マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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脇本宮送りについて

2008年11月14日 07時22分23秒 | 桜井市へ
桜井市脇本の春日神社の祭礼は簡素化しているものの古くから伝わるかたちを残している。

特に宮座中で行われる頭屋渡しの儀式は珍しい形式だと一老さんがいう。

秋祭りは十月中旬。神主らの都合で毎年替わる。

平成20年は11日が宵宮で12が本祭となる。

宵宮の日は朝から御供搗きで、夕方には頭人や宮座衆は神社に参拝して宵宮祭りを執り行い拝殿で直会だ。

秋祭りを終えると一週間後に宮送りと呼ばれる頭屋渡しの儀式が行われる。

宮送りの前日は朝から五合くらいの重ね餅を宮座衆八つ、神官、一老はひとつ。

御供には四つで合計十四である。ブリキの型枠で作った「ハチ巻き飯」が餅に替わったというが作り方に特徴がある。

二段重ねの上の餅が軟らかいうちに皮を剥いたクリで真ん中をぐいと押し込んで入れ、その上からヘソ土器(カワラケと思われる)と呼ばれるものを被せる。

クリは中に埋め込まれているので見えなくなるそうで、なにを意味しているのかは判らないという。

翌日の朝、旧頭屋宅に集まる一老と神官。

支度を調えたころに座衆が集まってくる。

席には鏡餅を中央にナスビ、スルメ、コンブ、コイモ、エダマメを四隅に置いたお膳が並べられる。

かつてはクリの箸を使っていたが現在は祝い箸としている。

引き渡し用には焼きものの剣先スルメが載せられた高膳が置かれる。

重要な頭屋渡しの儀式は炊事場と決まっている。

かつての家には土間に竃があった。

その竃の前に筵を敷いて高膳を置いていたそうだが他所では見られない光景でとても珍しい。

そろそろ新頭屋を呼ぼうかと一老が言えば旧頭屋は新頭屋へこっちに来てやと電話を掛ける。

ところが一回では動じない。

呼出し三回目でやっと腰をあげて旧頭屋の家に伺う。

すんなりと引き受けでけんと、じらす意味があるのでしょうか。

揃った新旧頭屋は高膳を前に向かい合って座ると、神官、一老も席に着いて儀式が始まる。

なんども酒を注いではお膳のアテにいただく。

いわゆる固めの盃とされる三献の儀式だ。

儀式のあとの新頭屋は神官と一老とともに氏神さんと岩蔵さん、弁天さんに行って巡拝し儀式を終えるという。

是非とも訪問したい祭礼です。

(H20. 9.25 記)