天理市和爾町に3月行事がある。
和爾坐赤坂比古神社で行われた御田植祭に集まる高齢者集団の二十人衆。
うち十五人衆のKさんがひとこと伝えられた言葉である。
5月半ばころに直播きをするというのだ。
県内事例に直播きを見ることはまずない。
かつては苗代にモミダネ(籾種)を蒔いて苗を育てたという人もいたが、高齢者だった。
何人かが話してくれた直播きはずいぶん前に途絶えた。
山間部に住む男性たちはかつてしていた農法を話してくれたこともあるが、実際はどのような方法でしていたかは想像するしかない。
何年か前に拝見した直播きは天理市南六条に住むご夫婦だった。
FBやブログでその在り方を紹介したが、営農組合の方法では、まったく違うらしい。
取材させていただけないかとお願いしていたら5月8日に電話があった。
直播き工法は和爾町の営農組合が主導的にしているという。
蒔く籾種はカルパーという方法で籾にコーティングをする。
金平糖を作るようなぐるぐる回転する機械でコーテイングする手法は平成15年から始めたという。
同時並行的に営農組合ライスセンター付近の圃場で代掻きをする。
数日経ってから背負った機械にコーテイングした籾種を水田に蒔く。
そんなんでえーんやったら見に来られますか、ということだった。
現代の直播き工法をみることはまずない。
機会お与えてくださった十五老のKさんに感謝する。
教えてもらっていたこの日に営農組合ライスセンターを訪れた。
営農組合の組合員は60人ほど。
12~13人が集まって毎日の作業をしている。
金平糖を作るような、イメージしていた通りの機械が回転するが、どちらかといえば、昔しによく見たセメントコネコネのセメントミキサー車の構造を思い出した。
JAから直買いした籾種1袋をカルパー粒剤でコーテイングする。
水道水の水をバケツで汲み上げる。
自動的に水分量を計測してくれるコーテイング機械。
籾種の一粒、一粒を綺麗にコーテイングする。
かつてはハンドルを手で回す手動式だった。
つい最近まではそうしてきたが、今は平成22年に導入した電動式自動回転式粉衣装置(ヤンマー自動コーテイングマシンYCT20)でコーテイングする。
消毒薬も注入して、カルパー粒剤と同時に籾種を消毒する。
保土谷化学工業製造のカルパー粒剤(※登録商標)は籾を蒔いた水田の土壌中で徐々に分解されて酸素を発生させるようだ。
蒔いた籾種は軽くて浮いてはなんにもならん。
逆に重すぎてもいかんらしい。
重さが重要なポイントである。
あるメーカーでは鉄分を付与することで加減しているらしい。
らしい、らしい、としか言いようのない始めて聞く農法に興味津々であるが、化学的な理解はまったくわからないが、粒剤メーカーの謳い文句に「本剤を種籾に粉衣して播種すると、土壌中で徐々に酸素を放出し、発芽中の種子に酸素を供給することにより直播水稲の発芽率を向上させ、苗立歩合の安定化に有効である」と書いてあった。
始めたころの直播(ちょくはん)農法は鉄で絡めていた。
ところが重さで埋まりすぎて芽が出なかった。
7年間も試行錯誤していた直販農法。
ようやく定着したのは今から7年前。
代掻きと並行する作業に、明日の夕方には田圃の水を抜くと話す。
十五老のKさんが補足される直播農法にドタ(泥田)の種撒きがあるという。
なんでも福岡式と云われるドロダンゴ投入方式。
山間では田圃の形が一定でなく、田も小さい。
畦から捕植する落下傘式だと話されるがリアルな像が浮かばない。
そのような話しをしてくださったKさんが東の方にある山を指さした。
その山は小山であるが、山の名は天神山。
今年も御田植祭をした和爾坐赤坂比古神社が鎮座していた旧社地になるという。
戦後間もない昭和23年。
戦争を終えた村の人らが外地から戻ってほどないころの時代である。
そのころまでしていた雨乞い。
天神山下にある池堤に村の人が集まっていた。
