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映画「マッドバウンド~哀しき友情Mudbound」2017年制作 Netflix配信

2022-01-10 13:22:35 | 映画
 1930年代、ミシシッピ州の白人の男と黒人の男の友情物語。農業を営む白人の兄ヘンリー(ジェイソン・クラーク)は、すべてがうまくいくという信念の持ち主。弟のジェイミー(ギャレット・ヘドランド)は、兄に忠実で裏切らないと心に決めていた。

 とはいっても性格は、全く異なっていた。ヘンリーは寡黙でやや強圧的な態度を見せる。ジェイミーは、その反対で陽気で多弁。ヘンリーの妻ローラ(キャリー・マリガン)は、夫を愛していないが従順な態度をとっている。そして心の奥深いところでは、ジェイミーを求めていた。こう書くとロマンティックなラブロマンスと思うかもしれないが、そうではない。

 1941年12月7日ラジオから流れてきたのは、大日本帝国(エンペラー・オブ・ジャパン)が真珠湾を攻撃したというニュースだった。

 ヘンリーの近くに黒人で小作人のジャクソン一家が住んでいる。一家の長ハプ・ジャクソン(ロブ・モーガン)とフローレンス(メアリー・J・ブライジ)夫妻は、土地を買って独立したいと思っていた。

 そんな中、第二次世界大戦の影響で長男のロンゼル(ジェイソン・ミッチェル)とヘンリーの弟ジェイミーも召集される。
 戦場ではロンゼルが軍曹で戦車隊を率いている。ジェイミーは戦闘機のパイロット。欧州戦線では、進軍に伴い黒人でも大歓迎された。ジェイミーは、乗員二人を失いながら生き延びたとき、機体を並べてきた黒人パイロットから祝福を受け、ともに戦った仲間として人種差別意識がなくなっていた。

 戦いは終わった。帰国した故郷は何も変わっていなかった。白人至上主義者のKKK(クー・クラックス・クラン)の跋扈、相変わらずの黒人蔑視、封建的な家父長制を持つ一家という中で、戦友としてジェイミーとロンゼルは親しくなっていく。しかし、周囲は悪化を続け悲劇が待ち受けていた。余情が残り満足感に満たされた映画だった。

ヘンリーの妻ローラを演じたキャリー・マリガンは、1985年イギリス生まれ。二度のアカデミー主演女優賞ノミネートがある。

ヘンリー役のジェイソン・クラークは、1969年生まれオーストラリア出身。

ジェイミー役のギャレット・ヘドランドは、1984年ミネソタ州生まれ。声が素晴らしくいい俳優だ。

 この作品で高く評価されたのが、黒人一家を支える主婦フローレンスを演じた メアリー・J・ブライジと長男ロンゼルを演じたジェイソン・ミッチェル。

 メアリー・J・ブライジは、白人から卑下され反抗もできない当時の女は、表情を変えずただ言われたことに従う境遇を見事に演じていた。

 ジェイソン・ミッチェルも同様に、黒人の悲哀を遠慮がちに演じていたのが印象的だった。ちなみに メアリー・J・ブライジは、R&Bの歌手でもありクイーン・オブ・ヒップホップ・ソウルとも称されている。この映画の挿入歌「Mighty River」を歌っている。1971年ニューヨーク、サウスブルックリン生まれ。

ジェイソン・ミッチェルは出自不明。

それではメアリー・J・ブライジの「 Mighty River」を聴きましょう。

                   
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映画「ファーザー」2020年公開

2021-12-13 20:33:54 | 映画
 認知症の映画である。内閣府が発表する我が国の65歳以上に占める認知症の割合が2025年に20%、5人に一人になり、2060年には33.3%、3人に一人という予測をしている。寿命が延びれば当然認知症患者も増えるということになる。いずれ完治するようになるかもしれないが、当面深刻な状態が続く。

 この映画は認知症を患うアンソニー(アンソニー・ホプキンス)を支える娘アン(オリヴィア・コールマン)とのおかしさと哀しさが描かれる。

 アンソニーは、イギリス特有のフラットとかテラスハウスとかで呼ばれる住宅に住んでいる。その住宅に向かうアンの描写から始まる。まだアンソニーは自分の娘に向かって「あんた誰?」という段階でないにしろ病状は進行する。

