夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

〈とっても番外編〉うちの猫

2004年07月16日 | まるっきり非映画
毎年7月になると猫の映画が観たくなるのは、
うちの飼い猫が7月に死んだから。

小学生の頃、朝、ドアを開けると、
その猫はちょこんと座っていました。
まだ小さなトラ猫で、
めちゃめちゃかわいいと思いました。
もうすぐ誕生日だった私は、
プレゼントはいらないから、この猫を飼わせろ~と
親に直訴しました。

これぞ猫なで声という美声で、
中年太りすることもなく、賢くて、
世界でいちばんかわいい猫でした。

家族で旅行するときは、近所の人に餌やりを頼み、
猫は外に放り出して行きました。
数日間家を空けて、駅から帰宅する途中、
どこからともなく鳴き声が。
家まではまだずいぶん距離があるのに、
同居人の帰宅に気づいた猫が塀の上からお出迎え。
そのまま家まで一緒に帰りました。
猫が人につかないなんてウソ。

夜中にトイレに行きたいと鳴くので、
ドアを開けると一目散に外へ。
なかなか戻らないので、みんなが寝てしまうことも。
そんなときは、誰にも家に入れてもらえないまま、
しばらくドアの外で待っていたようです。
待ちくたびれると、縁側のガラス戸のほうへまわり、
遠慮がちな声で「ミャッ」。
すりガラスに映る控えめな姿は
いまでも思い出すと笑えます。

みるみる元気がなくなった15年目の初夏、
「もうトシなんちゃうの?」と言いながら、
母と病院へ連れていきました。
冗談のつもりだったのに、「あと1週間の命です」と言われて、
帰り道、猫を抱えて泣きました。

病院に行った日、
点滴を受けて、ヨタヨタ状態なのに、
夜中にドサッドサッとすごい音がし、
様子をうかがうと、猫が両親の枕元へ。
ようやくたどりつくと、
それからずっと、そこで寝たきりでした。

だけど、粗相をすると怒られると思うのか、
トイレのときだけは脚をひきずりながら、
蚊取り線香のお皿のもとへ向かうのです。
そこなら許してもらえると思ったのでしょう。

6日目、外に出たいと鳴きました。
表に連れて出ると、ヨタヨタのまま、
庭をゆっくり歩き始めました。
爪を研いだヒイラギの樹、
トイレに使用したキンモクセイの樹の下、
隠れて遊んだアジサイの陰。
今にも倒れ込みそうなのに、
見納めだと知っていたかのように、
ゆっくりゆっくり庭を眺めながら。

そしてちょうど7日目の朝、
空へ行きました。
今年が13回忌です。

トラ猫が特に好きな所以です。(^^)

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猫が好き。

2004年07月15日 | 映画(番外編:小ネタいろいろ)
犬も好きだけど、猫がとっても好きです。
近所で猫を見かけたときはもちろん、
テレビに猫が映っていると、
ひとりでミャーミャー言いながら近づきます。

そんな訳で、猫が出てくる映画を観たいと思うのですが、
犬に比べて、猫が登場する作品というのは少なく、
しかも好意的に描かれているものとなるとなかなかありません。

『スチュアート・リトル2』(2002)は、
リトル家の養子でネズミのスチュアートが、
怪我をした小鳥マーガロを介抱するうちに恋心を抱く。
巨大な鷹ファルコンに連れ去られたマーガロを救うため、
リトル家を飛び出すスチュアート。

スチュアートに協力するのが、リトル家の飼い猫スノーベル。
顔は憎たらしいし、いつもスチュアートに悪態をついてるけれど、
その活躍ぶりには惚れぼれ。
それなのに、最後には誰からも感謝されず、
置いてけぼりにされちゃって、あんまりな扱い。

『キャッツ&ドッグス』(2001)はいまだに観てません。
世界征服を企む邪悪猫と人類を守ろうとする犬との闘いなんて、
設定からして悲しくて涙が。
なかなか笑える作品らしく、犬派・猫派問わず楽しめるという触れ込みですが、
ホンマなの?と疑念を拭えず。

フランス作品の『猫が行方不明』(1996)は猫には好意的。
若い女性が猫好きの怪しげなおばさんに自分の飼い猫を預ける。
帰宅して猫を引き取りにいくと、猫は行方不明に。
いなくなった猫を探すうちに、自分の生き方も見つけるというもの。