神職に頼んで雨乞い祈願をしていたという情景は、昭和13年生まれの78歳になったKさんが子どものころの記憶である。
また、営農組合は土地改良区・営農課組織から発展して今に至るという。
計画的に前もって作業日程を構築しておくと、組合長が話す。
5月初めの草刈りから始まった直播き農法は7日から3日間は畦塗り。
中旬には肥料配布に耕起して水入れ。
荒マンガを経てまたもや水入れ。
それから数日経ったころにカルパー粒剤作業である。
1袋が3kgのヒノヒカリ籾種に対して1袋が3kgのカルパー粒剤が2袋。
カルパー粒剤をコーテイングしたら実質は2.2kgになるという。
撒きすぎては籾種が密集してしまうので難しいところでもある。
その量で10反分を賄う。
籾種と粒剤の分量決めは、圃場の田一枚、一枚の面積を計算されて、それに見合う籾種量を決める。
つまりは一枚の水田に蒔く籾種量である。
歩合計算はロスなどこれまでの実績を加味して決められる。
一枚分の量が決まれば、それに見合うカルパー粒剤の量が決まる。
なんでも計算した上で作業量も決まるのだ。
その後の作業日程も計画されている。
代掻きに水抜き。
代掻きに播種。
代掻きに水抜き。
播種に代掻きに水抜き。
24日から始める直播きは28日までの毎日である。
そうしておけば6月のはじめぐらいには芽が出る。
また、奈良県の特産品を紹介してもらって栽培しているマコモダケもある。
マコモダケの生産はここ天理市と奈良市の阪原だけのようだ。
マコモダケは6月に苗を植えて、10月には収穫できるという。
ぐるぐる回転する処理状況はドアを閉めて行われる。
粒剤を混ぜる作業には注意事項がある。
粒剤は混ぜるときに粉となって飛び散る。
粉末は目に対して刺激性がある。
動作中は蓋をするのは当然であるが、直接的に作業する人は保護メガネやマスク着用を要する。
実は1回目のカルパー粒剤作業に誤りがあった。
粒剤の量に合わせて水の量も決めなければならない。
原因は水の量ではなく、投入したカルパー粒剤の量に軽量誤りがあった。
どうも、水分量を操作するレバー値がずれていたようだが、この状態であっても十分に使える。
そのために水分を多く含んでしまった籾種を乾かすために筵に広げた。
日が当たるうちに乾いていく。
干してから40分後には黒から白色に色具合が変化しはじめた。
この日はカルパー粒剤の作業と並行的に代掻きもする。
あっちの圃場、こっちの圃場と動き回って代掻きをする。
代掻きはこの日だけでなく、明日も、明後日も・・・。
こういった作業は6人の組合員でしている。
尤も和爾町営農組合は60人も所属しているが、実際に作業できる人は限られている。
うち二人は代掻き名人。
この日含めて6日間の毎日に出動する。
一回あたりのカルパー粒剤の衣付け作業はだいたいが30分程度。
一回ずつの回転はおよそ20分。
前後に投入や排出。
そして袋詰め。
午後も引き続きしているというが、午前中までしかお付き合いできない。
まだまだある準備済の袋を見てこの日は何袋するのだろうか。
午後いっぱいまでかかりそうだと話していた。
営農組合ライスセンター内に機械がある。
播種の前に行うべき作業が溝掘り。
車高が高い大きな車輪のある機械の後方に取り付けるアタッチメントが溝掘り道具。
水掻きというか、鋤簾の小型判に動力散布機もある。
明日の作業の出番待ち。
ところで、この日の作業におられた組合員が私に声をかけた。
その男性は、大和郡山市の矢田山ある場所でしていた水質調査の池にニッポンパラタナゴがいたと、話す。
そこから話題が広がって大和郡山市の少年自然の家の主催事業に観察指導員をしていたとも。
お名前を聞けば、Mさん。
なんと云十年ぶりの再会に驚きだった。
専門の水質関係の動植物観察なら任せてくださいと伝えられたが、観察・調査はボランテイア活動をされていないように感じた。
(H29. 5.22 EOS40D撮影)
