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もう一度観た映画「ラブ・アクチュアリーLove Actually」2003年制作

2022-10-06 17:09:07 | 映画
 映画の導入部でヒュー・グラントがナレーションで言う「世の中に嫌気がさしてきたらヒースロー空港の到着ゲートへ。人は言う“現代は憎しみと欲だけ“と、そうだろうか? ここには“愛“の光景がある。
 崇高な“愛“ではなくニュース性もない。ハグする父と子、母と子、夫と妻、恋人同士、懐かしい友人。“9月11日“の犠牲者があの時かけた電話も“憎しみや復讐でなく愛のメッセージだった。見回すと実際のところこの世には愛が満ち溢れている。(Love actually is all around)」

 このLove Actuallyは邦題にしにくいせいかそのままラブ・アクチュアリーとなっている。ネットでアメリカ人女性英語教師が解説しているが、actuallyは「実は」ということで、相手の勘違いを訂正したり、思っていることを訂正する会話でよく使うとのこと。
一例として
A: Do you want some wine? ワインいる?
B: No thanks. Actually, I don’t drink wine. いや大丈夫。実はワイン飲まないの、という具合。

 映画は、子供から老人まで19人の男女が織りなす愛の物語。出演者は、ヒュー・グラント、リーアム・ニーソン、コリン・ファース、ローラ・リニー、エマ・トンプソン、アラン・リックマン、キーラ・ナイトレイ、ビル・ナイ、マルティン・マッカチョン他というオール・スターキャスト。

 すべての恋物語を書くわけにいかないので、ヒュー・グラントとマルティン・マッカチョンのコメディを。英国首相を務めるのは、独身のデイヴィッド(ヒュー・グラント)、その秘書がナタリー(マルティン・マッカチョン)。常日頃お互いに気になる存在になっていた。そんな折、アメリカ大統領(ビリー・ボブ・ソーントーン)訪英で首脳会談。デイヴィッドが書類を持って執務室に戻ったとき、好色なアメリカ大統領がナタリーを口説いている場面に遭遇する。共同記者会見は、辛辣な言質でアメリカ大統領を批判して惨憺たる結果に終わる。

 ついでにナタリーの節操のなさにも腹を立て配置転換を断行。しかし、クリスマスイブはすべての人に穏やかでハッピーな気分をもたらす。ナタリーからのクリスマス・カードには愛が溢れていた。もうこうなったらナタリーの家に行くしかない。イギリスの下町という風情の棟割長屋が連なる一軒の家にやってきたデイヴィッド。ナタリーが家族揃ってクリスマスイブの集いで学校に出かけるところだった。

 一緒に行こうというデイヴィッド。有名人のデイヴィッドが、会場に入るわけにいかない。こそこそと舞台裏に迷い込み、ナタリーとキスしているとカーテンが開き、二人は白日の下にさらされ、苦笑いして手を振るしかなかった。

 この映画のサウンドトラック盤も発売され好評を博した。その中から1曲、ビートルズの「All you need is love愛こそすべて」を聴いていただきますが、欧米ではこの曲を教会での新婦の入場時に演奏されることが多いと言います。

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もう一度観たい映画「ジョー・ブラックをよろしくMeet Joe Black」1998年制作

2022-09-29 17:00:29 | 映画
 ブラッド・ビッドが死神、アンソニー・ホプキンスは会社社長の役で3時間という長尺ながら、不思議なラヴストーリーが展開され、ほぼ退屈しないで観られた。

 既に妻は亡く一人寝が続いているが、時折どこからともなく「イエス」という言葉がビル・パリッシュ(アンソニー・ホプキンス)の耳に届く。ビルは空耳かと思い目をつむる。するとまた「イエス」。そんな日常が続く中、65歳の誕生日が近づく。

 広大な屋敷の庭からなだらかに続く芝生の傾斜は川に続いている。そこでは、ビル65歳の誕生祝のパーティの準備も進められている。ここからマンハッタンにある社屋にヘリコプターで出勤する。同行にするのは愛娘のスーザン(クレア・ホーラニ)と有能な秘書ドリュー(ジェイク・ウェーバー)。このドリューは、スーザンの恋人でもある。

