夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『駆込み女と駆出し男』

2015年05月20日 | 映画(か行)
『駆込み女と駆出し男』
監督:原田眞人
出演:大泉洋,戸田恵梨香,満島ひかり,内山理名,陽月華,キムラ緑子,武田真治,
   橋本じゅん,山崎一,麿赤兒,中村嘉葎雄,樹木希林,堤真一,山崎努他

この間の日曜日にTOHOシネマズ西宮にて。
STACIA PiTaPaでは「電車に乗って映画を観に行こう レール&ムービー」キャンペーン実施中。
PiTaPaを使って阪急電車に乗って映画を観に行けば、300ポイントもらえるというもの。
年に何度かあるこのキャンペーン、欠かさず300ポイント頂戴しています。

原案は井上ひさしの時代小説『東慶時花だより』。
江戸時代に幕府公認の縁切寺とされた東慶寺で繰り広げられる悲喜こもごも。

1841(天保12)年、倹約令の発令により、庶民の奢侈は禁止され、
娯楽とみなされるおこないを働いた者は厳しく罰せられる、そんな時代のこと。
夫が妻と離縁するのはいとも簡単だったが、妻から夫に離縁を求めることはほぼ不可能。
鎌倉の尼寺である東慶寺は、さまざまな理由で夫との離縁を願う女たちのための駆込み寺。

駆込み女たちは、まず御用宿の柏屋に預けられ、身元を明かして聞き取りを受ける。
離縁を願う心ご尤もと認められれば、御用宿から女の夫へ書状が届けられ、
そこで夫がすぐに離縁をのめば話ははやいが、そんな物わかりの良い夫でない場合がほとんど。
東慶寺で匿われて2年を過ごせば、離婚を成立させることができるのだ。

見習い医師で、実は戯作者になりたい信次郎(大泉洋)は、柏屋に居候して、
柏屋の主を務める叔母の三代目源兵衛(樹木希林)を手伝うことに。
病人を診るかたわら、駆込み女たちの離縁を叶えるべく離縁調停のための調査にたずさわる。

ある日、駆込んできたのは、顔に火ぶくれを持つじょご(戸田恵梨香)と足を負傷したお吟(満島ひかり)。
前者は七里ケ浜の浜鉄屋の女将で、優れた鉄練り職人。DV&モラハラ三昧の夫・重蔵(武田真治)と別れたい。
後者は豪商・堀切屋三郎衛門(堤真一)のお妾で、訳あって三郎衛門から逃げたい。
彼女たちの切実なる願いを源兵衛は認め、ふたりは無事、東慶寺へ。
そこへ女侍のゆう(内山理名)も離縁を求めて加わる。

東慶寺では、法秀尼(陽月華)のもと、大勢の駆込み女たちが生活を共にする。
駆込み当初は読み書きすら満足にできなかったじょごは、真摯な姿勢で文武に邁進。
時間の合間を見つけては、信次郎から教えられた薬草を集め、勉学に励み……。

いつの時代も離婚は容易なものではないとは思いますが、
ここまで理不尽なものだったのですね。
縁切寺を目指して走り出したものの、夫たちから追いかけられ、
体ごと寺に入るのは間に合わなくても、
手ぬぐいでも下駄でも何でもいいから持ち物の一部を寺に投げ込めば
駆込み成就となるというのは笑えるようで笑えない。
本人たちは命を賭けていたことでしょう。

真面目一筋に描けば重量級のテーマに、笑いを交えてちょうどいい重たさ。
御用宿の番頭の妻役・キムラ緑子がこんなに笑わせてくれるとは。
堤真一演じる堀切屋三郎衛門の涙にもらい泣き。
女が一致団結して大の男をぶった斬るシーンもスカッとします(笑)。
出番は少なくとも曲亭馬琴役の山崎努の存在感、さすがです。
ちょうど『伏 鉄砲娘の捕物帳』(2012)の原作を読みはじめたところなので、
馬琴先生が登場するあっちもこっちも面白い。

いい作品でした。

ところで、文中に「ほぼ」と書いて思い出しましたが、
このごろ「ほぼほぼ」と言う人が実に多いような。
以前はそんなに聞かなかった言い回しのような気がして、
これってTVとかで誰かがよく使っているのかしらん、
なんでこんなにみんなが使うようになったのかしらんと素朴な疑問。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『イタリアは呼んでいる』