 これを演じたアンソニー・ホプキンスは、第93回(2021年)アカデミー賞の主演男優賞を受賞する。アンを演じたオリヴィア・コールマンは、助演女優賞にノミネートされた。

 ほとんどフラットの部屋での展開。こういう舞台劇のような演出には、俳優の力量が試される。83歳のアンソニー・ホプキンスは、「演技というものは絵空事であって、その要素はすべてシナリオの中にある」という持論のもと、シナリオのチェックや暗記は徹底していて役柄になり切った演技を見せる。1991年の「羊たちの沈黙」に次ぐ主演男優賞だった。

 アンを演じたオリヴィア・コールマンは、1974年生まれの47歳。彼女も2018年「女王陛下のお気に入り」で主演女優賞を受賞している。

 私は映画やドラマを観るとき、街のたたずまい、郊外の風景、住宅のデザインや部屋の様子それに使われている音楽に関心が向く。

 アンソニーのフラットも結構広い。4LDKぐらいはありそう。そんなのを観ながら、掃除は誰がする? なんて思ったりする。キッチンも広い。映画の中のキッチンだからすっきりしている。家庭の匂いはしない。ただ、水を使うキッチンには手を拭くタオルが必要で、わたしなんかはシンクの前にある引き出しの取っ手にぶら下げている。この映画はどうかとみれば、やはり取っ手にぶら下がっていた。ニヤリとした。

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映画「パリの調香師 しあわせの香りを探して Les Parfums」2020年公開

2021-12-03 15:45:39 | 映画
 妙に印象に残る映画。コメディ映画とされているが、チャラチャラとしたコメディでなくゆっくりと湧き上がる可笑しさに包まれている。わけありの男女が遭遇した人生のひとコマ。

 かつてはディオールの香水「ジャドール」を調合し、フランス、いや欧米中に名を馳せた調香師アンヌ(エマニュエル・ドゥヴォス)。  
 嗅覚を失い現在治療中で舞い込む仕事というのは、皮革のなめし方の不備で不快な臭いを何とかしてほしいというのや、工場の排気の悪臭対策など本来求める香水の調合とは程遠い。それに気難しさも併せ持つ中年女性のアンヌでもある。

 アンヌが仕事に出かけるときには、スーツケースやバッグの数が3、4個になりタクシーを使うことになる。そこにやってきたのがギョーム(グレゴリー・モンテル)。

 この男、離婚していて一人娘のレア(ゼリー・リクソン)を元妻と交互にそれぞれ何週間かをともに過ごす計画を立てていた。社会福祉士からは一部屋ではレアのプライバシーが守られないから転居をするべきだと言われている。

 失業するわけにいかない。交通違反も度重なり雇い主も解雇をほのめかす。ギョームは頼み込んで、アンヌのもとへやってきた。このギョームという男、元日産の会長カルロス・ゴーンを連想する顔立ち。最初は苦々しく思いながら観ていたが、話が進むにつれ気にならなくなった。

 アンヌの気難しさに辟易していたころ、帰着して車のトランクから荷物を降ろしていた時、アンヌが持つバッグをひったくろうとした男がいた。ギョームはそいつにとびかかって追っ払った。ところがアンヌの一言が「飛び掛かるなんてどうかしてる」ひったくりを防いだのに、こんなことを言われれば誰だって頭にくる。
 「あなたは、お願いしますもありがとうもない。命令するばかりだ」とギョームは荷物を置きっぱなしにして去っていった。

 アンヌは過去の栄光を引きずっているのだろうけど、現実を見ていなかったアンヌにもギョームのひと言が影響したのか地方への出張にギョームを同道させた。人間というのは表面的には嫌なヤツと思うが、今回のように列車で移動となれば、座席に座って何かしら言葉を交わすことになる。するとそれぞれの人間性が表れてくる。

 ギョームは家庭の事情を話し「娘の行きたいところへ行っている」と言えば、アンヌは「それもいいけど、あなたの行きたいところへも行けばいい」これも一理あるわけで、ギョームは娘を海岸に連れて行った。波打ち際で戯れる父と娘。絵になる風景ではある。

 私は思うんだが、ラヴロマンスの映画も渚のデートってよくあることで、海というのはロマンティックな雰囲気を醸し出すのは確かなようだ。家族の団欒にもよく使われる。私の家から約40分も走れば九十九里海岸に達し、波打ち際を歩くと映画のシーンを思い出すことになる。

