『アオラレ』(原題:Unhinged)
監督:デリック・ボルテ
出演:ラッセル・クロウ,カレン・ピストリアス,ガブリエル・ベイトマン,
ジミ・シンプソン,オースティン・P・マッケンジー他
6月1日からシネコンの営業が再開されましたが、
大阪と兵庫は平日のみだから、休日にも営業してくれなければ行けません。
6月20日を過ぎてもこの状態は続くかもしれず、
再開を待っていられなくて平日に休みを取りました。
久しぶりのシネコンです。嬉しいったらありゃしない。
いつぶりでしょう、TOHOシネマズ西宮へ行くのは。このとき以来だわ。
アメリカ/イギリス作品。
原題の“Unhinged”は「気の動転した」「錯乱した」とかの意味なのだそうです。
夫と離婚の話を進めているレイチェルは、
ひとり息子のカイルを車に乗せて学校へと向かう途中、渋滞に遭う。
迂回してかろうじて遅刻せずに間に合うかというとき、
前方で停車していた車が、青信号になっても発進しない。
苛立ってクラクションを強く鳴らす。
それでも発進しない前方の車をレイチェルは横から追い抜いたのだった。
すると次に停車したさい、その車に横付けされる。
男は、少し考え事をしていたので気づかなかったと詫びると、
そちらも謝るべきではないかと言う。
あんな品のない鳴らし方はないだろう、それを謝れと。
カイルが小声で「謝って」と懇願しているというのに、
レイチェルは謝るどころか罵詈雑言を男に浴びせてそのまま車を走らせる。
すると、男が猛然と追いかけてくるではないか。
なんとかまいてカイルを学校まで送り届け、ホッ。
友人で弁護士のアンディとお茶を飲むべく会う約束を取り付け、
途中ガソリンスタンドに寄ると、あの男がそこへやって来て……。
前方の車を追い抜いて怒らせ、執拗にあおられる話といえば、
スティーヴン・スピルバーグの出世作『激突!』(1971)ですよね。
あれはとことんシンプルな話でした。
最後まで運転手の顔が見えなくてとても不気味でもあり。
これはそこまでシンプルではありません。
まずは男役のラッセル・クロウがある一軒家に押し入り、
住人を殺してその家に火をつけるシーンから始まります。
どうやら彼の元妻が住んでいる家らしい。
妻から離婚を突きつけられた男が自暴自棄になり、殺人をしでかして、
逃走中にカレン・ピストリアス演じるレイチェルにクラクションを鳴らされる。
レイチェルに対する彼の反応は八つ当たりっちゃ八つ当たりなのですが、
レイチェルにあまり同情の余地はありません。
というのも、彼女のほうも離婚目前で、夫から家を取り上げられそう。
そういうことが積み重なって心身共に疲れているのは気の毒だけど、
目覚まし時計もかけずにソファで寝てしまって、派手に寝坊。
毎日自力で起きている息子は、母親のせいで連日遅刻。
美容師のレイチェルは仕事にも遅れ、いちばんの顧客から解雇を言い渡される。
学校にも仕事にも間に合うように起床していれば
焦って車を走らせることも、前方の車に苛立つこともなかったのに、
彼女こそ八つ当たりのクラクションを鳴らしてしまったと言えます。
だから、こんなふうに追いかけられていい気味とまでは思えないものの、
大変だとも可哀想だとも思えません。
しかし、男が居合わせた人を平気で殺すぐらい恐ろしいのと、
カイル役のガブリエル・ベイトマンがあまりに健気で愛らしいおかげで、
がんばって逃げろレイチェル!と思い始めるのでした。
昔、職場の人から遅刻しますと電話があり、その理由が
「車のエンジンをかけたらいきなりクラクションが鳴った。
エンジンを切らないと鳴り止まないので車屋さんに見てもらう」でした。
後ほど出勤したその人が「自分の車のクラクションの音を初めて聞いた」と言うので、
「えっ、鳴らしたことないんですか」と聞いたら、
「ありませんよ、そんなの。鳴らすことなんてないですもん。
あ、鳩に鳴らしたことはあったかもしれませんけど」と言う。
その人は広島出身。広島に車で遊びに行った折、確かにクラクションの音を聞きませんでした。
鳴らさないのか、広島の人!
……って書いてみたら、以前に同じネタを書いていました。(^^;