『罪の声』
監督:土井裕泰
出演:小栗旬,星野源,松重豊,古舘寛治,市川実日子,火野正平,
宇崎竜童,梶芽衣子,宇野祥平,篠原ゆき子,原菜乃華他
109シネマズ箕面にて。
1984年と1985年に起きたグリコ・森永事件をモチーフにした作品。
原作は塩田武士の同名小説。レビューはこちら。
未解決のまま時効を迎えた事件ですから、フィクションではありますが、
事件当時のことをつぶさに調査して書かれた書籍ゆえ、
捜査は本当にこんな感じでおこなわれていたようです。
京都でテーラーを営む曽根俊也(星野源)。
父親(尾上寛之)から継いだ小さな店ながら、
妻(市川実日子)とまだ幼い娘と共に幸せに暮らしている。
ある日、押し入れの奥にしまい込まれた缶の中からカセットテープと手帳を見つける。
手帳には英語で文字が書かれ、何のことやらさっぱりわからない。
テープを聴いてみると、そこには6歳だった頃の自分の声が入っていた。
それは35年前に起きた食品会社への脅迫事件で使われたものと同じ。
知らない間に自分の声が脅迫に使われていたとは。
父親は今は亡き人、母親(梶芽衣子)は余命わずかで入院中、問い質せそうにない。
父親の知人を頼って尋ねたところ、手帳は伯父ものではと言われる。
どうしても何が起きたのかを知りたくて、ひとり調べはじめる俊也。
一方、新聞社の文化部記者・阿久津英士(小栗旬)は、
社会部デスクの鳥居雅夫(古舘寛治)から突然イギリスでの取材を命じられる。
英士の語学力を買われてのことだったが、
35年前の未解決事件を掘り起こすのだと聞き、乗り気になれないまま取材を開始。
その後、調査と取材を重ねるうちに同じ人物にたどり着いた俊也と英士。
取材対象者から俊也のことを聞き出した英士は、
テープの声を聴かせてもらおうと俊也のもとを訪ねるのだが……。
原作はとにかくシリアス一辺倒でしたが、映画版はコミカルな会話もあります。
関西弁に不慣れであろう役者も多かったでしょうに、皆健闘。
もっとも、星野源と小栗旬にはこちらの贔屓目もあるかもしれません。
ついつい甘くなってしまう(笑)。
新聞社の上司役の古舘寛治と松重豊の関西弁は軽妙。
前者は大阪出身だから、文句のつけようがありません。ツッコミ完璧。
星野源と小栗旬の会話もふきだしてしまうところあり。
関西の場所もいろいろ出てくるから、関西出身者はより楽しめそう。
原作でも「しゃべりすぎ」の感があった板長役を橋本じゅん。
映画版でも「アンタ、個人情報しゃべりすぎやろ」と突っ込まずにはいられませんが、
こういう善意のしゃべりがおるからこそ、俊也と英士のタッグが生まれるのでした。
知らない間に犯人の片棒を担がされ、苦しむことになった子どもたち。
事件が時効を迎えて真相は闇の中。
テープの声の主たちが穏やかに暮らせていますように。
亡き娘の声をこんな形でしか聴けない母親の気持ちを思うと胸が痛い。