『ロイ・ハーグローヴ 人生最期の音楽の旅』(原題:Hargrove)
監督:エリアン・アンリ
TOHOシネマズ西宮で2本ハシゴの1本目。
仕事帰りに萎えそうな気持ちを盛り立ててヨレヨレしながら西宮まで行くのだから、
本命の2本目の前に観るのも家の近所では上映していない作品を。
で、本作にしました。
1969年10月、テキサス州に生まれたロイ・ハーグローヴは、10代の頃に才能を開花させ、
瞬く間に時代の寵児となった伝説のトランペット奏者なのだそうです。
私は音楽なら基本的に何でも好きですが、自分がピアノを習っていたこともあり、
どの楽器がいちばん好きかと聞かれたらピアノと答えます。
いちばん興味があるのもピアノで、管楽器にはわりと疎く、
トランペット奏者としてすぐに思い浮かぶのはマイルス・デイヴィスぐらい。
だから、こんなにも有名な人を今まで知らずに来ました。ごめんなさい。
絶対的な耳を持つ彼は才能を発揮し、ジャズ界で巨匠と呼ばれるほぼすべてのミュージシャンと共演。
しかし生来悪かったとおぼしき腎臓に30代のときに耐えがたい痛みをおぼえ、
透析を受けながらツアーに臨むも、49歳で亡くなってしまったとのこと。
本作はまさか最期になるとは思わなかったツアーの模様を含め、
ロイと昔なじみの女性映画監督エリアン・アンリが取材して撮り上げたドキュメンタリーです。
デビューしてすぐに彼のマネージャーとなったラリー・クロージアは善人か悪人か。
インタビューに答えるミュージシャンの面々は、「ロイのことを嫌いで彼から離れた人はいない」、
要はマネージャーがアカンと言います。
実際、本作を撮るさいにも、ツアーの模様をフィルムに収めることを希望した監督をラリーは拒絶。
それに関してロイとラリーが言い争う姿はラリーの了承のもと撮影されていますが、
結局ラリーは最後まで映画にすることを拒否、今もそうらしい。
ロイの死後、2軒あったはずの家はなくなり、貯金はできない性分だったとはいえ、
少なくとも数十万ドルあったといわれる金も消え失せている。
いったいどこに行ったのか考えれば、やっぱりマネージャー!?と思わざるを得なくて。
そんな黒い話も交えつつ、でもロイの奏でる音を存分に楽しめる作品です。
映画の中では彼が作った曲を使えないから、他者が作った曲と即興で演奏された曲ばかりだけれど。
余計なことを考えずに観たい。
でも「お金の管理はちゃんとしておかないと」、監督のそんな声も聞こえてきます。