夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『寄生獣 完結編』

2015年05月05日 | 映画(か行)
『寄生獣 完結編』
監督:山崎貴
出演:染谷将太,深津絵里,阿部サダヲ,橋本愛,新井浩文,岩井秀人,山中崇,
   ピエール瀧,豊原功補,大森南朋,北村一輝,國村隼,浅野忠信他

TOHOシネマズ梅田で2本ハシゴの2本目。

それにしても前作『寄生獣』(2014)のTV放映、はやっ!
前作を劇場で観なかった人をどれだけこの完結編に呼び込めるのかしらん。

地球侵略を目論む謎の寄生生物“パラサイト”。
そのパラサイトが右手に寄している高校生・泉新一(染谷将太)。
彼の右手の寄生生物は自らを“ミギー”(阿部サダヲ)と名乗り、
新一の肉体は人間とパラサイトが共存する珍しい例。
脳をパラサイトに乗っ取られた人間とはまったく異なる。

人間のふりをしているパラサイトのリーダー・田宮良子(深津絵里)は、
そんな特異な新一を面白く思い、新一のことは殺さないと決めているが、
良子のおかげで市長の座に就いた広川剛志(北村一輝)は新一を早く殺したい。
また、人間とパラサイトが共存できると語る良子のことも鬱陶しい。
共存だなんてばかばかしい。パラサイトが地球を支配すればいいのだと広川は考える。

広川の指揮により、市庁舎はパラサイトのアジトと化し、
さらなる勢力拡大へ向けて周到な準備が進められている。
それに気づいた特殊部隊は、山岸(豊原功補)を隊長としてパラサイトの殲滅に乗り出す。

新一は、近くにパラサイトがいればミギーが感知できるので、
たとえ一人ずつでもパラサイトを始末していこうと奮闘。
かつての新一とは思えない言動を同級生の村野里美(橋本愛)は心配するが、
ミギーのこともパラサイトのことも里美に打ち明けることはできない。

そんな折り、ミギーが強力な力を持つパラサイトの存在を確認。
どうやらそいつは新一を殺そうという強い意志を持っているらしい。
あっというまに新一の目の前にあらわれたそいつは後藤(ピエール瀧)という、
5人分の力を有するパラサイトだったが、
脳を司る後藤が残りの肉体に宿る4人を統率できていないため、
ミギーの作戦勝ちで後藤を倒すことに成功する。
しかし、とどめを刺せずにいると、後藤が復活。新一は追われるはめに。
また、一大スクープを狙うフリーライターの倉森(大森南朋)にもつけ回されて……。

まぁまぁ面白かったのではないでしょうか。
前作を観たあとに、山崎貴監督のインタビュー番組を見る機会がありました。
自分の好きな作品を撮れればいいと考える監督は多いかと思いますが、
山崎監督は「売れるものにしか手を出したくない」というようなことをおっしゃっていました。
確かに彼の監督作品は大ヒット作と呼べるものばかり。
ただし、『永遠の0』(2013)は原作が売れるずっと前に上った企画らしく、
これは当たるわけがない、やっちまったと思っていたそうです。
そんな作品も大ヒットさせてしまうのだから、売れるものを見る目があるのでしょうね。

前述の『あの日の声を探して』では上映中に携帯を触る人がひとりもいなかったのに対し、
こちらの鑑賞マナーはヒドイ(笑)。
3分おきに携帯を鳴らす客がいたほか、
前列のカップルのネエちゃんのほうは、2時間ずっとスマホを眺めっぱなしでした。
しばく、と言えないのがツライところ(笑)。

そんなわけで、イマイチ集中できなかったところもありますが、
実験的に人間の子どもを産んだ良子が、
赤ん坊を拉致されて、取り戻しにくるシーンには泣きました。
何の感情も持たないはずのパラサイトが、愛おしいという感情を持つ。
それに気づいた倉盛の台詞で涙、涙。

前作と同じく、なぜか関西弁の刑事役、國村隼
パラサイトと人間を見分ける能力を持つ殺人犯役、新井浩文
ピエール瀧が死んで生まれ変わったら浅野忠信に。
このあたりのキャストもなかなか楽しませてもらえました。

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『あの日の声を探して』

2015年05月03日 | 映画(あ行)
『あの日の声を探して』(原題:The Search)
監督:ミシェル・アザナヴィシウス
出演:ベレニス・ベジョ,アネット・ベニング,マクシム・エメリヤノフ,アブドゥル・カリム・マムツィエフ,
   ズフラ・ドゥイシュヴィリ,レラ・バガカシュヴィリ,ユーリー・ツリーロ他

“昭和の日”前日、映画と本と音楽が大好きなお姉様お兄様方と一緒に
北新地の“il Pepe”で宴会。
このメンバーで集まると、必ず本やお土産の交換会になります。
今回は、私がちょっとハマってまとめ買いした“ゆで落花生”と、
お借りしていた本、無理やりお貸ししたい本などを持って行き、
帰りは身軽に帰れるだろうと思っていたら甘かった。
往路より重たいがなというぐらい、持参した頭陀袋がいっぱいになり、
しかし相当酔っぱらっていたおかげで重いと感じることもなく帰ることができました。
美味しいお料理とワインと楽しい話でご機嫌。

1人1本ぐらいのワインを空けたぐらいの飲み量だった翌日。
「お酒をちゃんぽんすると悪酔いする」というのは酔っぱらいの戯言だと思っています。
単純に何をどれだけ飲んだかわからなくなっているだけやんか。
飲んだ量とアルコール度数で計算してみれば、きっとちゃんぽんのせいではないはず。

……と思ってはいるのですが、自然派ワイン、いわゆるビオワインを飲んだときは、
そうでないワインを同量飲んだときよりもあきらかに体が楽なんです。
この日のお店も自然派の取り扱いが多かったからなのか、
すんごく酔っぱらって終電で帰ったにもかかわらず、翌朝わりと元気。
わりと元気ではあるものの、遠くの劇場へ行くのはしんどくて、
TOHOシネマズ梅田にて2本ハシゴすることに。

『アーティスト』(2011)で話題をさらったフランス人、ミシェル・アザナヴィシウス監督。
その次の『プレイヤー』(2012)はちっとも面白くありませんでしたが、
今回はフレッド・ジンネマン監督の名作『山河遥かなり』(1947)にインスパイアされた作品だとか。
本作と原題が同じく“The Search”だった『山河遥かなり』は、
ナチスによって母親と引き離され、その恐怖ゆえに声を発することができなくなった少年が、
心優しきアメリカ兵の青年に拾われて、人を信じる心を取り戻し、
また、母親が懸命に息子を探して旅をする物語でした。
舞台を変えたリメイクとも言える本作。
シリアスな作品だと寝てしまうのではと懸念しつつの選択でしたが、これは本当に観てよかったです。

1999年、ロシア軍に侵攻されたチェチェン
9歳の少年ハジは、両親が殺されるところを窓越しに目撃する。
両親とともにいた姉ライッサはその場で泣き崩れているが、すぐに彼女も殺されるだろう。
ロシア兵士が村からいなくなった頃を見計らい、
ハジはまだ赤ん坊の弟ヴァクを抱きかかえて旅に出る。

泣きやまないヴァクを見知らぬ家の前に置いてノック。
温かそうな女性がヴァクを家の中へ連れて入ったのを見届けてから旅を続ける。
同様に村から逃れた人びとの車に乗せられて町へ。
いっさい言葉を発しないハジを周囲は心配、
赤十字の責任者であるヘレンと面会することになるが、
その後、ハジは待合室をこっそり抜け出してしまう。

抜け出したものの、行くあてはもちろんないし、おなかがぺこぺこ。
うろうろするハジの姿を目撃したのは、EU職員の女性キャロル。
彼女は人権委員会に所属し、フランスから実態調査にやってきていた。
キャロルはハジを自宅へ連れ帰り、食事を与える。
しかし、自分の名前を言おうともしないハジに手を焼きっぱなしで……。

このハジの物語と並行して描かれるのが、ロシア人の若者コーリャの物語。
チェチェンの紛争とは無縁に日々を送っていたのに、
路上でマリファナ所持で捕まって強制入隊させられます。
最初は戦死した兵士や自殺した兵士を棺桶に入れる仕事を担当させられ、
やがては前線へ出るようにと命じられますが、彼の変貌が興味深い。
上官のリンチに耐えるうち、要領を学ぶ。
遺体に話しかけるシーンが印象的で、まともなのか気が変になっているのかわかりません。
人を殺す行為に対してだんだんと感覚が麻痺してくる過程が凄い。

ハジの表情と言葉、そして弟を必死に探すライッサの行動に心を揺り動かされます。
キャロル役のベレニス・ベジョとヘレン役のアネット・ベニングも素晴らしい。
過労でいらつくヘレンが、報告書なんてクソくらえ、
もっと役に立つことがあるはずだとまくしたてるシーンは圧巻。
アネット・ベニングって凄い女優だとあらためて思いました。

平和ボケしていてはいけません。

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『海にかかる霧』

2015年05月01日 | 映画(あ行)
『海にかかる霧』(英題:Sea Fog)
監督:シム・ソンボ
出演:キム・ユンソク,パク・ユチョン,キム・サンホ,イ・ヒジュン,ムン・ソングン,
   ユ・スンモク,ハン・イェリ,チョン・インギ,ユン・ジェムン他

前述の『王妃の館』を観て憮然、TOHOシネマズ梅田別館アネックスに直行。
この劇場、嫌いではないのですが、とにかくトイレが古すぎる
初めて来たとおぼしき女性が「え~、全部和式ぃ?ショックぅ」と叫んでいました。
左端っこのみ洋式だけど、空いていないことのほうが多いです。

韓国で起きたなんたら号の事件と聞いて最初に思い浮かぶのはセウォル号の事故。
てっきり本作はその事故を取り上げた作品なのだと思い込んでいたら、
2001年にこんなに恐ろしい事件が海上で起きていたとは。
基になっているのは2001年に実際に起きた“テチャン号事件”だそうです。

小型漁船“チョンジン号”の船長カン・チョルジュは、
不況と不漁によって追い詰められ、金策に窮する。
家へ帰れば妻は男を連れ込んで堂々と浮気、稼ぎもないくせに旦那づらするなと罵られる。

船を売れば当面はしのげそうだが、大事にしてきたチョンジン号を手放したくはない。
これまでは決して手を出そうと思わなかった仕事だが、
中国から朝鮮族の密航者を運ぶ仕事を引き受けることにする。

カン船長は、頼りになる甲板長のホヨンには事前に相談していたが、
機関長のワノとまだ若手の船員のチャンウク、ギョング、
そして新人のドンシクには何も告げないまま出港。
密航者を運ぶ話を事後承諾の形で聞かされる船員たちだが、どうしようもない。

嵐に見舞われた夜、チョンジン号は沖合で中国船と合流。
荒れ狂う海の上で、密航者たちをチョンジン号へと乗り移らせる。
数十名の密航者のうち、女性はわずかに二人。
そのうち若いほうの娘ホンメが上手く飛び降りられずに落ちてしまう。
思わず海に飛び込んだドンシクは溺れかけたホンメを救い、一目で恋に落ちる。
ホンメのことを放っておけないドンシクは、機関室へと彼女を誘導して匿う。

翌日、監視船が海上の巡回にやってくる。
機関室に隠れているホンメを除き、密航者たちは魚艙に一時的に押し込まれる。
なんとか監視船を追い払い、魚艙の扉を開けると、誰も息をしていない。
オンボロ船ゆえにフロンガスが漏れて魚艙に充満し、全員が中毒死してしまったのだ。
このままでは還れないし、遺体は一体たりとも岸に流れ着かせてはいけない。
カン船長は遺体をぶったぎって海に棄てる。
船員たちにもとっとと遺体を処分せよと指示するのだが……。

実際のテチャン号事件の船長は、どういう経済状況にあったのかわかりませんが、
本作と同様に、沖合で密航者を中国船から乗り換えさせ、
麗水まで運ぶという仕事を持ちかけられて、一旦は断ったそうです。
しかし、最初に提示されて報酬が、最終的に30倍の金額にまで引き上げられ、
自分と家族同様の船員の懐も潤してやることができるならばと承諾します。

朝鮮族の密航者たちは、ブローカーから美味しい話ばかりをにおわされ、
何年分もの収入に当たるお金を払ってコリアンドリームを見る。
韓国で数年働けば、あとの人生は安泰だと信じて。
劣悪な環境の漁船でろくに食事も与えられないまま1週間ほど揺られました。
テチャン号に乗り移ると魚艙と水槽タンクに分けて閉じ込められ、
魚艙に閉じ込められた25名はまったく息をする余地がなく窒息死。
水槽タンクの35名はかろうじて生き延びますが、
密航者なのですから、おおっぴらに生きられるわけもなく。
うち数名が食糧を求めて民家に立ち寄ったために通報され、
過失致死と遺体遺棄の罪で船長ほか船員らは逮捕されたとのこと。

本作では、遺体をぶったぎって棄てたあと、船員のひとりの気がふれます。
そんな奴に通報されてはたまらないと、船長は船員を殺します。
ホンメが隠れていると知り、強姦しようと探し回る船員もいて、
霧に覆われた海に停泊するチョンジン号の恐ろしい姿。

良心を最後まで失わなかった人間だけが生き残るのは希望がありますが、
モデルとなった船員や関係者の親族などはこんなふうに描かれてたまらないでしょう。
だから、あくまでフィクションとして観たい船上サスペンス。
韓流イケメンスターとはほど遠い、ドロドロの韓国映画が似合う演技派ばかり。
『チェイサー』(2008)では元刑事役、『哀しき獣』(2010)では闇社会のボス役、
『ワンドゥギ』(2011)では型破りな教師役だったキム・ユンソクがカン船長を演じています。
監督は『殺人の追憶』(2003)の脚本を手がけたシム・ソンボでこれが初監督作品。
骨太の作品をこれからも撮ってくれそうです。

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