関東ではすでに公開中の韓国作品の『子猫をお願い』(2001)。
これはタイトルだけで観にいかなきゃと思わせます。

ところで、うちの近所に住む猫の名前はアブラちゃんといいます。
初めて名前を聞いたとき、てっきり『エデンの東』(1954)のヒロインの名前
(=アブラ・ベーコンという、日本で聞くとヒドすぎる名前)から
命名したにちがいないと思いました。
が、実際は「工場跡で油まみれになってるところを拾ったから」。
コケそうになりました。

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『アンダーカバー・ブラザー』

2004年07月11日 | 映画(あ行)
『アンダーカバー・ブラザー』(原題:Undercover Brother)
監督:マルコム・D・リー
出演:エディ・グリフィン,デニース・リチャーズ,クリス・カッタン他

笑い飛ばして暑さを忘れたいときはこんなアホな映画を。
昨年公開の超B級作品ですが、
『映画秘宝』では昨年度のトップ10にランクされていたほど。

アフロヘアにロンドンブーツの潜入スパイ、アンダーカバー・ブラザー。
ド派手なキャデラックに乗り回し、
すごいスピンを見せて街ゆく女の子の注目を浴びる。

ところ変わって、正義のために闘う黒人地下組織「ブラザーフッド」。
黒人初の大統領誕生かと期待されるバウトゥエル大将が
大統領選出馬への表明をおこなうはずの日、
ブラザーフッドの面々はテレビ中継に見入る。
しかし、バウトゥエルはその席で、
「大統領選に出るのはやめる。フライドチキンの店を出すことにした」と宣言する。
唖然とするブラザーフッドの人びと。

やがて、彼らは、これが白人至上主義の秘密結社である「ザ・マン」の陰謀であると気づく。
バウトゥエルは何らかの手段によって洗脳されているにちがいない。
ザ・マンがソウルの帝王ジェームズ・ブラウンにまで
手を伸ばそうとしていることを知ったブラザーフッドは、
その目論見を阻むため、アンダーカバー・ブラザーをスカウトする。
正義は社会を救えるのか。

まぁ、アホらしいのなんのって。好きだなぁ、こういうの。
アンダーカバー・ブラザーがザ・マンに潜入するためには、
まず白人社会に溶け込まなければならない。
サンドイッチにマヨネーズを塗るのは白人だそうで、
黒人にとってはマヨネーズは許しがたい食べ物らしい。
どうしてもマヨネーズを食べなきゃならない事態に陥ったときのため、
腕時計のボタンを押すと激辛ソースが飛び出る仕組み。
白人に隠れてこのボタンを押せば、
マヨネーズ入りサンドイッチもなんとか食べられる代物に。

フライドチキンについては
「白人には絶対あの味は出せない」という台詞も
「へぇ、そうなのか~!」と目からウロコ。

007並の小道具がほかにもいっぱい。
敵に追いつめられたときは
ブーツのヒールがめちゃめちゃ伸びて
ビヨ~ンと飛び上がれるのです。抱腹絶倒。

『ゲロッパ!』(2003)とかぶる選曲も多く、
また、ジェームズ・ブラウン本人もちらりと出演。
『ゲロッパ!』と併せてどうぞ。

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本を焼くということ(その2)

2004年07月07日 | 映画(番外編:映画と読み物)
『華氏451』(1966)は、レイ・ブラッドベリによって
1953年に書かれたSF小説『華氏451度』の映画化。
フランスの巨匠フランソワ・トリュフォー監督の作品です。
タイトルは書物が自然発火する温度を指しています。

舞台は近未来。
人間に思想を持たせると危険という考えから、
活字はすべて禁止された社会。
普通、火を消すのが仕事であるはずの消防士は、
この作品のなかでは焚書士。
本を隠し持つ家庭を見つけては一斉に火をつけて灰にします。

