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『明日の食卓』

2021年06月10日 | 映画(あ行)
『明日の食卓』
監督:瀬々敬久
出演:菅野美穂,高畑充希,尾野真千子,柴崎楓雅,外川燎,阿久津慶人,
   和田聰宏,大東駿介,山口紗弥加,山田真歩,真行寺君枝,烏丸せつこ他
 
イオンシネマ京都桂川にて、『るろうに剣心 最終章 The Beginning』の次に。
 
原作は先月読了。そのときのレビューはこちら
瀬々敬久はかつて“ピンク四天王”と崇められた監督のうちのひとり。
今はもうその余韻もなく、若手もベテランも上手く起用して
話題性の高い作品を撮っている印象があります。
私は別に嫌いじゃないけど、特に好きでもないかなぁ。
 
「石橋」という同じ姓を持つ母親3人。
それぞれ違う土地に住み、お互いの繋がりはまったく無し。
ただ、息子の名前は仮名で書けば3人とも「ユウ」、皆10歳。
 
冒頭、どこかに住む石橋姓の女性が10歳の息子ユウを殺害したニュースから始まります。
一歩まちがえば3人の誰に起きても不思議はなかったという話。
 
神奈川に住むフリーライター・石橋留美子(菅野美穂)。
カメラマンの夫・豊(和田聰宏)と、長男・悠宇(外川燎)、次男の4人家族。
マンションでもスーパーでもじっとしていない息子たち。
その悪ガキぶりに手を焼き、非協力的な夫に悶々としている。
 
大阪に住むシングルマザー・石橋加奈(高畑充希)。
若くして結婚した夫は浮気して逃げた。
生活のために借りた金を返すため、町工場とコンビニの仕事を掛け持ち。
息子・勇(阿久津慶人)はそんな母を気遣っている。
 
静岡に住む専業主婦・石橋あすみ(尾野真千子)。
夫・太一(大東駿介)と息子・優(柴崎楓雅)の3人家族。
隣の敷地には義母・雪絵(真行寺君枝)が暮らすが、干渉しすぎない良い関係。
 
という3家族の日々が描かれています。
 
一見いちばん平穏なのは静岡のあすみの家族。
優は優しくて朗らかで成績も優秀な自慢の息子。
何の心配もないはずが、実はサイコパスかと思われるような事件が起きます。
 
実は原作を読んだときに映画版のキャストを知って、
大阪弁のシングルマザーの役は尾野真千子だと決めつけていました。
そうしたら、静岡の専業主婦のほうが尾野真千子で、
シングルマザー役は高畑充希だったからビックリ。
ただ、観終わってみれば、尾野真千子だったらあまりにステレオタイプだったかも。
高畑充希演じる母親の懸命さとその息子の健気さに胸を打たれます。
 
原作では加奈と勇親子の将来には光が射す終わり方で、それは映画版も同じ。
ただ、あとの2家族とも同様に明るさを感じさせて終わった映画版とは異なります。
特にあすみの家庭は原作では崩壊するから後味が悪い。
後味が悪いにもかかわらず、映画版もそのエンディングを観たかったと
ちょっぴり意地の悪い見方をしてしまいました。
 
受け入れがたかったのは、山口紗弥加演じるあすみの友人。
原作ではこんなに怪しさ全開の女性ではありませんでした。
あすみの家を訪れてクッキーを食べるシーンなんて、
レズビアンかと思わせるような演出。
いっそそういう関係になるならまだしも、そうじゃないんだから本作には不要。
 
こういうところが単なるウケ狙いに思えて、
瀬々監督をイマイチ好きになれない所以です。
“ピンク四天王”だった頃をかいま見せられている気がしなくもないけど、
無理に挟んだシーンに思えます。台無しじゃあないですか。
 
でもキャストは面白いですね。
原作の「とても綺麗な女性」をまったく無視した(すみません(^^;)、
デリヘルで働く母親役に山田真歩
原作の表現には別の母親役で登場する水崎綾女のほうが合っている。
加奈のろくでなしの弟役には藤原季節
同じく加奈の母親を演じる烏丸せつこがよかった。
教師役で宇野祥平が出ているのも見逃せません。この人こそバイプレイヤー
最後の最後に登場するほとんどスッピンの大島優子もお見逃しなく。

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