 アンヌがギョームを連れ歩くうち、ギョームの非凡さにも気づき始め「私の仕事を手伝ってくれないか」のセリフとともに、これからの二人の関係を暗示するかのような余情を残して映画は終わる。

 ちなみのディオールの香水「ジャドール」を実際に調合したのはチャリス・ベッカー。アマゾンでこの香水の値段を調べてみると、100ml 約14000円ぐらい。ml当たりにすると50mlや10mlよりも安い。

 出演の エマニュエル・ドゥヴォスは、1964年フランス生まれ。2002年ジャック・オーディアール監督「リード・マイ・リップス」でセザール賞主演女優賞受賞。

グレゴリー・モンテルは、1976年フランス生まれ。

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映画「The Guity/ギルティ」2018年デンマーク映画

2021-09-27 14:29:03 | 映画
 デンマーク語の題名「Den skyldige有罪」。絶対おすすめの映画。緊急通報指令室でアスガー・ホルムは、翌日の審問を控えてかかってくる電話をボランティアとして受けていた。
 「自転車でこけた、救急車を」なんていう緊急性も危険性もないくだらない類の電話ばかりが続く。アスガーがボランティアとして電話を受けるが、審問が済めば元の職場、麻薬課の刑事と推測できるに復帰するようなのだ。

 そんな中、誘拐されたというイーベンと名乗る女から電話がかかる。アスガーは、一つ一つ手順を踏んで事件を解決しようとする。それも電話回線だけなのだ。この指令室から各方面のパトカーや救急車を管理する部門に緊急連絡することになる。

 従って画面は、アスガーの顔と暗い部屋が映るだけ。ようやく犯人を突き止める。それは元夫のミケルだった。ところがそれが間違っていたことが分かる。

 そして、アスガーの審問の内容もあきらかになるというアスガーの顔と暗い部屋だけで表現する技法には、暗い闇を走るような不安もおぼえるし、あとの感動にほっとする。

 以下ウィキペディアから「第91回アカデミー賞外国語映画賞にはデンマーク代表作として出品され、最終選考9作品に残った。ジェイク・ジレンホール主演によるアメリカでのリメイクが報じられている」さらに作品の評価として「Rotten Tomatoesによれば、113件の評論のうち、98%にあたる111件が高く評価し、平均して10点満点中7.94点を得ている」とある。
監督グスタフ・モーラー1988年スウェーデン生まれ。
キャスト アスガー役のヤコブ・セーダーグレン1973年スウェーデン生まれ。

 私は、アマゾンプライムで鑑賞したが、DVDの発売もある。なお英語版のジェイク・ギレンホール主演の「The Guilty/ギルティ」は、2021年9月24日からNetFlixで公開されている筈。

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映画「パリ、嘘つきな恋」2018年制作

2021-03-05 15:35:47 | 映画
 「パリ、嘘つきな恋」これは日本向けの題名、日本人はパリと言えば何でも飛びつくからだ。そういう私もそのうちの一人。原題が「Tout le monde debout(みんな立ち上がろう)」なのだ。

 この映画の監督・主演しているのがフランク・デュボスク。この男なかなか渋いのだ。1963年11月生まれの撮影当時55歳。落日前の夕日のように、輝くひとときなのだろう。    

 その男ジョスラン(フランク・デュボスク)は、ナイキ、リーボック、アシックスという靴メーカーの代理店店長なのだ。しかも独身で女好き。一人前に部下にゲキを飛ばすが嘘つきでもある。

 どれだけの報酬があるのか、住んでいるのはプール付きだとよ。このプールがのちに劇的な効果を発揮するんだよ。親友の医師とランチを楽しんでいるとき、母の死を知らせるスマホが鳴った。

 ポルシェをぶっ飛ばして実家の母の部屋で、母の車いすに座って、母の好だった曲を流していた。そこに現れたのが向かいに住む胸の谷間もあらわなジュリー(キャロライン・アングレード)。

 「うわっ、魅力的だ」ととっさの嘘で足の悪い男になった。だが、ジュリーが紹介したのが足の不自由な姉フロランス(アレクサンドラ・ラミー)だった。ジュリーの姉妹愛なのだ。

