2020年8月の読書メーター
読んだ本の数:11冊
読んだページ数:3828ページ
ナイス数:882ナイス
https://bookmeter.com/users/762098/summary/monthly
■あなたならどうする (文春文庫)
9編すべて、タイトルは昭和歌謡。各編最初に歌詞の一片が掲載されています。よくもこんなにもぴったり合う話を作り上げたものです。井上女史ならお手の物か。全編読んで思い出すのは、本作には登場しない同時代の昭和歌謡『しあわせ芝居』。中島みゆきの作詞作曲で自身が歌っているバージョンもあるけれど、桜田淳子の歌うバージョンが聞こえてきそう。しあわせ芝居の舞台裏に気づいてしまった主人公たちは、泣き叫んだりしない。何事もなかったように進むだけ。でも決して前向きには見えず、希望のかけらもない。痛々しくて虚しい空気が漂います。
読了日:08月02日 著者:井上 荒野
https://bookmeter.com/books/15950718
■ヤマケイ文庫 定本 山のミステリー 異界としての山
幼い頃から山好きの両親にあちこちに連れて行かれたせいかおかげか、私は「海もの」よりも「山もの」に惹かれる傾向があります。運動嫌いゆえ今は登山はしないけど、このタイトルは読まずにはいられない。収録されている56話におどろおどろしい話はありません。いわゆる怖い話を期待して読むと肩すかしを食らう。むしろ山のちょっとした不思議に触れて山に登ってみたくなる、そんな話ばかりです。自然に助けられたり、霊に助けられたり、動物が何かを知らせてくれたり、実際にありそう。熊って普通は人間を避けるものなのですね。そんな豆知識も。
読了日:08月04日 著者:工藤 隆雄
https://bookmeter.com/books/16029863
■冷たい檻 (中公文庫 い 133-1)
若い刑事がめったに取れない休日に妻と幼い息子を連れて遊園地に行く。わずかな隙に息子をさらわれ、家族は崩壊。そんな幕開け。十数年が経ち、失うものは何もなければやる気もゼロに見える彼。田舎の町で莫大なカネが動いている。いったい何が起きているのか。これでつまらんオチやったら許さんという気持ちで読んでいました。痛ましく、やるせなく、ただただ辛い気持ちが押し寄せるけれど、やる気なさそうなのに物凄く頭のキレる彼と、クソが付くほど真面目な警官のやりとりにクスッと笑ってしまったりも。最後は嗚咽。生きている意味は必ずある。
読了日:08月10日 著者:伊岡 瞬
https://bookmeter.com/books/15556384
■怪談喫茶ニライカナイ (PHP文芸文庫)
この表紙なら怪談と言ってもそう怖くはないだろうとナメていたら、最初の怪異はそれなり以上に怖かった。深夜にドアノブがガチャガチャ鳴って、ドアスコープを覗いたら真っ暗、でも灯りの点いた廊下で真っ暗は変、向こうからも誰かが覗いているって、今こうして書いていても寒気がゾワ~っ(笑)。でもそこから先は大丈夫。怪異の正体は「向き合うことを無意識に避けていた自分」というのがいい。謙虚に見える主人公が喫茶店の主を最初から呼び捨てにするのはどやねんと思わなくもない。まぁいっか。こう暑くては重い小説を読む気がしないときに○。
読了日:08月13日 著者:蒼月 海里
https://bookmeter.com/books/15942713
■人間に向いてない (講談社文庫)
どうしますか、自分の子どもが引きこもりで、ある日突然薄気味の悪い生き物に姿を変えたら。異形性変異症候群という病名が与えられ、戸籍上は死んだものとみなされる。異形といってもさまざまで、巨大な昆虫だったり植物だったり、顔だけ人間そのままの犬だったり。想像力がたくましい人ほど、読んでいて気分が悪くなりそう。父親がわが子の発症と同時に死亡をすんなり受け入れるのに対し、どんな姿になろうともわが子を切り捨てられない母親。切ないなんて言葉を通り越して、狂気を感じる。メフィスト賞、えげつない。好きだけど。読んじゃうけど。
読了日:08月15日 著者:黒澤 いづみ
https://bookmeter.com/books/15624263
■ギンカムロ (集英社文庫)