和爾坐赤坂比古神社で行われた御田植祭に集まる高齢者集団の二十人衆。
うち十五人衆のKさんがひとこと伝えられた言葉である。
5月半ばころに直播きをするというのだ。
県内事例に直播きを見ることはまずない。
かつては苗代にモミダネ(籾種)を蒔いて苗を育てたという人もいたが、高齢者だった。
何人かが話してくれた直播きはずいぶん前に途絶えた。
山間部に住む男性たちはかつてしていた農法を話してくれたこともあるが、実際はどのような方法でしていたかは想像するしかない。
何年か前に拝見した直播きは天理市南六条に住むご夫婦だった。
FBやブログでその在り方を紹介したが、営農組合の方法では、まったく違うらしい。
取材させていただけないかとお願いしていたら5月8日に電話があった。
直播き工法は和爾町の営農組合が主導的にしているという。
蒔く籾種はカルパーという方法で籾にコーティングをする。
金平糖を作るようなぐるぐる回転する機械でコーテイングする手法は平成15年から始めたという。
同時並行的に営農組合ライスセンター付近の圃場で代掻きをする。
数日経ってから背負った機械にコーテイングした籾種を水田に蒔く。
そんなんでえーんやったら見に来られますか、ということだった。
現代の直播き工法をみることはまずない。
機会お与えてくださった十五老のKさんに感謝する。
教えてもらっていたこの日に営農組合ライスセンターを訪れた。
営農組合の組合員は60人ほど。
12~13人が集まって毎日の作業をしている。
金平糖を作るような、イメージしていた通りの機械が回転するが、どちらかといえば、昔しによく見たセメントコネコネのセメントミキサー車の構造を思い出した。
JAから直買いした籾種1袋をカルパー粒剤でコーテイングする。
水道水の水をバケツで汲み上げる。
自動的に水分量を計測してくれるコーテイング機械。
籾種の一粒、一粒を綺麗にコーテイングする。
かつてはハンドルを手で回す手動式だった。
つい最近まではそうしてきたが、今は平成22年に導入した電動式自動回転式粉衣装置(ヤンマー自動コーテイングマシンYCT20)でコーテイングする。
消毒薬も注入して、カルパー粒剤と同時に籾種を消毒する。
保土谷化学工業製造のカルパー粒剤(※登録商標)は籾を蒔いた水田の土壌中で徐々に分解されて酸素を発生させるようだ。
蒔いた籾種は軽くて浮いてはなんにもならん。
逆に重すぎてもいかんらしい。
重さが重要なポイントである。
あるメーカーでは鉄分を付与することで加減しているらしい。
らしい、らしい、としか言いようのない始めて聞く農法に興味津々であるが、化学的な理解はまったくわからないが、粒剤メーカーの謳い文句に「本剤を種籾に粉衣して播種すると、土壌中で徐々に酸素を放出し、発芽中の種子に酸素を供給することにより直播水稲の発芽率を向上させ、苗立歩合の安定化に有効である」と書いてあった。
始めたころの直播(ちょくはん)農法は鉄で絡めていた。
ところが重さで埋まりすぎて芽が出なかった。
7年間も試行錯誤していた直販農法。
ようやく定着したのは今から7年前。
代掻きと並行する作業に、明日の夕方には田圃の水を抜くと話す。
十五老のKさんが補足される直播農法にドタ(泥田)の種撒きがあるという。
なんでも福岡式と云われるドロダンゴ投入方式。
山間では田圃の形が一定でなく、田も小さい。
畦から捕植する落下傘式だと話されるがリアルな像が浮かばない。
そのような話しをしてくださったKさんが東の方にある山を指さした。
その山は小山であるが、山の名は天神山。
今年も御田植祭をした和爾坐赤坂比古神社が鎮座していた旧社地になるという。
戦後間もない昭和23年。
戦争を終えた村の人らが外地から戻ってほどないころの時代である。
そのころまでしていた雨乞い。
天神山下にある池堤に村の人が集まっていた。
