『アンデッド/愛しき者の不在』(原題:Handtering av Udode)
監督:テア・ヴィステンダール
出演:レナーテ・レインスヴェ,ビヨーン・スンクェスト,ベンテ・ボアシュム,アンデルシュ・ダニエルセン・リー,
バハール・パルス,オルガ・ダマーニ,イネサ・ダウクスタ,キヤン・ハンセン他
なんばパークスシネマにて。
ノルウェー/スウェーデン/ギリシャ作品だということを忘れたまま観はじめ、
最後まで「これはどこの国の映画なんやろ」と思っていました(笑)。
そうでした、原作者は『ぼくのエリ 200歳の少女』(2008)や『ボーダー 二つの世界』(2018)と同じ、ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストでしたね。
監督は本作が長編デビューとなるテア・ヴィステンダール、ノルウェー出身だそうです。
最初は何が起きているのか、何が起ころうとしているのかまったくわかりません。
ポスターなどを見たかぎりでは、子どもがゾンビ化してしまった母親の話かと。
そんな単純なものではなかったけれど、難解な話だというわけでもありません。
大切な人を失った3組の人々。
1組目は、目の中に入れても痛くないほど可愛がっていた孫エリアスを亡くした老人マーラー。
エリアスの母親であるアナは息子を失ってからすっかり生きる気力を失っている。
2組目は、レズビアンの老女トーラで、長年連れ添ってきたエリザベスを亡くす。
3組目は、ダヴィッドとその娘フローラ、息子のキアン。
ダヴィッドの妻エヴァが外出先で交通事故に遭い、手術台の上で死亡する。
マーラーがエリアスの墓に参ると、土の下から物音がする。
孫は生きているに違いないと墓を掘り返すと、エリアスが生き返っていた。
また、葬儀を終えたばかりのトーラが床に就くと家の中で物音がする。
侵入者かと確かめに行くと、そこにはエリザベスがいるではないか。
ダヴィッドが臨終を告げられたエヴァのベッドの傍らで佇んでいると、エヴァの目が開く。
こんなふうに3組それぞれの「死んだはずの人」が生き返るわけですが、
あきらかに生前とは様子が異なり、彼や彼女のまわりをしょっちゅう虫が飛んでいます。
誰もひと言も口を利きませんが、ただ、何か言いたげな様子はあるし、涙も見せる。
最愛の人ならば、ゾンビになってもそばにいてほしいと思えるか。
3組とも最初はそう思う。けれどやはりゾンビはゾンビで、次第に様子が変わってゆきます。
食べ物を差し出せば噛みつかんばかり。ペットを渡せば力まかせに握りしめる。
そこにいるのは、もう自分たちが知っている人ではないのです。
アナ役は『わたしは最悪。』(2021)のレナーテ・レインスヴェ。
台詞は多くないせいで余計に悲哀が伝わってきました。
ラストの彼女の選択をどう受け止めますか。