 その機中ビルは言う「スーザン、ドリューとの関係を見ていると情熱が感じられない。恋は情熱でするものだよ」スーザンはただ笑顔を浮かべているだけだった。

 目的地でスーザンは父親たちと別れ、病院の内科研修医として勤務する前にコーヒー・ショップに立ち寄る。そこには店の電話で何やら大声で話している若者がいた。その若者(ブラッド・ビッド)が電話を終えて、スーザンの筋向いに座って「おはよう」と声をけて来た。気さくで純粋さを秘めたハンサムな男。スーザンは電流に触れたように、心奥では好きになっていた。

 店の前で別れを惜しみながら左右に歩む。スーザンが振り返れば男は背を向けている。男が振り返ればスーザンが背を向けている。決して同時に振り返ることはなかった。やがてスーザンが角を曲がって姿を消す。男は横断歩道を渡りきる前に振り返る、そこには誰もいない空間が広がっているだけだった。とその瞬間、急ブレーキの音ともに若い男の体が空中に投げ出された。

 この男の体に乗り移った死神は、ジョー・ブラックと名乗ってビルの前に姿を現す。死神はビル・パリッシュの寿命が尽きたことを知らせ迎えに来たのだ。

 死神とスーザンの恋が深まっていく。死神はキスもセックスも未体験。 スーザンが常にリードする。この映画のセックス・シーン、キレイで控え目で好感の持てるものだった。

 結末は死神が身を引き、三途の川に架かる太鼓橋の向こうにビルとともに姿を消し、戻ってきたのはジョー・ブラックではなくコーヒー・ショップの若い男だった。ビル・パリッシュ誕生祝の花火が盛大に打ち上げられる中、手をつないだ若い二人の後ろ姿が幸せそうだった。

 35歳のブラッド・ビッド、確かにすごいハンサムだ。66歳のアンソニー・ホプキンス、26歳のクレア・ホーラニを見ていると「若さってやっぱりいいなあ」と思わずにいられない。
   

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映画「ダーティ・ガイズ パリ風俗街潜入捜査線」2018年フランス/ベルギー

2022-07-28 12:46:28 | 映画
 「フランスの有名な風俗街を撲滅しようと、潜入捜査を命じられた刑事ふたり。荒っぽくイケイケな中年刑事マルタンと、真面目で神経質なイケメン刑事ジョルジュはそれぞれ偽名を使い、ポルノ業界へ潜入捜査を開始すると、そこは男たちにとってのパラダイスだった!!

 ホシは業界のドン、モーリス・ヴォジェル。ある日ふたりが経営するポルノクラブが何者かの襲撃を受ける。そんな時、手を差し伸べたのがモーリス・ヴォジェルだった。イカれた世界ではあるが、映画製作の夢を語るモーリスに惹かれて、ついに映画製作に乗り出すふたり。監督や撮影クルーたちと毎日お祭り騒ぎのような日々を送り、どっぷりとポルノ業界の魅力にハマったふたり。そんなふたりに、衝撃の命令が下される!!」

 これはアマゾン・プライム・ビデオのキャッチ・コピーをコピペしたもの。イケメン刑事ジョルジュにギョーム・カネ。中年のマルタンをジル・ルルーシュが演じ、ポルノ業界に新しく入ってくる新人にヴァージニ(カミーユ・ラザ)というキャスト。

 この映画の評価はよくない。そりゃそうだろう、女優の裸ばかりだから。そんな中でイケメン刑事のジョルジュとヴァージニのラブロマンスは、清涼剤と言えるだろう。愛し合った後、ヴァージニが言う「私がポルノシーンに出るの気になる?」ジョルジュが言う「気にならないよ」しかし、ヴァージニの表情はちょっと寂しそうで「気になると言ってほしかった」と書いてあった。

 ヴァージニを演じたカミーユ・ラザが美形だ。今後注目していい女優に見える。そして上層部の命令が業界のドン、モーリスの逮捕はもとより、映画の関係者も逮捕せよなのだ。怒った二人の刑事は、反旗を翻す。 という他愛ないストーリーなのだ。でも私は楽しめた。