 そのフロランスは、バイオリニストで各地を団員とともに回り、テニスの腕も相当なもの、しかもユーモアも持ち合わせていた。デートを重ねるうちにジョスランは、フロランスを愛し始める。フロランスの目にも好意が浮かんでいる。したがって嘘の身体障碍者を装うジョスランは、真実を告白しなければならない。いつ?どこで?どのように? 観る方もいろいろ考える。レストランなんかでの正攻法ではこの恋は壊れる。交通事故のよな偶発的な出来事が必要なのだろう。まさにそれが起こる。

 フロランス役のアレクサンドラ・ラミーが、徐々に美しさを増していくに従いジョスランの気持ちも高揚するという仕掛けになっている。当初のフロランスは、化粧気もなく普段着で気に留める存在でなかった。コンサートに招待されて2階の特別席からのフロランスを見ると、長いまつ毛とアイシャドウに口紅、ドレス姿で華やかな雰囲気。テニスの試合も清潔な色気に包まれる。レストランでの楽しい時間。

 ジョスランは、フロランスを自宅に招待する。この頃には、二人の恋する気持ちが最高潮、夜のとばりにプールの水がキラリと光る。「泳ごう」とジョスラン。大人の恋のコメディ。ハッピーエンディングで幸せ。





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映画「さらば愛しきアウトロー」2018年制作

2021-03-02 16:04:50 | 映画
 70代の優しい銀行強盗として名をはせたフォレスト・タッカーの実話を描く。観終わって犯罪映画だったとは思えない余情と、なぜか心が落ち着く感覚を味わった。

 タッカーを82歳のロバート・レッドフォードが演じ、一人だけの牧場主ジョエルを69歳のシシー・スペイセクが演じる。強盗仲間に72歳のダニー・グローバー、69歳のトム・ウェイツ。ハント刑事にケイシー・アフレックという配役。

 身なりのいい老紳士を装うタッカーは、鞄を片手に銀行の支店に入っていく。支店長に預金の話や相続の話、ローンの話を持ちかけながらスーツの内ポケットを見せる。そこには拳銃の銃杷が覗いている。「じゃあ、現金を用意していただきましょうか」

 タッカーは、取引を終えたビジネスマンのように回転ドアから外に出る。当然銀行は、警察直通のスイッチを押す。遠くからパトカーのサイレンが聞こえてくる。路地から路地を駆け抜けフリーウェイに乗る。トラックのボンネットを開けて覗き込む女がいる。トラックの前に車を止めて「どうしたんですか、ちょっと見ましょうか」。その横をサイレンを鳴らしたパトカーが走り去る。

 覗き込むタッカーではあるが、何もしようとしない。女は即座に判断した「この男は車に詳しくない」。タッカーは女を送り届けるしかない。これがキッカケで牧場主のジョエルを知ることになる。途中の食堂でタッカーは、セールスマンを名乗り「今は人生で出来なかったことのリストを作っている」と言う。普通はやったことを回想するが、やれなかったことをリストアップはしない。やれなかったことの方がはるかに多いからだ。タッカーの場合は、失敗した銀行強盗のことなのだろう。

 実在したフォレスト・タッカーは、1920年6月23日に生まれ、2004年5月29日83歳で亡くなる。脱獄の名手でもあった。18回成功して12回失敗した。つまり脱獄30回挑戦し18回の成功は、成功率6割の高率ということになる。誰にでも好感を持たれた銀行強盗として歴史に残る。

 それにしても人は80歳を過ぎると見事に変貌する見本のようなロバート・レッドフォード。80歳を過ぎたら自身の若さの残滓は、一切ないことを覚悟しよう。

 監督は、 映画監督、脚本家、編集技師、映画プロデューサーであるテキサス州ダラス在住のデヴィッド・ロウリー、1980年生まれの40歳。




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映画「追憶 TEH WAY WE WERE」1973年制作

2020-11-18 20:37:20 | 映画
 アカデミー賞主題歌賞を受賞し1974年ビルボード1位を記録した曲” TEH WAY WE WERE”が好きで、ある日ふとその映画が観たくなった。

 1936年生まれで84歳のロバート・レッドフォードの若かりし頃にも興味があったし、勿論バーブラ・ストライザンドの若さにも触れたかった。この映画はバーブラ・ストライサンドが主役でちょっと毛色の変わったラブ・ストーリーだ。