花火の季節になったら読もうと思いながら5年以上積んだまま。今年こそと思ったのに、コロナのせいで花火大会ないやん。花火工場の息子に生まれながら、訳あって家を飛び出した主人公。あるとき戻ってみれば、そこには女性の花火職人がいた。花火を見られなかったところで死ぬわけじゃなし、なのになぜ人は花火を見たがるのか。打ち上げ花火の演出を求める個人客の想いがちょっとした謎、かつて村で起きたことにこの花火職人がどう関わっているのかが大きな謎。ちょっぴり軽めの遠田潤子作品のようにも思えます。せめて本の中だけでも打ち上げ花火。
読了日:08月19日 著者:美奈川 護
https://bookmeter.com/books/9751081
■マカロンはマカロン (創元推理文庫)
大好きなレストランがコロナのせいでつぶれたら困る。だから、コロナ禍でもローテーションを変更することなく外食しています。そんな今、こうしてビストロが舞台の話を読むと嬉しくなる。床を豚の血で真っ赤に染めてしまうようなドンくさいシェフなのに、客の顔色や言動を見ただけでピンと来て謎を解くなんておかしいでしょ。ありえないミステリーの解明だけど、これだけ美味しそうなものが並んでいたら、もう謎解きの部分はどうでもいいです(笑)。自然食品店をやっている人がフレンチには興味ないだろうという一文には異議を唱えたいですけどね。
読了日:08月20日 著者:近藤 史恵
https://bookmeter.com/books/16028573
■ダークリバー (祥伝社文庫)
文庫書き下ろしと聞くと、ナメ気味な自分がいるのは否めません。でもこれはそんなに悪くない。と言うとどれだけ上から目線やねん!なのですけれど。ヤクザと刑事、お互いに敬意を払っていたふたり。かつてヤクザが服役するときに刑事が預かったことのある娘が自殺したことから、すでに刑事を辞めていた男が真相を調べ始めます。山口と広島のヤクザが登場するせいか、柚月裕子の『孤狼の血』シリーズを思い出す。その小粒版というと失礼でしょうか。このボリュームで3時間かからずに読めると思えば満足度は高い。ヤクザというのは悲しいものですか。
読了日:08月23日 著者:樋口明雄
https://bookmeter.com/books/13119196
■笑酔亭梅寿謎解噺 1 ハナシがちがう! (集英社文庫)
トサカ頭のヤンキー少年を更生させようと、元担任教師が送り込んだ先は上方落語の御大のもと。落語が好きなので楽しく読みはじめましたが、各々にモデルがいるとおぼしき噺家たちに、酒癖の悪い奴が多すぎる。師匠なんてあまりにゲロゲロ吐くから、こっちまでオエ~ッ(笑)。元ヤンが意外な推理力を発揮して、寄席や楽屋で起こる事件の謎を解き明かす。これがまたわりとヘヴィーで殺しまで起きる。この第1巻の終盤に、元ヤンがようやく落語の面白さに気づきます。第2巻以降はどうなることやら。もうちょいゲロ描写控えめでお願いしたい。(^^;
読了日:08月24日 著者:田中 啓文
https://bookmeter.com/books/566174
■ヒポクラテスの誓い (祥伝社文庫)
読んでも読んでも追っつかないぐらい、中山センセの新刊がバンバン出る。長らく読まず嫌いだったことを悔やんでおります。だけど今ごろ手を出したせいでこのシリーズ2冊ともすでに文庫化されているのはありがたい。登場人物が本当に魅力的。教授のアシスタントが外国人(しかも美人ではない(笑))である必要性がはたしてあるのかと最初は思っていましたが、変なのに的を射ていたりもするキャシーの日本語が可笑しい。内藤了の“藤堂比奈子”シリーズといろいろかぶる。光崎教授と死神女史、古手川刑事と東海林刑事とか。組んだら最強の最強では。
読了日:08月27日 著者:中山七里
https://bookmeter.com/books/11054352
■ヒポクラテスの憂鬱 (祥伝社文庫)
中山七里作品で初めて犯人が当たった。って、この人のことを疑わなかった読者なんていない気がする。しかし自分の誤りをちゃんと認めるマトモな人だと思っていたのに、ゲス野郎でショック。余談ですが、「名刺が挟めそうな眉間のシワ」という表現がありました。わりと最近読んだ荻原浩の作品中に「五百円玉が挟めそうな眉間のシワ」という一文があったのを思い出し、どっちが深いシワかと本気で考えてしまいました(笑)。丈なら名刺、幅なら五百円玉かしらん。古手川さん、そのうち班長にオイシイところを持って行かれないようになるといいっすね。
読了日:08月31日 著者:中山七里
https://bookmeter.com/books/13961211