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映画「底知れぬ愛の闇Deep Water」2022年公開アマゾンプライム

2022-04-07 15:31:23 | 映画
 「なんだこの女、いい加減にしろよ!」「おいおい、しっかりしろよ。男だろ!」この映画を鑑賞中絶え間なくこんな言葉を頭の中でつぶやいていた。それは私たちが常識をわきまえているからなのだ。

 この非常識な夫婦にとっては何の問題もない。非常識というより狂った夫婦といえばいいかも。家族は三人。夫ヴィック(ベン・アフレック)。妻メリンダ(アナ・デ・アルマス)娘一人。

 ヴィックはメリンダに「愛しているよ」と言いながら、メリンダがほかの男といちゃついているのを無表情に眺めている。メリンダもそれは承知で大いに羽目を外す。しかし、裏で相手の男に「メリンダがだれだれを殺したんだ。これは確かなことだよ」という。こんなことを聞いて今まで通りメリンダと付き合えないのは確かなことだ。その男は仕事でブラジルに旅立った。

 メリンダがプールで自身のピアノ教師とヴィックの目の前で戯れる。さすがにヴィックの表情が険しくなる。急な雷雨で部屋に引き上げた後、プールに浮かぶピアノ教師。間違いなくヴィックの仕業。いつまでこんなゲームを続けるのだろう。疑問がわいてくる。

 観る人によって感想は大いに違ったものになるだろう。夫婦の寝室は別々。ヴィックが性的不能でメリンダが浮気するのか。あるいは殺人が快感を呼ぶのか。この映画はこれ以上書かないほうがいい。

 一つ言えることは、いつもは眠気に襲われるが、これには全くなかった。ちょっとイライラした気分で観ていた。そして一つだけヒント、夫婦は似るもののようだ。「官能的なミステリー」と謳うキャッチコピー。

ベン・アフレック、1972年カリフォルニア州バークレー生まれ。友人のマット・デイモンと共同で脚本を書いた「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」(1997年)でアカデミー脚本賞受賞、

アナ・デ・アルマス、1988年キューバ生まれ。

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映画「ガラスの城の約束The Glass Castle」劇場公開2019年

2022-03-07 16:20:03 | 映画
 自分の境遇を恥ずかしく思ったことはないだろうか? 父親の職業が、父親の暴力的なところが、母親の優柔不断なところが、貧乏な家庭が……これは実話でニューヨーク・マガジンのコラムニスト、ジャネット・ウォールズの勇気ある自叙伝なのだ。
 2005年に発刊された「ガラスの城」は好評で、400万部を売り上げ31の国で出版された。

 映画の出だしはジャネットが成人して、婚約者の証券アナリストのデヴィッド(マックス・グリーンフィールド)を交えた仲間内の食事会で、ジャネット(ブリー・ラーソン)の家族について問われたとき、少し言いよどみながら「母はアーティストで、父は起業家です。質の悪い漂青炭を効率よく燃やす技術を開発しています」と言う。

 これはデヴィッドと打合せ済みで、回答をでっちあげてあった。ジャネットはそこそこの収入を得られるコラムニストとして、世に出ようとしていた。過ごしてきた家族、特に父について恥ずかしさと憎しみを払しょくできないでいた。

 父レックス・ウォールズ(ウディ・ハレルソン)は、アル中で暴力をふるう男だったが、自由な精神と行動が変わり者に見えた。ボディの塗装が剥げ、穴の開いたワゴン車に妻ローズマリー(ナオミ・ワッツ)と子供4人を乗せて放浪する。荒野で野宿をする。枝ぶりのいい木を見つければ、ローズマリーは絵筆を握る。学校教育を否定する。子供たちは学校には、行っていない。その代わりに本を読ませる。レックスは博識だからいろんなことを教えていく。ジャネットには白紙のノートを渡して、これに綴っていけ。

 レックスのひどい時は、食べ物がないのに自分は酒を飲む。ようやく丘の上にボロ家を見つけ住みつく。庭にガラスの城を作ろうとジャネットと約束する。しかし、父の行状にたまりかねて、ジャネットは家を出る。

