『たちあがる女』(原題:Woman at War)
監督:ベネディクト・エルリングソン
出演:ハルドラ・ゲイルハルズドッティル,ヨハン・シグルザルソン,ヨルンドゥル・ラグナルソン他
シネ・リーブル梅田で4本ハシゴの4本目。
こうしてレビューを書くと、スタッフやキャストの名前に笑ってしまう。
絶対に覚えられそうにない名前ばかり。
アイスランド/フランス/ウクライナ作品です。
アイスランド作品って面白い。
『レイキャヴィク・ホエール・ウォッチング・マサカー』(2009)なんて
ぶっ飛びのワラけるホラー作品がありました。
すっかりハリウッドの人になったバルタザール・コルマウクル監督もいる。
個人的には『ハートストーン』(2016)のような雰囲気が好き。
いかにもアイスランドっぽいと私が勝手に思っているのは
奇天烈だけど忘れられない面白さのある作品で、それは本作も同じこと。
アイスランドの田舎町に暮らす中年女性ハットラ。
音楽と自然をこよなく愛し、町の合唱団の講師を務めている。
実はハットラには環境活動家という裏の顔がある。
自然が破壊されてゆくことが耐えがたく、弓矢等の武器を使って送電線をショートさせ、
アルミニウム工場を停止に追い込もうと人知れずして戦っているのだ。
それを知っているのは合唱団員のうちの公務員男性たったひとり。
ハットラの思いは理解できるものの、彼女のやり方が大胆すぎていつもハラハラ。
送電線がショートさせられるたび、地元警察は犯人探しに躍起に。
ある日、かねてから養子を受け入れたいと願っていたハットラのもとへ、
ウクライナの4歳の少女ニーカの親にという話が届けられる。
嬉しくてたまらないハットラは、アルミニウム工場との戦いに決着をつけることに。
後悔のない状態でニーカとの暮らしを始めるためだ。
町に監視カメラが設置されるなど取り締まりが厳重になるなか、
ハットラは最終決戦に向けた準備に取りかかるのだが……。
中国資本の工場の環境対策は推して知るべし。
彼女はひとりでなんとか抵抗を試みているわけですが、テロだと報道された挙げ句、
町の人々も犯人にエールを送るなんてことはなく、犯人を罵る。
環境のことを誰も考えていないし、日々の暮らしのほうが大事なのですよね。
彼女の独りよがりに思えなくもないけれど、彼女は誰も傷つけていない。
ずたぼろになっても自然を守ろうとする姿には心が動かされます。
終盤、ウクライナへ向かう寸前に逮捕されてしまったハットラがどうなるか。
雨水でとんでもないことになっている映像も私たちへの問題提起。