『老後の資金がありません!』
監督:前田哲
出演:天海祐希,松重豊,新川優愛,瀬戸利樹,加藤諒,柴田理恵,石井正則,
竜雷太,藤田弓子,哀川翔,毒蝮三太夫,三谷幸喜,草笛光子他
ペナントレースも終わったので、終業後に2本鑑賞モードを再開。
緊急事態宣言中は劇場も時短営業だったから、2本観ようにも観られませんでした。
それが再びできるようになったのは嬉しいことだけど、体はキツイ(笑)。
垣谷美雨の同名小説の映画化。この作家のことは嫌いではないのですが、
シリーズみたいなタイトルに食傷気味で、それほど読んでいません。
『あなたの人生、片付けます』『子育てはもう卒業します』『あなたのゼイ肉、落とします』、
『夫の墓には入りません』『姑の遺品整理は、迷惑です』『うちの父が運転をやめません』。
うーん、もうタイトルだけでおなかいっぱい。で、本作も原作未読です。
でも、惹かれるタイトルではありますね。観ますとも。
50代の主婦・後藤篤子(天海祐希)。
平均的な生活レベルで、一戸建ても購入し、上手くやりくりしてきたはず。
ところが、老舗の和菓子屋を営んでいた舅が亡くなってからがさぁ大変。
「喪主はお兄ちゃんね。葬儀の費用も全部そっちで持って」と言われ、
断ろうとすると「これまでこっちでこんなにあれこれ払ってきた」と帳面を広げられる。
老舗のプライドがある姑の芳乃(草笛光子)の手前、あまり貧相な葬儀はできず、
最も大きな会場を借りて香典をアテにしたのに、会葬者はわずか30名。
かかった費用は400万円近くになり、後藤家の貯金の半分以上をつぎ込む結果に。
さらには娘のまゆみがワケのわからぬバンドマン・松平琢磨(加藤諒)とデキ婚。
琢磨の実家が宇都宮では知らない人がいないほどの餃子チェーン店ゆえ、
結婚式は多くの芸能人が利用している式場で挙げると言うではないか。
舅と姑には毎月9万円の仕送りをしてきたが、とてももう出していられない。
その件をめぐって志津子と言い争いになったため、
篤子は「お義母さんはこちらで預かります」と宣言してしまい……。
家のローンをまだまだ払い続けなければならないというのに冠婚葬祭。
そんなときに限って家電が壊れたり、パートをクビになったり。
妻のパートがなくなっただけでも家計が直ちに苦しくなるところへ、
夫の会社まで倒産したらどうしますかね。
妻がどれほど苦労して家計を切り盛りしているかに夫は無頓着。
娘も息子もお金は降ってくるとでも思っているのか。
嫁に行ったはずの娘はたびたび実家へ帰ってきて、
愛想のひとつも言わずに食料になりそうなものを根こそぎ持って行く。
もう本当に泣きたくなることでしょう。
本作ではそれを回避する手段が謳われているわけではありません。
ただ、観て「あるある」と笑えることは確か。
映画の出演者たちにこんな思いをしたことのある人がどれだけいるのか。
彼らが演じるのを見て、貯金が少なくて心配になるのは自分だけじゃないと思えるかどうか。
なんと言ってもいちばん笑ったのは、
姑役の草笛光子の「私、昔、宝塚を目指していたのよ」という台詞に対して、
「私もです!お義母さん!」と興奮しながら言った嫁役の天海祐希に向かって、
草笛光子が「あなたは無理よ」とせせら笑うシーンでしょう。
映画ならではのジョークで可笑しかった。ふきました。
中高年層にはオススメです。