夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『羊の木』

2018年02月11日 | 映画(は行)
『羊の木』
監督:吉田大八
出演:錦戸亮,木村文乃,北村一輝,優香,市川実日子,水澤紳吾,田中泯,松田龍平,
   中村有志,安藤玉恵,細田善彦,北見敏之,松尾諭,山口美也子,鈴木晋介他

『アバウト・レイ 16歳の決断』を観た大阪ステーションシティシネマから
TOHOシネマズ梅田へ移動して。
両劇場の上映終了時間と上映開始時間がピッタリ同じだったハシゴとは異なり、
10分間の余裕があります。それでも10分かい(笑)。

原作は山上たつひこ・いがらしみきお共作の同名コミック。
山上たつひこって、『がきデカ』の人でしょ!?いや~、懐かしい。
“クレしん”などにもその影響が見られるということに納得。
で、私には「がきデカ」のイメージしかない山上さんが、
こんなミステリーな漫画をお描きになっているのですね。
と思ったら、小説家として本作を書き、作画はいがらしさんに任せているのか。

吉田大八監督、わりと好きです。
『桐島、部活やめるってよ』(2012)、『紙の月』(2014)、
『美しい星』(2016)、どれも面白かった。
若手だと思っていたら、もう54歳だったとは。
映画監督デビューする前に、CMディレクターとして活躍されていた時期が長いようです。

過疎化が進む港町・魚深市(架空の都市で、ロケ地は富山県魚津市)。
市役所に勤務する月末一(錦戸亮)は、新規転入者6名の受け入れ手配を担当することに。
転入者などほとんどいない同市に、なぜ同時期に6名も?
訝る月末に、上司はこっそりと事情を話す。
性別も年齢もバラバラな6名は全員、仮釈放中の元受刑者
身元引受人になりたがる者もいない彼らの社会復帰を支えるため、
自治体が積極的に受け入れようという、政府の極秘プロジェクトだと。

しかし6名は、自分以外に元受刑者がいることを知らない。
お互いにそれを知ってよからぬことが起きぬよう、
彼らが接触せぬように努めるのも月末の役目となる。

列車の駅、空港、刑務所、それぞれがやってくるのを出迎える月末。
福元宏喜(水澤紳吾)、太田理江子(優香)、栗本清美(市川実日子)、
杉山勝志(北村一輝)、大野克美(田中泯)、宮腰一郎(松田龍平)。
彼らが何事もなく10年間ここで過ごせば、刑期は大幅に短縮されて釈放となる。
6名の罪状がよりによって殺人だと知るが、平静を装うしかない。

そんな折り、村を出て行った幼なじみの石田文(木村文乃)が帰郷する。
ずっと片想いしていたのに打ち明けられないままだった月末は、
ここぞとばかりに文をバンドの練習に誘うのだが……。

6名それぞれのキャラクターに合った配役が面白い。

それ以上によかったのは、田中泯演じる大野の受け入れ先、
クリーニング店を営む内藤朝子役の安藤玉恵
『探偵はBARにいる』のウェイトレス役にはいつも笑わされますが、
この口は悪いけれど人情に厚い女将さん、大好きです。

ネタバレですけれど、
客が減ったことを気にする大野が「自分のせいですか」と問うのに対し、
朝子は怒った口調で「そうよ、あんたのせいよ」。
続けて、「だけどあんたはちっとも悪くない」。泣けてきました。
福元の受け入れ先の理髪店店主の言葉も同様に泣かせます。

どうにかして更生しようとする人。
懲りずに暇つぶし程度に悪事を考える人。
生まれついての殺人者。
人は等しく生きる権利があるとしても、同じようには生きていけない。

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