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『愛について語るときにイケダの語ること』

2022年01月06日 | 映画(あ行)
『愛について語るときにイケダの語ること』
監督:池田英彦
 
ずっと気にはなっていました。だけど、ものすごくキツそうじゃないですか。
だいたい、ナナゲイやシアターセブンの上映作品はキツイものが多いんです(笑)。
観たことを後悔しないだろうかと思いつつ、シアターセブンへ。
結果、観てよかった。
 
監督の池田英彦(故人)は四肢軟骨無形成症という生まれつきの障害を抱えていました。
これは通称小人症と呼ばれ、成長軟骨の異常によって低身長だったり、
四肢や指の短さだったりが引き起こされる病気です。
この障害を持って活躍する俳優もいて、代表格はピーター・ディンクレイジでしょう。
 
40歳を前にスキルス性の胃癌の宣告を受けた池田さんは、
残りの人生でやりたいことをやると決意。
そのうちのひとつがセックスで、しかもそれを記録として収めようとします。
風俗を利用してはカンパニー松尾監督さながらのハメ撮りを敢行。
 
そして彼は、20年来の友人である脚本家の真野勝成さんに連絡を取り、
闘病生活の中で撮った映像素材を基にして、
自身の死後に映画として完成させてほしいという遺志を伝えます。
 
身長は112cmですが、イケメンなんです(私のタイプではないけれど(^^;)。
スポーツカーに乗り、オシャレな帽子も似合う知的なメガネ男子
神奈川の市役所に勤務して、その体躯以外、すべて理想的に持ち合わせていると言えます。
 
しかしその体躯ゆえ及び腰になるのか、本当に愛した女性がいない。
同棲までした彼女のほうは結婚も視野に入れていたのに、彼のほうに踏ん切りつかず。
そんな彼が望むもうひとつのことは純愛。
紹介された女性と擬似純愛のためにデートをする様子も収められます。
 
遠くない日に死ぬことがわかって撮っていると思うとつらい。
でも彼はこんなにも落ち着いていて、やりたいことをやっている。
勃てば生きていることが実感できる。なんかすごく切ない。
 
真野さんとの会話は本当に楽しげ。
初体験はいつだったのかと尋ねられた池田さんは、「それ聞く!?」と少し照れたふうに、
大学生のとき、わざわざ名古屋まで出向いて風俗に行った話をして答えます。
近所のお店に行くのはなんとなく恥ずかしかったらしく(笑)。
好みの風俗嬢を指名したかったところ、自分を見たら拒否されるかもしれないと、フリーで入店。
やってきた風俗嬢に嫌じゃないかと尋ねたら、「だって、同じ人間でしょ」と言われたとか。
 
生まれつき手足が短いということを除けば同じ人間。
癌で闘病生活を送っているのだって、別に変わったことではない。
余計に大変というわけじゃないのですよね。
こんな体に生まれてきたことを呪うどころか、
もしもこんなイケメンで体型まで恵まれていたら、
いけ好かない奴になっていたかもと自分で言う池田さん、すごくないですか。
 
あなたが自由に生きていた証、しかと見ました。

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