『スクロール』
監督:清水康彦
出演:北村匠海,中川大志,松岡茉優,古川琴音,水橋研二,莉子,
三河悠冴,MEGUMI,金子ノブアキ,忍成修吾,相田翔子他
TOHOシネマズなんばにて2本ハシゴの1本目。
この日は2本とも別館で上映している作品でした。
原作は橋爪駿輝のデビュー小説。
監督は『CUBE 一度入ったら、最後』(2021)の清水康彦。
大学を卒業して就職した“僕”(北村匠海)は上司コジマ(忍成修吾)のパワハラに遭い、
いつしか死ぬことばかり考えるようになっていた。
自分の思いを書き綴ってフォロワーなどいないSNSに投稿していたが、
ある日そこに書いた、誰も知る由もないはずの「コジマ、マジ死んでほしい」という言葉を、
同僚の女性“私”(古川琴音)がコジマ本人に向かって吐き、そのまま退職する。
そんな折、“僕”のもとへ大学時代の友人ユウスケ(中川大志)から連絡が入る。
卒業式当日の写真に一緒に映っている森(三河悠冴)が自殺したらしいが、
ユウスケは森のことをまったく覚えていない。
しかしテレビ局に入社したユウスケは森のことを番組で取り上げたいと考えて……。
冒頭、夢かうつつか、“僕”が入った建物の中には誰もいないレストランがあり、
そのウェイトレスが地下アイドルのようだけど、さっぱり意味わからず。こりゃ寝るなと思いました。
ところが段々おもしろくなってきた。
“僕”が死にそうな顔をしているところは、まるで『ちょっと今から仕事やめてくる』(2017)。
あのときの福士蒼汰と北村匠海の表情がかぶります。
コジマの人でなしぶりに、いつかこいつに天罰が下ればいいと思っていたら、そのとおりになってスッキリ。
“私”の友人・菜穂(松岡茉優)にもイライラさせられっぱなし。
“私”の男性への接し方を重いと笑う菜穂が実はいちばん重い。
彼女の場合もコジマと同じでその心をへし折ってやれなどと思っていたら、これまたそのとおりに。
なんというのかこんなふうに、イライラさせられて、腹立たしく思わされて、
こいつをなんとかしてくれと思ったらそのとおりにしてくれる、そんな作品なんです。
だからって痛快というわけではない。自分の嫌なところも見せられている感じで。
森の母親(相田翔子)が自殺した息子の勤務先を責めて「社会が問題だ」と言ったときに、
「その社会にはあなた自身も含まれているのか」とユウスケが問うたシーンはグサリと来ます。
ユウスケの上司(水橋研二)はコジマと違って良い人に思えるけれど、
「死ね」と言うのと「生きてる意味あんのか」と言うのは結局同じことなのでしょうか。
ひとつ、文句を言いたい。金子ノブアキ演じる教授だかなんだかの台詞。
「的を得ているね」はやめて。的は射る、得るのは当やて、前から言うてるでしょうが!(笑)