 父と疎遠な中、ジャネットはデヴィッドと結婚して素敵な家に住んでいる。二人とも成功した結果だった。今夜も裕福な顧客とのディナーが待っている。これはあくまでもデヴィッドのビジネスのため。

 その席でデヴィッドがジャネットの父に話を振った。いつもの偽りの話へと。ジャネットは「ちょっと失礼します」と言って席を立った。

 化粧室の鏡の前で父を回想した。ウォールズ家の人間は腹の中で炎が燃えているとも言ったし、悪魔を退治する鋭いナイフも見せてくれた。ジャネットは思う「私の中の恥じらう気持ちは悪魔かもしれない。子供は両親を選べない。したがって、両親は子供を健やかに育てなければならない。それが義務だ。父のような育て方がいいとは言えない。でも、父に変わりはない。どんなことがあっても」ジャネットの恥じらう気持ちと憎しみは、鋭い刃によって断ち切られた。

 席に戻ったジャネットは「両親は空きビルの不法居住者です。3年間ホームレスで昔から貧乏でした。父は研究なんかしてないけど、何でも答えてくれた。誰よりも賢い人です。そして酒浸りで、やることが中途半端、性格も破綻している。でも、誰よりも大きな夢を持ち、自分に正直です。私にもそうあれと」
 デヴィッドに向かって「ごめん、行くわね」デヴィッドとの関係も終わり、ジャネットは新しい門出に向かって歩き始めた。残念なのは、父が約束したガラスの城が出来なかったことだ。でも、その城は私が造る。

 ジャネット・ウォールズ本人は、1960年アリゾナ州フェニックスで生まれる。フェニックスからカリフォルニア州サンフランシスコ、ネバダ州バトルマウンテンとホームレスの生活を経てウェストバージニア州ウェルチの小高い丘の上の家に落ち着く。電気も水もない3部屋の家だった。

 17歳でニューヨークに出て妹ロリと一緒に住む。法律事務所で1年間電話番の仕事をして、助成金、ローン、奨学金でバーナード・カレッジ・コロンビア大学に学び1984年卒業する。
 ブルックリンの新聞「フェニックス」の記者、1987年から1993年までニューヨークの雑誌「インテリジェンス」にコラムを執筆、1993年から1998年まで男性誌「エスクァイア」のゴシップコラムを書き、以後有料テレビチャンネルのMSNBCや各テレビ局にも出演している。

監督
デスティン・ダニエル・クレットン1978年ハワイ州マウイで日系アメリカ人の母とアイルランドやスロバキアの血を引く父親との間に生まれる。2013年ブリー・ラーソン主演の「ショート・ターム」が批評家からの熱烈な支持を得て各地で多くの賞を受賞、ブリー・ラーソンも高い評価を得た。

キャスト
ブリー・ラーソン1989年カリフォルニア州サクラメント生まれ。フランス系アメリカ人。

ウディ・ハレルソン1961年テキサス州ミッドランド生まれ。特異な性格俳優であるが、生い立ちも特異、性格も特異でこの映画の役にもピッタリ。父親はマフィア雇われの殺し屋、母は弁護士秘書。父親は1978年連邦判事射殺の罪で終身刑、刑期中に死亡。ウディ本人は数々の問題行動を起こし、たびたび警察に逮捕される。有名なのが大麻合法化活動家としてらしい。

ナオミ・ワッツ1968年イギリス、イングランド、ケント州生まれ。アカデミー賞にノミネートされるが受賞に至っていない。

マックス・グリーンフィールド1979年ニューヨーク州ドブス・フェリー生まれ。

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読書「ガットショット・ストレートGutshot Straight」ルー・バーニー著2014年刊

2022-03-05 20:45:23 | 映画
 ライトを浴びて淡いグリーンにきらめく瞳。チョットゆがんだ笑み。興味をそそる鼻の上を横断して散らばるそばかすの彼女の名前はジーナ。
 どんな危ない局面でも、パンツにお漏らしをするようなことのない胆力のある女なのだ。

