夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『エッシャー通りの赤いポスト』

2022年01月05日 | 映画(あ行)
『エッシャー通りの赤いポスト』
監督:園子温
出演:藤丸千,黒河内りく,モーガン茉愛羅,山岡竜弘,小西貴大,上地由真,
   縄田カノン,鈴木ふみ奈,藤田朋子,田口主将,諏訪太朗,渡辺哲,吹越満他

シアターセブンから第七藝術劇場へ移動。
その間に遅めのお昼ごはんを食べようと、向かいの“和食がんこ十三総本店”へ行ったら満席。
致し方なく通りを渡って“松のや”でロースカツとエビフライの定食を食す。
女ひとりで食べに来ている客なんてほかにおらんな(笑)。
 
園子温監督がワークショップを開催。
応募者697名から参加者51人を監督自身が選抜し、全員が出演する作品を撮り上げました。
146分という長尺ですが、その長さを感じさせない青春群像劇です。
こんな作品も撮る監督なのだということを忘れかけていました。とても良かった。
 
カリスマ映画監督の小林正(山岡竜弘)は、次作『仮面』の出演者を公募すると宣言。
助監督の三井丈(小西貴大)をはじめとするアシスタントたちはそのビラを配る。
応募はいまどき郵便のみで受け付け、インターネット等の受け付けは無し。
 
この情報に嬉々とする面々。
地元で劇団を立ち上げている女性陣や、小林監督を崇める信者集団、
役者を夢見ていた夫を亡くした切子(黒河内りく)、
自殺した父親の遺体としばらく暮らしていた安子(藤丸千)などなど。
 
書類審査合格の知らせを受けた応募者らは喜ぶが、実は全員合格。
オーディション会場に訪れた面々の審査が始まるのだが……。
 
小林監督は初心に戻って映画を撮りたいと思う。
だからこうして自身が面接に臨み、出演者を選抜しようとしているのに、
渡辺哲演じるスポンサーは、諏訪太朗演じるプロデューサーに圧力をかけ、
自分が目をかけているお色気女優(縄田カノン&鈴木ふみ奈)を起用させようとします。
弱みを握られているプロデューサーは断れずに、
あの手この手で監督にその女優たちを使わせようとするんですねぇ。
 
あながちフィクションじゃないのでしょう。
こうしていま園監督が本作を撮ったのも、こんなしがらみを忘れて、
本当に自分の撮りたいものを撮ろうとしたのだと邪推してしまいますよね(笑)。
『愛のむきだし』(2008)や『冷たい熱帯魚』(2010)を思い出させるシーンもあるからなおさらのこと。
 
オーディションに落ちた面々が、悔しいからとエキストラに応募して押し寄せます。
エキストラの中には田口主将演じる老人のようにエキストラを極めたい者もいれば、
やがてここから抜け出して役者になりたいと思っている者もたくさんいる。
たかがエキストラ、されどエキストラ。
エキストラ役で出演している吹越満も笑わせてくれます。
 
凄絶な人生を送ってきた登場人物がいるのはさすがに園監督ですが、
どこにでもこうして郵便ポストがあって、勇気を出して投函するかどうかで人生が変わるのかも。
いや〜、面白かった。そして元気もらえた。

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『終わりの見えない闘い 新型... | トップ | 『愛について語るときにイケ... »

映画(あ行)」カテゴリの最新記事