 学生時代に創作クラスで顔見知りのハベル・ガードナー(ロバート・レッドフォード)とニューヨークの街角でばったり出会うケイティ・モロスキー(バーブラ・ストライサンド)。

 ケイティは学内でアジ演説を行う共産主義者。それに対して儀礼的に拍手を送るハベル。ハベルは海軍士官、この二人が恋に落ち結婚、懐妊。

 第二次世界大戦終結後、ハベルは文才を生かしハリウッドで脚本家として仕事をしていた。1950年代、共和党上院議員ジョセフ・マッカーシーの共産主義者を摘発する運動、マッカーシズム(赤狩り)と呼ばれ政府職員、マスメディア、ハリウッドの映画関係者などを攻撃した。

 ハベルも標的にされ監視されるに及び、妻のケイティから距離を置くようになる。距離を置くだけでなくかつてのガールフレンドとよりが戻り始める。事情を察知したケイテは、内包していた闘争心が再び蘇り反対運動に傾倒していく。

 所詮、主義主張の違う二人。お互いの立場を理解して円満に離婚。月日が経ち再びニューヨークの街角。遠くにいるハベルと妻らしい女性を見つけたケイティは、懐かしさのあまり二人に近付く。妻らしき女性に軽く挨拶。
 ハベルとケイティはハグ。この時、二人の中でどんな感情が交錯したのだろう。ケイティは「この人、顔に少ししわが増えたようだけど、体も以前と変わらない。太ってもいないし痩せてもいない。それにあの懐かしいコロンの匂い」と思うかもしれない。

 ハベルは「ケイティは少し太ったかな。相変わらずあの香水なんだな。おいおいケイティ、あまりしがみつかないで! カミさんがみているだろう? 気持ちは分かるよ、ありがとう」

 ハグの後、ケイティは言う。「子供は元気よ。家に来て!」しかし、ハベルは「それはできないよ」彼の頭の中では、そう、それが私たちのやり方だし、追憶(The way we were)にとどめておこう。それが一番いい。二人の人生最後と思われる別れが、エンディングとなる。

 想い出が私のこころの隅々に浮かんで消える 淡く水彩画のような思い出 あの頃の私たちの想い出が―歌詞の出だしのフレーズをこんな意訳があった。

 では、ラスト・シーンに重ねてバーブラ・ストライサンドが歌う「TEH WAY WE WERE」をどうぞ! ちなみに、バーブラ・ストライサンド71歳のロンドン公演の歌声に衰えはない。
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映画「スキャンダルBombshell」2019年制作 劇場公開2020年2月

2020-10-01 10:53:36 | 映画
 トランプ大統領のお気に入りでハリウッドの20世紀フォックスを親会社に持つ、ニューヨークにあるFOXニュースで起きたセクハラ訴訟を基に女性キャスターの反逆を描く。

 FOXニュースのスローガンは、”公平でバランスのとれた報道” ”最も注目され信頼される報道” ”本当のニュースと本当の正直な意見の報道” ”FOXが報道し、それを視聴者が決めることを目標とする”意訳すると以上のような素晴らしい理念に満ちている。

 ところが2016年7月、最高経営責任者ロジャー・エイルズに対して女性キャスターが提訴してセクハラ疑惑が表面化した。FOXニュースのスローガンが薄汚れたものとなり、同年夏ごろ「Fair and Balanced公平・公正」のスローガンを降ろさざるを得なくなる。

 女性キャスター二人とキャスター候補一人、メーガン・ケリー(シャーリーズ・セロン)、グレッチェン・カールソン(ニコール・キッドマン)、キャスター候補のケイラ・ポスピシル(マーゴット・ロビー)が出演し、セクハラ男ロジャー・エイルズにジョン・リスゴーが演じる。

 このうちほぼ主役を演じるのは、メーガン・ケリー役のシャリーズ・セロン。この映画がセクハラを題材としていることで、セリフに「ヤったの?」というわいせつな表現もある(こんなセリフはまだましなほう)。シャリーズ・セロンは、仲間内のミーティングでもっと過激な言葉も平気で聞き流す。

 この訴訟の発端を作ったのがニコール・キッドマン演じるグレッチェン・カールソンなのだ。ニコール・キッドマンのセリフにはわいせつな部分が一切ない。これは憶測でものを言うしかないが、キッドマンはわいせつなセリフを断ったのではないかと思う。ニコール・キッドマンの雰囲気からして、下ネタは似合わない。