 そのジーナに参ってしまったんのがシェイクという男。チャールズ・サミュエル・ブション通称シェイクという男は、自動車窃盗の罪でカリフォルニア州ミュール・クリーク刑務所に収監されていて、15年の刑を終えようとしている42歳の白人男である。

 刑務所で鍛えられたのか、あるいは元々の性質なのか何事にも動じない。その彼が誓いを立てている。出所したら絶対悪事の道は入らないと。
 レストランを開く夢を、個室のベッドであれこれと想像する。レストランはメニューが命だ。フライパンで揚げるフライドチキン、小麦粉はごく薄く振り、スパイスはたっぷりと効かせて。マッシュポテトにまったりと濃厚なグレーヴィー・ソースを添えて。オクラも数本、もちろんシェイクの祖母がよく作ってくれたようなルーを絡めて。
 魚のグリル焼き。種類は新鮮で美味しければ何でもいい。かけるのはレモン風味のグルノーブル・ソースあたりか。

 ところが裏稼業の身では、おいそれと更生の道を歩かせてはくれない。バスでロサンゼルスに着いた。隣に座った婆さんをタクシーに乗せて見送ったとき、音もなく長い黒色のリムジンが滑り込んだ。
 助手席側の後部のスモークガラスがするすると下りるとアレクサンドラ・イランドリャン(レクシー)の笑顔があった。かつては濃密な時間を共に過ごした相手。シェイクが知る中で、最も美しく最も恐ろしい女なのだ。

 アルメニアに生まれ16歳でトルコ国境の山岳地帯を根城にする部族軍頭領に嫁入り、20歳の頃にはその頭領を始末してリーダーとなり、近隣の部族軍を配下に収め数年後アメリカに移住した。
 今ではロサンジェルス中のアルメニア人ギャング全体を支配している。彼女の肌触りはぬくもりがあるが、心は氷点下の冷たさ、油断のならない女だ。

 その女レクシーにハリウッドにあるステーキハウスで頼まれたのが「ラスベガスまで車を運転する。男と会ってその車を渡す」シェイクが後を引き取って「その男からブリーフケースをもらう。飛行機でロサンジェルスに戻って、ブリーフケースを君に渡す。それで2万ドル」義理もあるし、レストラン開店資金も必要だし、やむを得ず引き受ける。
 ラスベガスまで転がす車のトランクに、猿ぐつわと手錠という格好で入れられていたのがジーナなのだ。

 ギャングの悪の世界で生き延びようとする一人の男を,、コメディタッチで描くクライム・サスペンス。わたしにはあまり余情のないストーリー展開のため、感情移入できなくてやや退屈だった。
 この本の前に読んだルー・バーニーの「11月に去りし者」の方が私の好み。

 ちなみに、題名の「ガットショット・ストレート」とは、ポーカー用語、ガットショット・ストレート・ドローのこと。別名インサイド・ストレート・ドロー。たとえば手持ちのカードが3・4・6・7・8なら,間の5を引くとストレート完成となる状態のことと解説がある。

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映画「博士と狂人The Professer and Madman」劇場公開2020年10月

2022-02-28 13:44:11 | 映画
 「愛があれば、その先は?」夫を殺された妻の問いかけなのである。これには70年にも及ぶ英語辞典「オクスフォード英語辞典Oxford English Dictionaly」編纂にまつわる真実の一コマなのだ。

 博士というのは、スコットランド生まれのジェームズ・マレーのこと。ジェームズ・マレーは、独学でラテン語、フランス語、イタリア語、ドイツ語、ギリシャ語を身に着けた。1879年「オクスフォード英語辞典Oxford English Dictionaly」の編纂主幹となる。この役を演じるのは、メル・ギブソン。

 一方狂人とされているのが、ウィリアム・チェスター・マイナーというアメリカの軍医。南北戦争で北軍の軍医として従軍、脱走兵の頬に「D」の焼き印を押すことを命じられ、それがトラウマとなったようで誰かが自分を殺しに来るという幻想を抱くようになった。イギリス、ロンドンに移ったとき、その幻想から一人の男を撃ち殺した。裁判では精神異常を考慮して無罪、身柄は精神病刑務所に収監される。マイナーを演じるのは、ショーン・ペン。