読んだ本の数:11冊
読んだページ数:3828ページ
ナイス数:882ナイス
https://bookmeter.com/users/762098/summary/monthly
■あなたならどうする (文春文庫)
9編すべて、タイトルは昭和歌謡。各編最初に歌詞の一片が掲載されています。よくもこんなにもぴったり合う話を作り上げたものです。井上女史ならお手の物か。全編読んで思い出すのは、本作には登場しない同時代の昭和歌謡『しあわせ芝居』。中島みゆきの作詞作曲で自身が歌っているバージョンもあるけれど、桜田淳子の歌うバージョンが聞こえてきそう。しあわせ芝居の舞台裏に気づいてしまった主人公たちは、泣き叫んだりしない。何事もなかったように進むだけ。でも決して前向きには見えず、希望のかけらもない。痛々しくて虚しい空気が漂います。
読了日:08月02日 著者:井上 荒野
https://bookmeter.com/books/15950718
■ヤマケイ文庫 定本 山のミステリー 異界としての山
幼い頃から山好きの両親にあちこちに連れて行かれたせいかおかげか、私は「海もの」よりも「山もの」に惹かれる傾向があります。運動嫌いゆえ今は登山はしないけど、このタイトルは読まずにはいられない。収録されている56話におどろおどろしい話はありません。いわゆる怖い話を期待して読むと肩すかしを食らう。むしろ山のちょっとした不思議に触れて山に登ってみたくなる、そんな話ばかりです。自然に助けられたり、霊に助けられたり、動物が何かを知らせてくれたり、実際にありそう。熊って普通は人間を避けるものなのですね。そんな豆知識も。
読了日:08月04日 著者:工藤 隆雄
https://bookmeter.com/books/16029863
■冷たい檻 (中公文庫 い 133-1)
若い刑事がめったに取れない休日に妻と幼い息子を連れて遊園地に行く。わずかな隙に息子をさらわれ、家族は崩壊。そんな幕開け。十数年が経ち、失うものは何もなければやる気もゼロに見える彼。田舎の町で莫大なカネが動いている。いったい何が起きているのか。これでつまらんオチやったら許さんという気持ちで読んでいました。痛ましく、やるせなく、ただただ辛い気持ちが押し寄せるけれど、やる気なさそうなのに物凄く頭のキレる彼と、クソが付くほど真面目な警官のやりとりにクスッと笑ってしまったりも。最後は嗚咽。生きている意味は必ずある。
読了日:08月10日 著者:伊岡 瞬
https://bookmeter.com/books/15556384
■怪談喫茶ニライカナイ (PHP文芸文庫)
この表紙なら怪談と言ってもそう怖くはないだろうとナメていたら、最初の怪異はそれなり以上に怖かった。深夜にドアノブがガチャガチャ鳴って、ドアスコープを覗いたら真っ暗、でも灯りの点いた廊下で真っ暗は変、向こうからも誰かが覗いているって、今こうして書いていても寒気がゾワ~っ(笑)。でもそこから先は大丈夫。怪異の正体は「向き合うことを無意識に避けていた自分」というのがいい。謙虚に見える主人公が喫茶店の主を最初から呼び捨てにするのはどやねんと思わなくもない。まぁいっか。こう暑くては重い小説を読む気がしないときに○。
読了日:08月13日 著者:蒼月 海里
https://bookmeter.com/books/15942713
■人間に向いてない (講談社文庫)
どうしますか、自分の子どもが引きこもりで、ある日突然薄気味の悪い生き物に姿を変えたら。異形性変異症候群という病名が与えられ、戸籍上は死んだものとみなされる。異形といってもさまざまで、巨大な昆虫だったり植物だったり、顔だけ人間そのままの犬だったり。想像力がたくましい人ほど、読んでいて気分が悪くなりそう。父親がわが子の発症と同時に死亡をすんなり受け入れるのに対し、どんな姿になろうともわが子を切り捨てられない母親。切ないなんて言葉を通り越して、狂気を感じる。メフィスト賞、えげつない。好きだけど。読んじゃうけど。
読了日:08月15日 著者:黒澤 いづみ
https://bookmeter.com/books/15624263
■ギンカムロ (集英社文庫)