神職に頼んで雨乞い祈願をしていたという情景は、昭和13年生まれの78歳になったKさんが子どものころの記憶である。
また、営農組合は土地改良区・営農課組織から発展して今に至るという。
計画的に前もって作業日程を構築しておくと、組合長が話す。
5月初めの草刈りから始まった直播き農法は7日から3日間は畦塗り。
中旬には肥料配布に耕起して水入れ。
荒マンガを経てまたもや水入れ。
それから数日経ったころにカルパー粒剤作業である。
1袋が3kgのヒノヒカリ籾種に対して1袋が3kgのカルパー粒剤が2袋。
カルパー粒剤をコーテイングしたら実質は2.2kgになるという。
撒きすぎては籾種が密集してしまうので難しいところでもある。
その量で10反分を賄う。
籾種と粒剤の分量決めは、圃場の田一枚、一枚の面積を計算されて、それに見合う籾種量を決める。
つまりは一枚の水田に蒔く籾種量である。
歩合計算はロスなどこれまでの実績を加味して決められる。
一枚分の量が決まれば、それに見合うカルパー粒剤の量が決まる。
なんでも計算した上で作業量も決まるのだ。
その後の作業日程も計画されている。
代掻きに水抜き。
代掻きに播種。
代掻きに水抜き。
播種に代掻きに水抜き。
24日から始める直播きは28日までの毎日である。
そうしておけば6月のはじめぐらいには芽が出る。
また、奈良県の特産品を紹介してもらって栽培しているマコモダケもある。
マコモダケの生産はここ天理市と奈良市の阪原だけのようだ。
マコモダケは6月に苗を植えて、10月には収穫できるという。
ぐるぐる回転する処理状況はドアを閉めて行われる。
粒剤を混ぜる作業には注意事項がある。
粒剤は混ぜるときに粉となって飛び散る。
粉末は目に対して刺激性がある。
動作中は蓋をするのは当然であるが、直接的に作業する人は保護メガネやマスク着用を要する。
実は1回目のカルパー粒剤作業に誤りがあった。
粒剤の量に合わせて水の量も決めなければならない。
原因は水の量ではなく、投入したカルパー粒剤の量に軽量誤りがあった。
どうも、水分量を操作するレバー値がずれていたようだが、この状態であっても十分に使える。
そのために水分を多く含んでしまった籾種を乾かすために筵に広げた。
日が当たるうちに乾いていく。
干してから40分後には黒から白色に色具合が変化しはじめた。
この日はカルパー粒剤の作業と並行的に代掻きもする。
あっちの圃場、こっちの圃場と動き回って代掻きをする。
代掻きはこの日だけでなく、明日も、明後日も・・・。
こういった作業は6人の組合員でしている。
尤も和爾町営農組合は60人も所属しているが、実際に作業できる人は限られている。
うち二人は代掻き名人。
この日含めて6日間の毎日に出動する。
一回あたりのカルパー粒剤の衣付け作業はだいたいが30分程度。
一回ずつの回転はおよそ20分。
前後に投入や排出。
そして袋詰め。
午後も引き続きしているというが、午前中までしかお付き合いできない。
まだまだある準備済の袋を見てこの日は何袋するのだろうか。
午後いっぱいまでかかりそうだと話していた。
営農組合ライスセンター内に機械がある。
播種の前に行うべき作業が溝掘り。
車高が高い大きな車輪のある機械の後方に取り付けるアタッチメントが溝掘り道具。
水掻きというか、鋤簾の小型判に動力散布機もある。
明日の作業の出番待ち。
ところで、この日の作業におられた組合員が私に声をかけた。
その男性は、大和郡山市の矢田山ある場所でしていた水質調査の池にニッポンパラタナゴがいたと、話す。
そこから話題が広がって大和郡山市の少年自然の家の主催事業に観察指導員をしていたとも。
お名前を聞けば、Mさん。
なんと云十年ぶりの再会に驚きだった。
専門の水質関係の動植物観察なら任せてくださいと伝えられたが、観察・調査はボランテイア活動をされていないように感じた。
(H29. 5.22 EOS40D撮影)