアンマフィア資金洗浄を担当しているらしい。
組織の幹部とは長らくいい関係を築いてきたが、
新しくボスとなったプリンスは自分が儲けることしか考えていない。
プリンスの儲けのじゃまになる者は即消され、次はディマがその命を狙われている。
そこでディマは自分と家族の安全のために英国への亡命を希望。
組織の情報が入ったUSBをMI6に届ける役目をペリーに頼みたいと言うのだ。

ゲイルに話せばきっと反対されるだろう。
ペリー自身も危険なことに首を突っ込みたくはないが、ディマの家族のことが気にかかる。
戸惑いつつも役目を引き受けたペリーがMI6に接触を試みたところ、
空港へやってきたMI6のヘクターとその助手ルークは半信半疑。
しかしUSBを精査した結果、これはもの凄いネタだと知る。
これでペリーの御役御免と思いきや、ディマはその後もMI6との面会にペリーの同席を望み……。

シビレました。
ペリー役のユアン・マクレガーは年を取ってさらに色気を増しています。
そもそもが浮気で妻を泣かせている男の役なわけで、その辺りも含めると、
同じくル・カレ原作の『裏切りのサーカス』(2011)のほうがずっと男くさい。

が、どちらかといえば軟弱なペリーが必死でディマの家族を助けようとする姿にグッ。
ステラン・スカルスガルド演じるそのディマも、ただのオッサンのはずが、
自分の家族のみならず、プリンスのせいで孤児になった双子のために命を張る。
もはや家族以外は誰のことも信じられなくなっていたディマが、
会ってまもないペリーのことをなぜ信じる気になったのかなど、
シリアスな中でもウィットに富んだ会話がとても楽しい。
ゲイル役のナオミ・ハリスの脚は美しすぎて目が釘付けに。

ル・カレですから、最後は万事ハッピーエンドとは行きません。
そこがまた男気にあふれていて泣けます。ニヤリとできるオチもいい。
もう1回観たいかも。

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