花火の季節になったら読もうと思いながら5年以上積んだまま。今年こそと思ったのに、コロナのせいで花火大会ないやん。花火工場の息子に生まれながら、訳あって家を飛び出した主人公。あるとき戻ってみれば、そこには女性の花火職人がいた。花火を見られなかったところで死ぬわけじゃなし、なのになぜ人は花火を見たがるのか。打ち上げ花火の演出を求める個人客の想いがちょっとした謎、かつて村で起きたことにこの花火職人がどう関わっているのかが大きな謎。ちょっぴり軽めの遠田潤子作品のようにも思えます。せめて本の中だけでも打ち上げ花火。
読了日:08月19日 著者:美奈川 護
https://bookmeter.com/books/9751081
■マカロンはマカロン (創元推理文庫)
大好きなレストランがコロナのせいでつぶれたら困る。だから、コロナ禍でもローテーションを変更することなく外食しています。そんな今、こうしてビストロが舞台の話を読むと嬉しくなる。床を豚の血で真っ赤に染めてしまうようなドンくさいシェフなのに、客の顔色や言動を見ただけでピンと来て謎を解くなんておかしいでしょ。ありえないミステリーの解明だけど、これだけ美味しそうなものが並んでいたら、もう謎解きの部分はどうでもいいです(笑)。自然食品店をやっている人がフレンチには興味ないだろうという一文には異議を唱えたいですけどね。
読了日:08月20日 著者:近藤 史恵
https://bookmeter.com/books/16028573
■ダークリバー (祥伝社文庫)
文庫書き下ろしと聞くと、ナメ気味な自分がいるのは否めません。でもこれはそんなに悪くない。と言うとどれだけ上から目線やねん!なのですけれど。ヤクザと刑事、お互いに敬意を払っていたふたり。かつてヤクザが服役するときに刑事が預かったことのある娘が自殺したことから、すでに刑事を辞めていた男が真相を調べ始めます。山口と広島のヤクザが登場するせいか、柚月裕子の『孤狼の血』シリーズを思い出す。その小粒版というと失礼でしょうか。このボリュームで3時間かからずに読めると思えば満足度は高い。ヤクザというのは悲しいものですか。
読了日:08月23日 著者:樋口明雄
https://bookmeter.com/books/13119196
■笑酔亭梅寿謎解噺 1 ハナシがちがう! (集英社文庫)
トサカ頭のヤンキー少年を更生させようと、元担任教師が送り込んだ先は上方落語の御大のもと。落語が好きなので楽しく読みはじめましたが、各々にモデルがいるとおぼしき噺家たちに、酒癖の悪い奴が多すぎる。師匠なんてあまりにゲロゲロ吐くから、こっちまでオエ~ッ(笑)。元ヤンが意外な推理力を発揮して、寄席や楽屋で起こる事件の謎を解き明かす。これがまたわりとヘヴィーで殺しまで起きる。この第1巻の終盤に、元ヤンがようやく落語の面白さに気づきます。第2巻以降はどうなることやら。もうちょいゲロ描写控えめでお願いしたい。(^^;
読了日:08月24日 著者:田中 啓文
https://bookmeter.com/books/566174
■ヒポクラテスの誓い (祥伝社文庫)
読んでも読んでも追っつかないぐらい、中山センセの新刊がバンバン出る。長らく読まず嫌いだったことを悔やんでおります。だけど今ごろ手を出したせいでこのシリーズ2冊ともすでに文庫化されているのはありがたい。登場人物が本当に魅力的。教授のアシスタントが外国人(しかも美人ではない(笑))である必要性がはたしてあるのかと最初は思っていましたが、変なのに的を射ていたりもするキャシーの日本語が可笑しい。内藤了の“藤堂比奈子”シリーズといろいろかぶる。光崎教授と死神女史、古手川刑事と東海林刑事とか。組んだら最強の最強では。
読了日:08月27日 著者:中山七里
https://bookmeter.com/books/11054352
■ヒポクラテスの憂鬱 (祥伝社文庫)
中山七里作品で初めて犯人が当たった。って、この人のことを疑わなかった読者なんていない気がする。しかし自分の誤りをちゃんと認めるマトモな人だと思っていたのに、ゲス野郎でショック。余談ですが、「名刺が挟めそうな眉間のシワ」という表現がありました。わりと最近読んだ荻原浩の作品中に「五百円玉が挟めそうな眉間のシワ」という一文があったのを思い出し、どっちが深いシワかと本気で考えてしまいました(笑)。丈なら名刺、幅なら五百円玉かしらん。古手川さん、そのうち班長にオイシイところを持って行かれないようになるといいっすね。
読了日:08月31日 著者:中山七里
https://bookmeter.com/books/13961211