 マレー博士の辞書編纂の手法が奇抜だった。それはボランティア方式というもので、市井の人々からの提言を広く受け取ることだった。それに応募してきたのがマイナーだった。結果的にマイナーが辞書編纂に大きく貢献した。
 そういう日常の中でマイナーが行ったのは、アメリカ陸軍からの恩給をすべて被害者の家族に贈るというもの。残された未亡人イライザ・メレット(ナタリー・ドーマー)は、受け取りを拒否する。

 しかし、6人の子供を抱えるイライザの生活は苦しかった。街で娼婦まがいのこともしなくてはならない。クリスマスに届いたマイナーからの贈り物で、ひもじい思いをしなくて済んだ。子供たちのことを思うと、憎しみだけで行為を拒否するのも大人げている。マイナーの恩給を受け入れた。受け入れるということは、お礼も言わなければならないし、時折、訪ねてお見舞いもしなければならない。それが人の道というもの。

 やがてマイナーという男の人間性にも触れる。イライザが文字が読めないのを知ったマイナーが手ほどきをする。イライザは家族をマイナーに紹介する。イライザからつぶさに聞いていた子供たちの名前を言いながら、一人ひとり目を合わせて挨拶していった。最後の長女のとき、マイナーの頬にビンタが飛んだ。驚き悲しむマイナー。

 別の日、イライザが訪れた。長女の無作法を謝るとともに、もう憎しみはないと言いながら、こんな言葉を書いたから後で読んでとメモを渡す。それには「愛があれば、その先は?」と記してあった。好意から淡い愛に変わったイライザ。

 マイナーは、これで彼女の亡き夫を二度も殺したことになると思い、それが一層悩みの種となった。自閉的になったマイナー。そして遂に驚くべき行為、自分のペニスを切断した。

 「愛があれば、その先は?」の問いかけに編纂者のマレー博士とその妻も「その先」の答えを求めた。マレー博士は「決して償いきれない」と言うし、妻は「試練を与えられたときは、屈しない覚悟が求められる」と答えた。

 しかし、イザベラの答えは「愛があれば、愛を呼ぶ」と言う。それで覚醒したのがマイナーだった。歴史に残る偉業を物語るとともに「愛」について語るこの映画、批評家の低評価と裏腹に、わたしには素晴らしい愛についてのメッセージだった。もし「愛がなければ、その先は?」と問われれば、“心が冷え冷えとしたもの“になるだろう。

メル・ギブソン1956年ニューヨーク州ピークスキル生まれ。

ジョーン・ペン1960年カリフォルニア州サンタモニカ生まれ。

ナタリー・ドーマー1980年イギリス、イングランド、レディング生まれ。

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映画「ワイルド・ローズ WILD ROSE」劇場公開2020年

2022-02-09 13:05:27 | 映画
 イギリスのスコットランド南西部に位置するグラスゴーが舞台。人口は郊外も含めれば100万都市でイギリスの4番目に位置する。

 その町でカントリー・ミュージックの歌手を夢見るシングルマザー、ローズ(ジェシー・バックリー)の居場所探しのお話。
 主役を演じるジェシー・バックリーは、映画「もう終わりにしよう」でバレエを踊る場面を見て体の動きがよかったので俄然興味がわいた。

 そしてこの映画、批評家の評価もよく「スター誕生を描く作品が世に不足しているわけではない。しかし、「ワイルド・ローズ」は、その手の作品がなおも面白いものでありうると証明している。また、主演のジェシー・バックリーにとって、キャリアを大きく飛躍させる一作となった」という代表的な評価がある。

 ジェシー・バックリー、ただいま32歳、声量もありルックスもよいし大いに飛躍の可能性が高い女優の一人と言える。

 その彼女が刑務所から出所する場面から映画が始まる。どんな罪で? と思っていたら、刑務所の中に薬物を投げ入れた罪らしい。だから一言でいえば、ガラの悪い女なのだ。刑務所から放免されたとはいえ、足首に電子監視装置の足輪を装着させられてイライラする。それが八つ当たりとなり、かつて勤めていたバーもクビ。
 このバーのステージでカントリーをよく歌っていた。憧れのテキサス州ナッシュビルにあるラジオ局WSM土曜日の有名番組「グランド・オール・オープリー」を目指していたが、それが手が届かないと思うとさらにイライラが募る。二人の子供は、もうおばあちゃん子になっている。典型的な母マリオン(ジュリー・ウォルターズ)対娘の対立の構図なのだ。