2015年05月18日 | 映画(あ行)
『イタリアは呼んでいる』(原題:The Trip to Italy)
監督:マイケル・ウィンターボトム
出演:スティーヴ・クーガン,ロブ・ブライドン,ロージー・フェルナー,クレア・キーラン,
   マルタ・バリオ,ティモシー・リーチ,ロニ・アンコーナ,レベッカ・ジョンソン他

前述の『脳内ポイズンベリー』を観たあと、テアトル梅田へダッシュ。
その間わずか5分しかなく、とてつもなく無謀なスケジュール組みではありましたが、
なんとか予告編開始前に滑り込み。もちろん出入り口すぐの端っこ席を確保済み。

ダンナと一緒に映画を観たのは、『パイレーツ・オブ・カリビアン デッドマンズ・チェスト』(2006)がおそらく最後。
以降、一度も一緒に映画を観ていないのですが、
数カ月前からダンナが「『イタリアは呼んでいる』っちゅう映画があるらしいねん。観てきて」と。
「観にいこう」じゃなくて「観てきて」です(笑)。

ダンナからそう言われたときは全然本作のことを知らず。
テアトル梅田の上映スケジュールを見たときに、「おぉ、これのことか」と知りました。
で、いったい監督は誰で出演者は誰なのか調べてみたら、なんだ、これかよ。

去年の7月頃にレンタルしたDVD。
『スティーヴとロブのグルメトリップ』(2010)という劇場未公開のDVDスルー作品でした。
そのとき目に留まったのは、監督がマイケル・ウィンターボトムだったから。
加えて、なぜだか放っておけない気がするスティーヴ・クーガンが食べ歩きする話だと知ったから。
これがなかなかにアホらしくて面白く、DVDスルーだったのはもったいないなぁと思っていたら、
なんと2作目の本作はしっかり劇場公開されて、しかも満席ではないですか。

1作目でイギリスの湖水地方を巡るグルメ旅をしたスティーヴとロブ。
もともとはスティーヴに舞い込んだ企画で、愛人のミーシャと旅を楽しむつもりが、
彼女にドタキャンされたがゆえに、仕方なく同業者のロブに声をかけた話だった。
それが好評を博したらしく、今度はイタリア半島を5泊6日で南下するグルメ旅の依頼がふたりに届く。

ロブは司会業が絶好調、妻子とも問題なく、すべてにおいて順風満帆。
一方のスティーヴは、家族と離れてアメリカで暮らすも、ハリウッドで撮影中のTVシリーズが打ち切りに。
状況は対照的ではあるが、気のおけないふたりだから、この旅は良い気分転換になる。
さっそくふたりはミニクーパーを駆ってグルメ旅へと繰り出すのだが……。

スティーヴとロブが実名で出演する、ドキュメンタリーのようなフィクション。
相当にオタクな作品です。
グルメ旅なのですから、お料理やワインが美味しそうなのは当たり前のことですが、
それ以上に可笑しいのはスティーヴとロブの物真似の応酬。
ふたりの会話に登場する作品や俳優のことを知らないと意味不明で退屈でしょう。

繰り返される『ゴッドファーザー』『バットマン』ネタ。
『ローマの休日』(1953)、『甘い生活』(1959)の話。
クリスチャン・ベイルトム・ハーディの真似は傑作で、
アル・パチーノマイケル・ケインロバート・デ・ニーロ、マーロン・ブランドと、出てくる出てくる。
スティーヴが“ナイトミュージアム”シリーズで共演したオーウェン・ウィルソンの話に、
ホーキング博士の脚だとか脳だとかの話まで。
音楽ならばアラニス・モリセット談義も。

新聞か何かで紹介されたのかと思うほどの客の入りですが、
豪快にいびきをかいて寝ているお客さんもいました。
料理よりも映画のオタク度が高いので、詳しくない人にはかなりつまらんと思われます。
とにかくオッサンふたりが延々しゃべりまくる作品で、
全部ついていけるなら、めっちゃ楽しいはず。

実は先週金曜日の朝に本作のオンラインチケット予約をしたさいに、
12:20の回を選ぶつもりだったのに、なぜか14:30の回を予約してしまいました。
金曜日の昼にそのことに気づき、12:20の回を予約しなおして、
14:30の回は職場のI氏に行っていただきました。Iさん、どうもありがと~。
たまにやるんだなぁ、予約まちがい。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『脳内ポイズンベリー』

