『プロミシング・ヤング・ウーマン』(原題:Promising Young Woman)
監督:エメラルド・フェネル
出演:キャリー・マリガン,ボー・バーナム,アリソン・ブリー,クランシー・ブラウン,
ジェニファー・クーリッジ,ラヴァーン・コックス,コニー・ブリットン他
109シネマズ箕面にて。
エグゼクティブシートだけ埋まっていて笑いました。
確かに、日本では知名度がそれほど高いと思えない俳優陣で、
内容も、膨大な製作費をかけたような娯楽大作とはまるで異なるから、
映画好きの人じゃなければ観に来ないでしょう。
そんななか、上映時間ギリギリに入場した私に中央の席から手を振る人が。
誰かと思ったら飲み友だちの兄さんでした。
英国出身の女優エメラルド・フェネルの初監督作品。
美人女優というわけではなくて、個性派の脇役を務めてきた人。
それよりもむしろ劇作家、脚本家としての評価が高く、本作も自ら脚本を手がけました。
監督デビュー作だというのに、英国や米国の名だたる賞にノミネートされまくり、受賞。
非常に面白かったです。
カフェで働くアラサーのキャシー。
かつては医大に通い、トップクラスの成績を収めていたが、ある事件をきっかけに中退。
医大生だった彼女がなぜこんな生活を送っているのかと思われるような人生。
昼間は平々凡々な日々を送る彼女は、実は夜になればひとりでバーに繰り出している。
濃い化粧を施し、泥酔したふりをしてその場で崩れ、
一発ヤル気満々で近づいてきた男たちに鉄槌を下すという行為を繰り返しているのだ。
ある日、医大時代の同級生ライアンが偶然カフェにやってくる。
現在小児科医となっている彼は、学生時代、キャシーに想いを寄せていたと言い、
キャシーがいくらつれない態度を取ろうともあきらめずにカフェを訪れる。
ライアンといるときだけは安らぎを感じるようになるキャシーだったが……。
何も知らずに観るほうが面白いと思いますので、
ご覧になる予定の方はお読みにならないでください。以下、ネタバレです。
キャシーが医大を中退した理由は、親友ニーナが同級生にレイプされたから。
事件当時、多くの同級生たちが面白がって笑って見ていただけ。止める者なし。
ニーナは被害を訴えたものの、酔っぱらいの尻軽女だったように言われ、
学長にも誰にも取り合ってもらえませんでした。
傷心のニーナと共にキャシーも医大を中退しますが、ニーナが死亡。
復讐を誓ったキャシーがこのような行動に出ます。
ライアンだけは他の男と違う。そんな彼と出会ってキャシーの気持ちが変わる。
なんて生易しい展開ではありません。
『マッド・ナース』(2013)のように次々と男を殺すわけではないけれど、
泥酔していると思っていた女がいきなりシャンとする、怖い(笑)。
その昔、私より20歳以上年長の上司(故人)がどうも勘違いしているふうだったので、
「女性と食事に行ったら、その帰りに誘うのが礼儀やとか思ってません?」と尋ねたら、
「思ってる」と苦笑いしながら。「大きな間違いです」と断言しました。
泥酔した女性がレイプされると、男性は「合意のもとだった」と言う。
一緒に食事に行くのは、その気があるからだろうと男性は思う。
被害者を取り巻く女性もたぶん、「被害者にも非がある、隙があった」と言う。
でも、本当にただただ一緒に食事するつもりしかない女性が多いんです。
奢ってもらってタダ飯食って何もさせないとかそういうことじゃなくて、
割り勘でごはん食べて、楽しくしゃべって機嫌良く帰る、
それだけを望んでいるのに、「そのつもりがあるから来た」なんて思われるのはどうよ。
大きな間違いです。
男たちのもとに乗り込んだキャシーが「もしも自分が帰ってこなかった場合」を想定して
届けていたものの中身詳細が気になったりもしますが、まぁそれはいいとして。
あ、届け先の弁護士役をアルフレッド・モリーナがクレジットなしで演じています。
本作を観て、男性が気の毒だと思う人もいるのかな。
これぐらい怯えろ、と思ってしまうのでした(笑)。
男性だけでなく、笑って見ていた女性も、なかったことにした人も同罪。
キャシーに復讐されますからね。ビビらされて初めて気づく自分の罪。
キャシー役のキャリー・マリガン、お見事。
女性にオススメです。
でも、何されてもわからんぐらい飲んで泥酔するのはやめましょうね。