 ローズは少し心を改めて、家政婦として働く。このお屋敷の奥様スザンナ(ソフィー・オコネドー)がカントリー・ミュージックが気に入り、なにかとローズを支援する。それを快く思わない夫のサム(ジェイミー・シーヴェス)から「手を引け、引かないと前科をばらすぞ」と脅される。ローズはスザンナにサムの脅しに触れずに、真実を告白する。

 失意に打ちひしがれるローズを見た母親マリオンは、20年働いてきて貯めたお金を「ナッシュビルへ行きなさい」とローズに手渡す。ローズは逡巡するが、思い切ってテキサスへ。ナッシュビルを歩き回り、空気を吸い、ビールを味わい、グランド・オール・オープリーの会場にもなるライマン公会堂の誰もいないステージで歌ったが、なにかが心の琴線に触れた。

 そして、かつてのバーのステージ。母、二人の子供、スザンナとスザンナの子供たち、それに地元の人々で賑やかな雰囲気の中、Glasgow(No Place Like Home)を歌うローズ。グラスゴーは心の故郷、こんな場所は他にはないと、生まれ育った土地への回帰を歌い上げる。
ジェシー・バックリーの歌声が素晴らしい。
それではその「Glasgow」を聴きましょう。
 ちなみに私は今でもカントリーが好きで、家でも車の中あるいはウォーキングにも親密な友となっている。さらにWSMという放送局、wsmonline.comでネットでも放送されている。

ジェシー・バックリー1989年アイルランド、キラニー生まれ。

ジュリー・ウォルターズ1950年イングランド、バーミンガム生まれ。

ソフィー・オコネドー1969年ロンドン生まれ。

ジェイミー・シーヴェス1973年スコットランド、エディンバラ生まれ。
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映画「もう終わりにしよう I'm Thinking of Ending Things」2020年Netflix配信

2022-01-27 14:35:26 | 映画
 この人とは「もう終わりにしよう」と思いながら言い出せないなか、雪が降る中を彼が運転する車に乗って彼の両親に会いに行く。

 「もう終わりにしよう」と思っているのは、ルーシー(ジェシー・バックリー)。その相手の彼は、ジェイク(ジェシー・プレモンス)。

 道中はぎこちなさもうかがえるが、会話を続けてジェイクの両親の家に。両親も愛想はいいが普通の人と少し違う。ジョイクが突然怒ったり、両親が急に老け込んだり、若返ったりという不思議な現象が起こる。

 雪がますます降り続く中、夜遅くジェイクの実家を辞去した。ジェイクは思いもしないところへ連れていく。それはジェイクが通った高校だった。深夜でも明かりは煌々と点り、高齢の男が廊下でモップ掛けをしている。

 ジェイクを呼んでも返事がない。そうこうするうちにある教室からジェイクが出てくる。出てくるがすぐに若い男に変わる。ルーシーはその男とバレエを踊る。

 静寂が訪れる。モップ掛けの男が、仕事を終えて帰宅の車に乗る。しばらくして、その男が素っ裸になり外へ出る。そしてジェイクがパーティで歌を歌う。一台の車がすっぽりと雪をかぶっているシーンで終わる。

 どういうことかさっぱり分からなかった映画だ。原作を読み何度か映画を観てブログにアップにした人がいる。その人の見方が納得するかな。ここでは種明かしはしません。URLを下記しておきます。
 ただし、この映画を観た後にしてください。観ていないとこの人のブログも理解できないでしょう。