2015年05月17日 | 映画(な行)
『脳内ポイズンベリー』
監督:佐藤祐市
出演:真木よう子,西島秀俊,古川雄輝,成河,吉田羊,桜田ひより,神木隆之介,浅野和之他

封切り日翌日にTOHOシネマズ梅田別館アネックスにて。

何カ月も前からやたらと予告編が流れていて、それを観るかぎりでは面白そう。
しかし、真木よう子が恋する相手の古川雄輝がどうも私のタイプではない。
ま、時間的にもちょうどいいし、『キサラギ』(2007)の佐藤祐市監督だということに期待して。

ケータイ小説のライターで30歳の誕生日を迎える櫻井いちこ(真木よう子)は、
出版社勤務の友人らの飲み会に参加。
同じく参加者だった23歳のアート系男子・早乙女亮一(古川雄輝)と後日偶然遭遇。
いちこの脳内では、早乙女に話しかけるべきかどうかの会議が始まる。

脳内で議長を務めるのは、「理性」を司る吉田(西島秀俊)。
「ポジティブ」の石橋(神木隆之介)と「衝動」のハトコ(桜田ひより)は話しかけることに即賛成。
「ネガティブ」の池田(吉田羊)は断固として反対。
「記憶」の岸さん(浅野和之)は記録係に徹して議論には加わろうとしない。
結局、池田の反対を押し切る形で話しかけたところ、めでたくいちこと早乙女がつきあうことに。

天にも昇る気持ちのいちこだったが、7つ年下でつかみどころのない早乙女との交際は前途多難。
早乙女の何気ない言葉をいちいち深刻に捉えてしまったりして、ちっとも心おだやかではいられないのだ。
そんなとき、いちこの小説が単行本として出版されることになり、
担当者となった越智(成河)に誘われて鎌倉へ取材デートに出かけるのだが……。

劇場で観るほどのものだったかと問われるといささか疑問は残りますが、結構笑いました。
原作の水城せとなの同名マンガは未読なので、キャストもピッタリかどうかは比較できず。
だけど、映画を観るかぎりは脳内メンバー、ハマリすぎ。
西島秀俊が真面目に仕切れば仕切るほど可笑しく、吉田羊が怒れば怒るほど可笑しい。
近頃おぞましい役が多かった神木くんはもはや美少年俳優ではなく、何でもできることを証明。

自分が嫌いなときの恋はうまくいかない。
高校生のときからそんなことを思っていました。
だから、議長の言葉に思いっきり同感。

「大切なのは、誰を好きかということではなく、
 誰と一緒にいるときの自分を好きかということ」。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『龍三と七人の子分たち』

2015年05月15日 | 映画(ら行)
『龍三と七人の子分たち』
監督:北野武
出演:藤竜也,近藤正臣,中尾彬,品川徹,樋浦勉,伊藤幸純,吉澤健,小野寺昭,
   安田顕,矢島健一,下條アトム,勝村政信,萬田久子,ビートたけし他

大阪ステーションシティシネマで2本ハシゴの2本目。
前述の『フォーカス』の上映終了が10:15、本作の開映が10:15。
またこんなタイトなスケジュール組みをしてしまいました。

70歳になる龍三(藤竜也)は、かつては“鬼の龍三”と誰しもから恐れられたヤクザ。
しかし、引退した今、息子の龍平(勝村政信)一家と同居、肩身の狭い思いをしている。

連休中に龍平が嫁の実家へ帰省し、龍三が留守番をしていると、オレオレ詐欺の電話が。
そうとは気づかない龍三が、家中の金を集めて相手との待ち合わせ場所へ出かけると、
龍三と一杯飲む約束をしていたかつての仲間・マサ(近藤正臣)が現れる。
龍三が次々と出す不審な「金目の物」、そしてマサとの会話に、
ヤバイと思った相手はすたこら逃げ帰る。

オレオレ詐欺をはじめとして、最近さまざまな詐欺や悪徳商法で荒稼ぎしている“京浜連合”。
仕切っているのは暴走族上がりの西(安田顕)という男らしい。
それを知った龍三とマサはもはや黙っていられず、
かつての仲間を呼び集め、“京浜連合”を成敗してやろうと立ち上がるのだが……。