主人公のモンターグは優秀な焚書士。
しかし、ある女性と知り合ってから、本に興味を持ちはじめます。

本を読んでしまった人間に治療をほどこす、
つまりは本から得た知識を忘れさせると、
理性を失って食欲と性欲が増大するのがおもしろいですね。

スポーツさえさせておけばいらんことは考えなくなるという台詞には反対。
頭を使わなきゃ、スポーツはできないでしょ。

カンヌ映画祭でパルムドールを受賞し、
つい先日全米で公開されて物議を醸しているマイケル・ムーア監督の『華氏911』ですが、
ブラッドベリから「タイトルを盗まれた」と訴えられそうになりました。
ムーアは「『華氏451度』に敬意を表した」とコメントしてます。

この『華氏451』を下敷きにしたと思われる作品が『リベリオン 反逆者』(2002)。
感情を持つことが諸悪の根元と信じられ、感情を抑制する薬が開発されます。
人びとは、毎日、この薬の投与を義務づけられており、
本はもちろん、絵を見ること、音楽を聴くこと、
感情に作用するものはすべて禁止。
見つかれば燃やされ、所持者は処刑されます。

こちらはビデオのジャケットからしてめっちゃB級。
レンタル店で見かけたとき、郷ひろみかと思いました。
「ヒロミ・ゴーです」という声が聞こえてきそうなジャケットで
めちゃ笑けます。

邦題もB級にしている要因かと思いますが、原題は“EQUILIBRIUM”。
「均衡」の意で、作品中ではこの社会のセンターとなっている建物の名前。

この2作品と、本を焼かなきゃ生き延びられない局面にある
『デイ・アフター・トゥモロー』、どちらも楽しめます。

1933年、ナチスが「反ナチス的である」という名目で焚書をおこないました。
そのとき焼かれた書物のなかにハイネの詩集も。
ハイネは「本を焼くものは、やがて自分自身も焼かれる」と語っています。

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本を焼くということ(その1)

2004年07月05日 | 映画(番外編:映画と読み物)
ロードショー中の『デイ・アフター・トゥモロー』は
地球の温暖化により氷河期が訪れるというもの。
『インデペンデンス・デイ』(1996)と同監督の作品で、
内容はツッコミどころ満載のB級映画だと思うんですが、
そうとは言わせない役者陣を並べて惜しみなくお金を使い、
A級娯楽映画にしちゃうのがこの監督のスゴイところ。

今回も、メグ・ライアンと別れてから
おいしい役がまわってくるようになったデニス・クエイドを主役(古気象学者ジャック)に据え、
その息子役サムには、『遠い空の向こうに』(1999)や『ドニー・ダーコ』(2001)など、
メジャー級とまではいかないまでも
粒ぞろいの作品に出演しているジェイク・ギレンホール。
彼はこんな大作に出ても熱くなりすぎない演技が○。

また、スコットランドの研究者ラプソンに
『ロード・オブ・ザ・リング』のビルボ役の名優、イアン・ホルム。
北半球に大寒波が押し寄せ、ヨーロッパがまず凍り始めたとき、
研究所内で死が目前であることを知ったラプソンとその部下2名が
12年物のスコッチを手に笑顔で乾杯する姿は涙を誘います。

この娯楽映画のなかで、特に興味を惹かれたのは
本を焼くということ。

ニューヨークに滞在中のサムとその友人たちは、
車も飲み込む大雨に襲われ、公立図書館へと逃げ込みます。
雨は次第に雪へと変わり、建物内に避難していた市民たちは
今のあいだにできるだけ南へ逃げようと図書館を飛び出します。

父親から「そこを絶対に出るな。出れば凍死する。必ず助けにいくから」
と言われていたサムはみんなを制止しますが、
サムの友人とごく一部の人しか彼の言うことを聞きません。

図書館に残った人びとは暖をとるために本を燃やすことにします。
本を焼くという行為は『華氏451』(1966)や『リベリオン 反逆者』(2002) などで取り上げられており、
この作品にもその影響はあるでしょう。

ニーチェを燃やそうとする女性に「すばらしい哲学者なのに」と怒る男性。
「ニーチェなんて妹に恋した変人よ」。
税法の本を嬉々として燃やしたがるホームレス。
無神論者だけど、この聖書は世界で初めて印刷された本だからどうしても燃やしたくない、
本こそが人類最大の発明と語る図書館員。
こんな会話をとても楽しく思いました。

本を焼かなければいけないとしたら、どれから?
『華氏451』と『リベリオン 反逆者』は次回に。

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