 この映画で注目したのは、ルーシー役を演じたジェシー・バックリーなのだ。バレエを踊るシーンの体の柔軟性のある動きが素晴らしい。さらに、カントリー歌手を目指すという映画「ワイルド・ローズ」の歌唱も素晴らしいといわれる。この映画はぜひ観たい。当然この「もう終わりにしよう」の演技も称賛されている。ジェイク役のジェーシー・プレモンスの評価も高い。

監督
チャーリー・カウフマン1958年ニューヨーク州ニューヨークで生まれる。独特のストーリー展開が持ち味。

キャスト
ジェシー・プレモンス1988年テキサス州ダラス生まれ。俳優を10代から続けているベテラン。

ジェシー・バックリー1989年アイルランド生まれ。王立演劇学校出身

トニ・コレット(ジェイクの母)1972年オーストラリア生まれ。

デヴィッド・シューリス(ジェイクの父)1963年イギリス生まれ。「ハリー・ポッター」シリーズのルーマス・ルービン役で知られる。

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映画「パワー・オブ・ザ・ドッグThe Power of the Dog」劇場公開2021年11月

2022-01-23 20:12:04 | 映画
 高く評価されるこの映画、私が観たのはNetflixで。パソコンでドラマや映画を楽しむのは午後9時ごろからで、夕食時のアルコールのせいもあって観ているときに居眠りも多い。したがってこの映画も二度観になった。

 まずタイトルに迷う。犬の力? 犬は出てくるがさして重要でもない。最初に頭に浮かんだのは、メキシコの麻薬カルテルのお話、ドン・ウィンズロウ著「犬の力」だった。欧米人が「犬の力」という言葉を使うには何か意味があるのではないか。 と思い調べてみた。

 聖書では、犬は汚らわしいものとなっていて、旧約聖書に犬の力の表現があるそうな。その意味するところは、汚らわしい犬から転じて、傲慢、意地悪、嫉妬、不埒、聖書の詩篇「私の魂を剣から、私の命を犬の力から救い出して下さい」から採られており「犬」は邪悪を意味していて、その邪悪を演じるのはフィル・バーバンク(ベネディクト・カンバーバッチ)。

 物語は1925年モンタナの牧場。経営しているのはバーバンク兄弟。兄フィルはイエール大学出で、カリスマ性と威圧的な態度でカウボーイたちをまとめる牧童頭を務める。

 弟ジョージ(ジェシー・プレモンス)は口下手ではあるが誠意のある態度を示し、きちっとした服装でいわゆる営業と会計を担っている。

 弟のジョージは、街でレストランを経営するローズ(キルスティン・ダンスト)に思いを寄せている。それをフィルは、「あんな女と付き合うな」と一蹴している。それでもジョージはローズと結婚した。

 ジョージの大きな家に移り住んだローズと息子のピーター(コディ・スミット=マクフィー)に嫌がらせで攻撃するのがフィルだった。ローズは酒浸りになるし、およそ男らしさに欠け中性的な外科医志望のピーターも、カウボーイから、からかいの対象にもなる。

 落ち着かない日々が続くが、フィルがピーターに乗馬を教えはじめてから雰囲気が変わっていく。お互いに信頼を得たとき、フィルは怪我の悪化で死亡する。この怪我は去勢手術の時負ったもので、炭そ菌に感染したものだった。

 ローズとジョージは、ほっとした雰囲気だが、ピーターは悲しみに暮れていた。聖書の「剣と犬の力から、わたしの魂を解放したまえ」という文言をじっと見つめるのだった。

 第78回(2021年9月)ヴェネツィア国際映画祭コンペティション部門に出品され銀獅子賞を受賞した。

監督
ジェーン・カンピオン1954年4月ニュージーランド生まれ。映画界で世界的に成功した女性監督の一人といわれる。

キャスト
ベネディクト・カンバーバッチ1976年7月ロンドン生まれ。
キルスティン・ダンスト1982年4月ニュージャージー州うまれ。
ジェシー・プレモンス1988年4月テキサス州ダラス生まれ。。
コディ・スミット=マクフィー1996年6月オーストラリア・メルボルン生まれ。

 追って、ジョージ役を演じたジェシー・プレモンスは「もう終わりにしよう」という映画で賞賛されている。これは難解な映画である。

コメント
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