北野武監督の作品は、いつもかなり体力を要するので、パスしがちでした。
これはきっとこれまでの彼の作品が好きだった人には軽いのでしょうね。
だから気楽に観られます。

龍三とマサのほか、はばかりのモキチ(中尾彬)、早撃ちのマック(品川徹)、ステッキのイチゾウ(樋浦勉)、
五寸釘のヒデ(伊藤幸純)、カミソリのタカ(吉澤健)、神風のヤス(小野寺昭)。
小野寺昭なんて、私らの世代では『太陽にほえろ!」の殿下以外の何者でもない(笑)。

共感能力の高い年齢層のお客さんが多かったこともあり、つられて笑いました。
そうでなかったらここまで笑えなかっただろうと思いますし、あんまり内容はありません。
しかし、キャストを誤らなければ作品として成功するいい例かと。
藤竜也は入れ墨があっても指を詰めていても品がある。
わははと笑ってスッキリ、老齢の役者さんたちも皆楽しそうだもの。これでOK。

キャストの皆様、とにかく長生きしてください。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『フォーカス』

2015年05月14日 | 映画(は行)
『フォーカス』(原題:Focus)
監督:グレン・フィカーラ,ジョン・レクア
出演:ウィル・スミス,マーゴット・ロビー,ロドリゴ・サントロ,ジェラルド・マクレイニー,
   B・D・ウォン,アドリアン・マルティネス,ロバート・テイラー他

連休最後の日はちょうどレディースデー。
大阪ステーションシティシネマで2本ハシゴすることに。
1本目は8:20から。めちゃ早いやないかい。

客の入りは良いようだけど、最近信用していいのかどうかわからないウィル・スミス
ハズレでもいいやと適当な覚悟をして観に行きました。

超一流の詐欺師ニッキー。
そうとは知らずに彼に近づいた新米の女詐欺師ジェスは、
上手くニッキーを騙したつもりでいたのに、
ニッキーに声をかけたときにはすでに見破られていたと知って呆然。
一流の詐欺師になりたいと、弟子入りを志願する。

ニッキーは30人もの凄腕詐欺師を束ねる犯罪集団のリーダー。
アジトを設けて短期間に集中的に稼ぎ、皆で山分け。
ジェスも試用に見事パスして、彼らの仲間に。
と同時に、ニッキーとも深い仲になってゆく。

荒稼ぎした彼らは、ただちにアジトを閉鎖。
ニッキーとジェスは儲けを大事に抱えてアメリカンフットボールの観戦に。
本当はアメフトに興味はないのだと打ち明けるジェスに、
ニッキーは観戦そっちのけで賭けをしようと言う。
お尻のかたち抜群の女性客が階段をのぼりはじめたとき、何人の男が振り返るかと。
ニッキーとジェスの賭けを聞いていた別の客が面白がり、
自分もその賭けに加わりたいと言いだして……。

監督のグレン・フィカーラとジョン・レクアが面白いのは「ラブ・アゲイン」(2011)で証明済み。
このコンビはもともと脚本家で、『バッドサンタ』(2003) 、『がんばれ!ベアーズ ニュー・シーズン』(2005)、
私はどれもそこそこ面白いと思った作品の脚本も彼らによるもの。
だから、このごろ外すウィル・スミスといえども期待はそこそこだったのですけれども。

「クライム・ロマンティック・コメディ」だという触れ込みです。
この「ロマンティック」の部分がものすごく中途半端で。
恋に落ちるところから自然な流れは感じられず、
これってどちらかが騙しているの?という疑念が絶えずつきまといます。
結局そんなこたぁないのですが、ならば甘くなり具合がハンパすぎて、消化不良。

詐欺の手口は華麗で、見ていて楽しい。
特にジェスが加わって最初の集団スリは、芸術的だと思えるほど速やかで艶やか。
相手の視線すなわち“フォーカス”の引きつけかたがミソだそうで。

ニッキーのいちばんの仲間であるファーハド役のアドリアン・マルティネス、
この特徴的な容貌はどこで見たんだっけと考えていたら、
『LIFE!』(2013)のヘルナンド役の人でした。
デブでくりんくりん頭って、『インターンシップ』のヘッドホン男といい、憎めなくてかつ重要な役。

ロマンティックな要素があるのはいいけれど、本作にベッドシーン(しかも中途半端な)は不要。
もうちょいキレ味がほしかったところ。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする