夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『パワー・オブ・ザ・ドッグ』

2021年11月25日 | 映画(は行)
『パワー・オブ・ザ・ドッグ』(原題:The Power of the Dog)
監督:ジェーン・カンピオン
出演:ベネディクト・カンバーバッチ,キルステン・ダンスト,ジェシー・プレモンス,
   コディ・スミット=マクフィー,フランセス・コンロイ,トーマシン・マッケンジー他
 
イオンシネマ茨木にて。
 
来月Netflixにて配信開始となるアメリカ/イギリス/ニュージーランド/カナダ/オーストラリア作品。
それより10日ほど早く劇場公開されています。
せっかく契約したNetflixなのに、こうして劇場へ観に行ってしまうのはもったいない!?
でもやっぱりこれも劇場で観たい作品です。
 
原作はアメリカ人作家トーマス・サヴェージによる1967年の同名小説。
監督は『ピアノ・レッスン』(1993)が懐かしいジェーン・カンピオン。
『ピアノ・レッスン』は、女性監督としては初、
ニュージーランド出身監督としても初のカンヌ国際映画祭パルムドール受賞作でした。
あれから30年近くが経過し、カンピオン監督も現在67歳。
そして本作ではヴェネツィア国際映画祭の銀獅子賞を獲得しました。
私はベネディクト・カンバーバッチに釣られて観に行った口。
 
1920年代半ばのアメリカ・モンタナ州
フィルとジョージという真逆の性格の兄弟が牧場を経営している。
兄のフィルはイェール大学出身、機知に富むが、粗野で威圧的。
弟のジョージは風貌からしていたって地味で繊細な性格。
牧場の雇われ人たちもジョージを小馬鹿にし、フィルの言うことしか聞かない。
 
ある日、彼らが訪れたのは、未亡人ローズがひとりで切り盛りする食堂兼宿屋。
食堂を手伝う息子のピーターをフィルがからかったため、
人知れず泣いていたローズをジョージが見初める。
 
ローズの狙いはピーターの学費を落としてくれる男だけ。
そう考えるフィルはジョージの交際を認めようとしないが、
ジョージはとっととローズと結婚。
兄弟の実家にローズがやってきて一緒に暮らすようになるのだが……。
 
ベネディクト・カンバーバッチ演じるフィルは、風呂に入ることを嫌い、
汚らしいけど男臭く色気もあって、人望厚い。
でも何を考えているのかわからなくてとても怖い奴なのです。
ちょっとカマっぽいピーターをあからさまに蔑み、
同居しはじめたローズのことも毛嫌いしている様子がありあり。
 
そんな結婚生活に苦しんでか、キルスティン・ダンスト演じるローズは酒に溺れます。
ジェシー・プレモンス演じるジョージは優しいけれど、男としての魅力には欠ける。
ローズのことを権力者たちに自慢したくて仕方なく、
彼女がアル中になったところで家庭に実害はないからいいとすら思っている。
 
終始不穏な空気が流れ続け、彼らの気持ちを説明する台詞なんて皆無だから、
釈然としない思いを抱えさせられたまま物語は終わります。
フィルこそ同性愛者だったのだろう、すべてピーターの仕業なのだろうか等々、
彼らの表情のみから考えるいろんな疑念が頭の中を回り続けて止まらない。
 
カンバーバッチってやっぱり凄い役者だなと再認識。ヒリヒリします。
だけど人には薦めない(笑)。もろ批評家受けしそうで、私も完全には理解できず。
観た人とちょっとあれこれ解釈を語りたくなる作品です。

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『Our Friend/アワー・フレンド』

2021年11月24日 | 映画(あ行)
『Our Friend/アワー・フレンド』(原題:Our Friend)
監督:ガブリエラ・カウパースウェイト
出演:ジェイソン・シーゲル,ダコタ・ジョンソン,ケイシー・アフレック,
   チェリー・ジョーンズ,ジェイク・オーウェン,グウェンドリン・クリスティー他
 
イオンシネマ茨木にて。
 
私事ですが、このたび2歳下の弟が癌の宣告を受けました。
普通に元気で、ちょっと腹部に鈍痛があるからと病院に行ったらまさかの。
私の両親は共に91歳で健在。
弟とはいつも「お父さんとお母さんのほうが私らより長生きしそうやな」と話していたので、シャレにならん。
冗談ちゃうで、しっかり治して私と一緒に両親を見送ってや!と思っています。
 
そんなときに本作を観てしまいました。
 
原作は2015年にエスクァイア誌に掲載された、
マシュー・ティーグによる記事“The Friend: Love Is Not a Big Enough Word”。
監督は本作が長編2作目のガブリエラ・カウパースウェイト。
 
ジャーナリストのマットは、ニューヨーク・タイムズ紙から引き抜かれ、
戦場記者さながらにあちこちを飛び回るようになる。
 
妻は舞台女優のニコル。まだ幼く可愛い娘が2人いる。
小さな新聞社にいた頃は、思い通りの仕事でないとはいえ穏やかな日々を送っていたが、
タイムズ紙に就職してからというもの、マットが家にいることが激減。
ニコルも子どもたちも不満を募らせて、家庭は崩壊寸前。
 
そんな折、ニコルが末期癌を宣告される。
マットは妻の看病と娘たちの世話に追われるようになり、心身共に限界寸前。
そこへやってきたのは、マットとニコルの親友であるデイン。
ほんの数週間住み込んで夫婦を助ける予定だったが帰るに帰れず、
デインは一家のサポートをしつづけるのだが……。
 
こんないい人、います!?
自分にも彼女がいるというのに、その彼女を置いて親友夫婦のもとへ。
夫婦に代わって家事全般なんでも引き受け、もちろん子どもたちの世話もする。
報酬をもらっているわけでもなく、ここまでできるものかと驚きます。
 
ティーグ家が住まう町がちょっと特殊な感じなのは気になるような。
ニコルが町のリーダー的存在で、癌告知前の彼女はイベントを仕切っていました。
町全体がまるでひとつの家族のようで、だからニコルが病に冒されたとき、
近所中の人が差し入れを持って訪れる。
「村」を想像して、こんなところに越してきたら大変だろうと思わなくもない。
無論、溶け込むことができればこれ以上心強いものはないのでしょうけれど。
 
そんな近所の住民たちも、ニコルの病状が進むにつれて
彼女を見るのが辛いのかなんなのか、ティーグ家を遠ざけるようになります。
しかしデインだけはずっと変わりません。
 
ニコル役のダコタ・ジョンソン、彼女の最期を看取る看護師フェイス役のチェリー・ジョーンズ、
みんなよかったです。
 
本当に死期が近づいたらどうすればいいのか。
自分では延命は望まないと思うけれど、家族だったらどうすればいいのでしょう。
何が最善かなんて、わかりそうにない。

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『梅切らぬバカ』

2021年11月23日 | 映画(あ行)
『梅切らぬバカ』
監督:和島香太郎
出演:加賀まりこ,塚地武雅,渡辺いっけい,森口瑤子,斎藤汰鷹,
   徳井優,広岡由里子,北山雅康,林家正蔵,高島礼子他
 
109シネマズ箕面にて。
 
本作のタイトルを入力しようとして、「埋め切らぬバカ」と変換されたときには、
「バカ野郎」と言いたくなりました。その変換はないと思う。(^^;
 
加賀まりこはなんとこれが54年ぶりの主演なのだそうです。
彼女がデビューしたのは1960(昭和35)年。私はまだこの世に生まれていない。
そんなときから第一線で活躍し続けているって、本当にすごい。
 
都会の古民家で暮らす山田珠子(加賀まりこ)と息子の忠男(塚地武雅)。
忠男はまもなく50歳で自閉症。父親のことは死んだことにしている。
 
忠男が勤務する作業所の世話人(林家正蔵)からグループホームへの入所を勧められ、
いずれはひとりで生きていかねばならない息子のためにと、
心配ながらも決断した珠子だったが……。
 
珠子の隣家を購入して引っ越してきた里村一家。
夫の茂に渡辺いっけい、妻の英子に森口瑤子、息子の草太に斎藤汰鷹
隣人のことは何も知らずに越してきたから、忠男のふるまいに驚きを隠せません。
特に茂は「なんだあいつは」と怒りまくり。
 
近所の乗馬クラブの経営者(高島礼子)は、忠男のことを敵視。
が大好きで興味を示す忠男のことを冷ややかな目で見つめます。
 
近所の住民たちは誰も山田母子のことをよく思っていないし、
住宅街の中にグループホームがあると、自分たちの町の価値が下がると主張する。
ホームの前に旗を立てて「出て行け」と訴える姿には背筋が凍る。
 
そんななか唯一、草太は隣家から道路へ伸びた梅の木に興味を持ち、
梅の実を拾って珠子に差し出す。忠男とも友だちになろうとします。
それが逆に事件を起こすきっかけを作ってしまうとは。
 
登場人物の中では英子にいちばん共感できそうです。
忠男のことを特別視はしない。でも、伸びた梅の木はなんとかしてほしい(笑)。
夫に呆れながら、子どもにとって大人がどうあるべきかをちゃんと考えている。
夫もそこまで悪い人間ではなくて、素直な心も持っています。
 
この作品は何も解決はしていません。
でも、里村一家のように、ひとりひとりにわずかでも思いやりの気持ちが芽生えたら、
お互いもっと暮らしやすくなるのかもしれない。
 
本作や『ONODA 一万夜を越えて』を観て思うのは、
時には酒の力を借りるのも有効だなということ。人間関係を円滑にすることもある。
酒飲みの言い訳かな(笑)。

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『シノノメ色の週末』

2021年11月22日 | 映画(さ行)
『シノノメ色の週末』
監督:穐山茉由
出演:桜井玲香,岡崎紗絵,三戸なつめ,中井友望,山田キヌヲ,工藤阿須加他
 
イオンシネマ茨木にて、前述の『アイス・ロード』とハシゴ。
 
主演の桜井玲香は元乃木坂46のメンバーとのこと。
スラリ長身だと思っていたのに、小柄なモデルという設定で、思わず身長を調べました。
そっか、モデルで156cmというとずいぶんちっちゃい人になるのですね。
穐山茉由監督の名前も存じ上げなくてすみません。初鑑賞です。
 
ミレイこと大月美玲(桜井玲香)、マリリンこと一ノ宮まり(岡崎紗絵)、
アンディこと安東雅美(三戸なつめ)は、10年前に篠の目女子高校を卒業した。
3人とも放送部出身。
 
モデルの仕事に就きながらなかなか売れずに悩むミレイのもとへ、
アンディから久しぶりに連絡が入る。
この春に廃校した母校がまもなく取り壊されることになったらしく、
その前に母校を見に行かないかという誘いだった。
待ち合わせ場所には、部長でお堅いイメージだったマリリンの姿も。
あまりの雰囲気の変化に驚くミレイ。
 
再会を喜ぶ3人は、立ち入り禁止の母校に忍び込み、
以降、毎週末まるで部活のごとく集うように。
同様に母校に忍び込んでいた杉野あすか(中井友望)も仲間入りして……。
 
自分がもう若くないからか、こういう作品を観ているとこちらが気恥ずかしい。
決してつまらないわけではなく、ただなんだか恥ずかしくて苦笑い。
そのせいで、どうでもいいことにいろいろツッコミ入れたくなります。
 
タイムカプセルをどこかに埋めたはずだというけれど、
そんな適当にその辺を掘り返したって出てくるはずないやろ!とか。
出てこないのにまたまた同じように掘っていたりして、そのさまが見苦しい(笑)。
 
でも結構楽しかったんです。
私たちの時代にはなかった「紺ソ」という言葉とかを聞くと、へ~っと驚いたりも。
紺ソが普通だった最近の女子高生にとっては、
白の普通のソックスのほうを可愛いと言ったり、そんな会話も楽しい。
 
女ばかりが出てくるなか、黒一点は工藤阿須加
マリリンの取引先のやり手プランナーとして登場します。
彼が女子たちに問われて聞かせる話には耳を傾けたくなりました。
 
同性愛を思わせる台詞もあるのは、やはり最近の作品。
スーパーヒーローものも青春ものも、性別なにも関係ない時代になったのはいいけれど、
あまりそこを強調されると、そんなに取って付けたような台詞を入れなくてもと思うのです。
それともまだまだ関係なくはないってことなのでしょうかね。

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『アイス・ロード』

2021年11月21日 | 映画(あ行)
『アイス・ロード』(原題:The Ice Road)
監督:ジョナサン・ヘンズリー
出演:リーアム・ニーソン,ローレンス・フィッシュバーン,ベンジャミン・ウォーカー,
   アンバー・ミッドサンダー,マーカス・トーマス,ホルト・マッキャラニー他
 
イオンシネマ茨木にて。
 
ワンパターンであろうが、批評家の評価が低かろうが、
そこそこ以上に楽しめることはわかっているのがリーアム・ニーソンのアクションもの。
バッドエンドが待っているはずもないから安心です。
 
先にひとつだけ文句を言ってもいいですか。
タイトルは『アイス・ロード』なのに、字幕はずっと「アイスロード」。
中黒ひとつのことでも、違うと気になってしまうのよ。
『ハンガー・ゲーム』(2012)なんて公式HPとポスターで違いましたからね。
それよりはマシか。
 
カナダ北部のカトカ鉱山ダイヤモンド採掘場
ある日、ここでメタンガスの爆発による崩落事故発生。
逃げ遅れた作業員26名が閉じ込められてしまう。
 
大型の装置を30時間以内に現場に届けなければ救出するのは無理。
その装置は重すぎて飛行機で運ぶことはできないから、
トラックに積んで氷の道“アイスロード”を通るしかない。
 
しかし時は4月。
徐々に氷が解ける季節の到来で、アイスロードは閉鎖されている。
政府はアイスロードへの門を再び開けることを決め、
この案が実現可能かどうかを運輸会社を経営するジム(ローレンス・フィッシュバーン)に相談。
ジムはミッションを請け負う腕利きのドライバーを急遽募る。
 
ミッションに臨むことになったのは、まずはジム自身。
以前ジムが雇っていた跳ねっ返りの女性ドライバー、タントゥー(アンバー・ミッドサンダー)。
先住民の血を引く彼女の兄が作業員の中にいるらしい。
そして、マイク(リーアム・ニーソン)とガーディ(マーカス・トーマス)兄弟。
 
この兄弟はさっき勤務先をクビになったばかり。
というのも、退役軍人のガーディがPTSDに苦しみ、職場でトラブルを起こしたから。
ほとんどヤケクソの気持ちで面接会場に乗り込んだマイク。
知的障害が見受けられるものの、整備士としてのガーディの腕は最高。
ジムは即座に兄弟の採用を決める。
 
こうして巨大なトラック3台に分かれて乗り込んだ面々。
現場に必要なのは装置1つだけ。2台失敗しても1台到着できれば。
慎重に出発する彼らだったが……。
 
は~い、ネタバレで~す。
 
薄くなりつつある氷だけが敵じゃないんですよね。
鉱山の管理を任せられていた幹部がよからぬことを考え、そのせいで起きた事故ともいえる。
だから、生還すれば事実を証言するであろう作業員に幹部は助かってほしくない。
必死の救助作戦もむなしく作業員たちは死亡したことにしたい。
 
こんな酷い幹部が雇った男バルネイが、保険会社の社員のふりをして同行します。
途中でドライバーたちを殺害しようとするこいつの悪いこと。
しかも走行中のトラックから投げ出されても、車もろとも崖から落ちてもまだ生きとる。
おまえはターミネーターか!と言いたくなりました。
 
やっぱり安定した面白さ。批評家なんて関係ない。
だからって、めちゃくちゃ面白かったわけではないけれど。(^^;
いつまでやるつもりなのかなぁ、リーアム・ニーソンは。
肩で息するようになるまで続けるのはやめましょうね。でもまだきっと大丈夫。

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