 映画の結末は明らかで、ロジャー・エイルズは辞任する。これを観る前にキャストを調べなかったから、シャリーズ・セロンが出てきたとき彼女とは思わなかった。

 それもその筈、日本生まれの辻一弘、アメリカ国籍を取得してカズ・ヒロと名乗る。Prosthetic makeup desinger(特殊メイクデザイナー)としてゲイリー・オールドマンをウィンストン・チャーチルそっくりにメイクしてアカデミー賞を受賞、世に知れ渡る。
 そのカズ・ヒロの手になるシャリーズ・セロンのメーガン・ケリーが誕生したからだ。ウィキメディアによると、シャリーズ・セロンからの申し出だったようだ。この結果、本作で2020年第92回アカデミー賞メイクアップ&ヘアスタイリング賞受賞となった。

 この他に、シャリーズ・セロンがアカデミー賞主演女優賞にノミネート、マーゴット・ロビーもアカデミー賞助演女優賞にノミネートした。

 作品そのものは特段に評価されていないが、セクハラという微妙な問題だし、深く掘り下げすぎるとまるでポルノかということになる。この程度の表現でいいのかと私は思う。

 ちなみに原題の「Bombshell」は、ボムシェル=爆弾転じて物凄くセクシーで魅力的な女性という俗語。





 
 それでは、カズ・ヒロのメイクに対するコメントと出演三人の女性が素顔で語る動画をどうぞ!


監督
ジェイ・ローチ1957年ニューメキシコ州アルバカーキ生まれ。

キャスト
シャリーズ・セロン1975年南アフリカ生まれ。2003年「モンスター」でアカデミー賞主演女優賞受賞

ニコール・キッドマン1967年ハワイ州ホノルル生まれ。2003年「まぐりあう時間たち」でアカデミー賞主演女優賞受賞

マーゴット・ロビー1990年オーストラリア、ゴールドコースト生まれ。

ジョン・リスゴー1945年ニューヨーク州ロチェスター生まれ。

スタッフ
カズ・ヒロ1969年京都市生まれ。ロサンゼルス在住。


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映画「ロニートとエスティ 彼女たちの選択」2017年制作 劇場公開2020年2月

2020-09-21 16:23:33 | 映画
 今や一人でも観客を呼べるのではないかと思われる女優、レイチェル・ワイズとレイチェル・マクアダムス共演による同性愛映画。

 ニューヨークで写真家として成功したロニート(レイチェル・ワイズ)は、ユダヤ教のラビを務める父の死去で、イギリスの生まれ故郷に帰ってくる。

 ホテルにチェックインする前に父の後を継ぐドヴィッド(アレッサンドロ・ニヴォラ)の家を訪ねる。そこには多くの人々が集まっていたが、故郷を突然去ったロニートに周囲の視線は冷たい。さらに分かったのは、ドヴィッドの妻がエスティ(レイチェル・マクアダムス)だったことだ。驚くと同時に愛し合った過去の感情が蘇ってくる。

 「神は3種の生き物を創られた。天使と獣だ。そして人間です。天使は清らかな言葉から生まれ、悪を行う意思は持たない。御心に背くことは一瞬たりともできません。獣は本能のみに従います、造物主が創った通りに動くんです。モーセ五書には、天使や獣などの創造にほぼ6日かけたと書かれている。そして日が暮れる直前、少量の土を取り、お創りになったのが男と女です。最後の付け足しか、神の最高の功績か。人間とは何でしょう? 男と女とは? 

 人間には反抗する力があります。生き物の中で唯一自由意志を持つのです。我々は天使の純粋さと獣の欲望の狭間にある”選択”は特権であり重荷です。選ぶしかないのです。この複雑に絡み合う人生を……」と死の直前、父が聖職者の前で残した言葉である。

 ”選択”を認めている教義でありながら、ロニートは同性愛者故に故郷を去ったのだろう。ユダヤ教では、性衝動や性行為は自然なもので、ではあっても快楽を伴わない性行為は罪とされる。だだし、妊娠・出産を重視する。それゆえに同性愛は、妊娠・出産とは相いれないものと言える。

