夜な夜なシネマ

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『そして、バトンは渡された』

2021年11月06日 | 映画(さ行)
『そして、バトンは渡された』
監督:前田哲
出演:永野芽郁,田中圭,岡田健史,稲垣来泉,朝比奈彩,安藤裕子,
   戸田菜穂,木野花,石原さとみ,大森南朋,市村正親他
 
109シネマズ箕面にて、仕事帰りに2本ハシゴの2本目。
 
2019年の本屋大賞受賞作。原作のレビューはこちら
なんと監督はハシゴの1本目だった『老後の資金がありません!』と同じ、前田哲。
瀬尾まいこ原作の小説の映画化は、好きなとき嫌いなときがあります。
そして、前田監督の作品も、とても好きなときイライラもやもやするときがある。
これはどうやら後者✕後者、つまり私にはどうにも受け入れがたい作品でした。
 
泣き虫でみぃみぃ泣いてばかりだから、みぃたん(稲垣来泉)。
実の母親はみぃたんを産んでまもなく他界。
父親の水戸秀平(大森南朋)は男手ひとつでみぃたんを育ててきたが、
あるとき綺麗なお姉さん、梨花さん(石原さとみ)と再婚する。
 
しかし水戸は仕事でブラジルへ行くことになり、梨花さんはついて行かないと言う。
パパと一緒にブラジルへ行くか、このまま梨花さんと日本で暮らすか。
悩んだ末、みぃたんは梨花さんと残ることを選ぶ。
 
というみぃたんと梨花さんの生活が描かれる一方で、こんな生活も描かれます。
 
高校3年生の優子(永野芽郁)は、継父の森宮壮介(田中圭)と二人暮らし。
高校生の父親として森宮はいささか若すぎるが、
優子のママが森宮と再婚後しばらくして出て行ってしまい、
森宮はずっとひとりで優子の面倒を見てくれているのだ。
 
原作未読でも既読でも映画を楽しみにされている方はこの先を読まないでください。
原作が好きだった私としては、どうしてこんなふうに映画化したんだろうと疑問ばかり。
 
まず、原作には「みぃたん」と呼ばれる少女はどこにも出てきません。
みぃたん=優子で、原作では優子は幼いときも今もずっと「優子ちゃん」。
それをわざわざみぃたんとしたのは、みぃたんが優子だと気づいたときに
映画鑑賞者が驚くようにという仕掛け以外の何物でもないでしょう。
そんなことをする意味があったとは私には思えない。
 
そして、映画のほうが原作よりもずいぶんと意地が悪い。
原作では優子には心を許せる友だちがいたのに、映画ではひとりもいない。
それどころか、何を言われようがへらへらと笑っている優子はうざがられています。

初めて彼女の友だちになったのは、優子の生い立ちを先生から聞いたいじめっ子たち。
あんなに嫌みばかり言っていたのに、いきなり優しくなるって。
それで友だちになりますか。表面的には仲良くできても、親友なんて無理でしょ。
 
原作では、父親が3人、母親が2人いるにもかかわらず、
誰からもたっぷりの愛情をかけられて育った優子が、
先生や周囲の人たちから「本当は大変なんでしょ」と思われていることに困惑していました。
まるで誰しもが、こういう境遇の子どもは不幸に違いないと決めつけていて、
それを望んでいるかのようにすら思えることに困っているのです。
 
でも映画では梨花さんとの暮らしでずいぶん苦労していて、
それを押し隠しながら今まで来た子どものような印象を受けます。
短大卒業後の就職先も原作とは異なり、大きなところへ就職して辞める。
つまり、原作にはなかった苦労がいっぱい描かれているのです。
 
梨花さんの描き方にも違和感がつきまとう。
子どもを産めない体の梨花さんが再婚で子どもを手に入れ、
みぃたんを手放したくないがためになりふりかまわず男を捜し、
最後には病気が再発して死んでしまうのですから。
原作では梨花さんは死にません。
 
泣く方向へ持って行きたかったのだろうと思わざるを得ない。
始終もやもやして、途中で退席したくなるほどでした。
だけど映画レビューサイトを見ると、ものすごい高評価です。
あーそうですか、私のほうがアマノジャクなんですね。はいはい。ムリっ!(笑)

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