夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『デトロイト』

2018年02月02日 | 映画(た行)
『デトロイト』(原題:Detroit)
監督:キャスリン・ビグロー
出演:ジョン・ボイエガ,ウィル・ポールター,アルジー・スミス,ジェイソン・ミッチェル,
   ジャック・レイナー,ベン・オトゥール,ジョン・クラシンスキー,アンソニー・マッキー他

次年度に繰り越せない分の有休消化続行中。
休みを取っている日に、仕事に行く日より早く家を出て映画ってどうよ。
だけど結構早くお腹もスッキリしたし、家にいるのはもったいない。
とっとと家を出て、TOHOシネマズ梅田で8:30上映開始の本作を。

TOHOシネマズ梅田の中では小さめのシアター6
構造としてはシアター4や5よりは横広でない分マシですが、
シアター6も後方の中央寄りでなければかなり観づらい。
ここで上映される作品は、集客をさほど見込めないものが多いんです。
そういう作品だとわかっていて観にくる人がほとんど。

ところが、そんなシアターの、しかも朝イチだというのに、
最後列に座る男性2人組が、ワケわからんと観にきた様子。
上映前の会話から想像するに、親方と弟子という感じ。
近くの席に座っていた人に、「今から何の映画があるんですか」と尋ねています。
おそらく天候の都合でその日の仕事が中止になって、
ちょうどいい時間帯だった朝イチの回、何でもええやと入ったのか。

もう本編が始まるでという時間になって親方らしき人が
「なぁ、ビール飲みたない?」
「要りませんよぉ。なんすか、飲みたいんすか」。
「おぉ、俺ちょお買ってくるわ」。

普通、暗転した劇場でそれだけ喋られたら迷惑というものですが、
なんかものすごく可笑しくて、腹が立つどころかめっちゃ微笑ましい。
きっとふだんは映画を観る機会がないのでしょう。ぜひ楽しんで。

と、長い前置きになりました。
キャスリン・ビグロー監督はあのジェームズ・キャメロン監督の元妻。
『ハート・ロッカー』(2008)で史上初の女性による監督賞受賞。
『ゼロ・ダーク・サーティ』(2012)も高く評価され、いまや元夫よりも売れっ子かも。

本作は、1967年の“デトロイト暴動”のさなかに起きた事件に基づく。

1967年7月のある夜、デトロイト市警は違法酒場を摘発する。
そのやり口が非情だったものだから、摘発現場を目撃した住民たちが反発。
警官隊に向かって石を投げはじめ、暴動が拡大してゆく。
周辺の店では略奪や銃撃戦が繰り広げられ、時間が経っても鎮まる気配なし。
デトロイト市警のみでは対処できなくなり、ミシガン州軍が現地へ派遣される。

その頃、地元で人気のモータウンバンド“ザ・ドラマティックス”が
ライブパフォーマンスをおこなうためにホールで待機していた。
座席にはスカウトの姿もあり、レコード会社との契約も叶いそう。
期待に胸膨らませて出番を待っていたのに、警察から避難の指示が出る。
バンドでボーカルを務めるラリーとその親友フレッドは、泣く泣く場を離れ、
暴動地区からは少し離れたモーテルに部屋を取る。

一方、警備会社に勤務するディスミュークスは、
略奪を案ずる食料品店から夜通しの警備を依頼される。
食料品店は、モーテルの窓からうっすらと見える通りに位置していて……。

ラリー、フレッド、ディスミュークス、皆、黒人。
黒人の居住区にある街だから、モーテルの宿泊客も黒人ばかり。
でも、白人の家出娘も2人いて、事態はさらにややこしく。

荒波立てず、真面目に毎日を送るディスミュークスは、上手い生き方も心得ています。
それは決して白人に媚びるということではなく、
勤務中の白人に何気なくコーヒーを差し入れて状況を聞く。
そんな彼もモーテルで騒動が起きると駆けつけざるを得ず、巻き込まれる悲劇。

皆がみんな人種差別主義者ではないし、良心を持つ人もいっぱいいる。
だけどこんな暴動のなかではおおっぴらに良心を見せることもできず、
裁判になれば陪審員は全員白人。白人に対して有利な評決しか出ないのが常。

ディスミュークスを演じるのは、“スター・ウォーズ”のフィン役、ジョン・ボイエガ
淡々とした演技がとても良い。
えげつない警官役には『リトル・ランボーズ』(2007)の悪ガキ役が懐かしいウィル・ポールター
う~ん、この顔はやっぱり悪役向き。

ところで、最後列の親方と弟子はその後どうしたかと言うと、
時折話しながらも一応は静かに142分、鑑賞していました。
終盤にお手洗いに立った親方。戻ってきたときの弟子の言葉に笑いました。
「うわぁ、今めっちゃええシーンあったのに。
なんでこんなときに便所行くんすか」。同感(笑)。

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