 快楽を伴わない性行為ってどんなのがある? 夫婦であっても義務的で不本意なものや強要する行為が思い浮かぶ。たしかに、エスティとドヴィッドとの行為には情熱が感じられないが、ロニートとエスティの行為には、目を見張るほど執拗で思いやりを感じたものだ。

 とは言っても、私にはなかなか理解できないのが同性愛なのだ。神に聞きたいのは、男と女を創造したのに、どうして同性愛者まで創ったのですか? 生産性がなく快楽だけですねと。

 この映画、批評家の評判がいいそうだ。出演俳優の演技に負うところが多いという。一味違う同性愛映画と言える。
原題は、Disobedience不服従。


監督
セバスチャン・レリオ1974年チリ、サンチャゴ生まれ。2017年「ナチュラル・ウーマン」でアカデミー賞外国語映画賞受賞。

キャスト
レイチェル・ワイズ1971年イギリス、ロンドン生まれ。2005年「ナイロビの蜂」でアカデミー賞助演女優賞受賞。

レイチェル・マクアダムス1978年カナダ、オンタリオ州生まれ。2015年「スポットライト世紀のスクープ」でアカデミー賞女優賞受賞にノミネート。

アレッサンドロ・ニヴォラ1972年マサチューセッツ州ボストン生まれ。
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映画「9人の翻訳家 囚われたベストセラーLES TRADUCTEURS」2019年制作

2020-09-14 16:15:49 | 映画
 巧妙に仕組まれた復讐の犯人探し。出版社のオーナー、エリック・アングストローム(ランベール・ウィルソン)は、ミステリー小説オスカル・ブラック著「デダリュス」完結編を全世界同時発売に向け、フランス郊外の屋敷に9人の翻訳家を集めた。

 この作品は、登場人物が心の中で思ったことを、順序づけたり整理したりせず、そのままの形で提示する 「意識の流れ」という叙述技法で書かれている。

 句読点のない読みづらい文章の連続は翻訳も一苦労。そういう特異なことから、極端に事前漏洩を恐れたため、全員地下室での生活となった。外出はおろかスマホも取り上げられた。

 しかし、地下室での生活は快適だった。広いプールや贅沢な食事、広いベッドルームといった具合。ここで毎日20ページの原稿を翻訳していくことになる。2ヶ月で完成を予定していた。

 その9人は、●ロシア語に翻訳するのがカテリーナ・アニシノバ(オルガ・キュリレンコ)
●英語にはアレックス・グッドマン(アレックス・ロウザー)
●スペイン語にはハビエル・カサル(エドゥアルド・ノリエガ)
●デンマーク語にはエレーヌ・トゥクセン(シセ・バベット・クヌッセン)
●イタリア語にはダリオ・ファレッリ(リッカルド・スカマルチョ)
●ドイツ語にはイングリット・コルベル(アンナ・マリア・シュトルム)
●中国語にはチェン・ヤオ(フレデリック・チョー)
●ポルトガル語にはテルマ・アルヴェス(マリア・レイチ)
●ギリシャ語にはコンスタンティノス・ケドリノス(マノリス・マブロマタキス)。

 ところが「冒頭10ページをネットに公開した。24時間以内に500万ユーロを支払わなければ、次の100ページも公開する。要求を拒めば、全ページを流出させる」という脅迫メールが届く。密室の犯罪、そう、この屋敷の中に犯人がいる。それだけは間違いない。ではどうやって? そこが問題だ。これ以上書くとネタバレになるので、匂わせる程度に。

 英語翻訳のアレックスは、アングストロームにしきりに著者に会わせろという。アングストロームは、当然拒否を続ける。会わせたくても会わせられない事情があっる。それはアングストロームが著者と思う人物を殺しているからだ。

 では、なぜアレックスは著者に会いたがるのだろう。カギはこのアレックスにある。それは映画を観てのお楽しみに。

 ちなみに「意識の流れ」という叙述技法の例として挙げられるのは、ジェイムズ・ジョイスの「ユリシーズ」が有名。ブルームの妻モリーの心のうちは、浮気をしていても本心では夫を愛していることが語られる。「それで彼あたしにいいのかって聞いたのyes山に咲くぼくの花よyesと言っておくれって言うからあたしまず彼の背中に両腕を回してyes彼を抱き寄せてあたしの胸を押しつけたらいい匂いがしてyes彼の心臓ものすごくドキドキしててyesあたしは言ったのyesいいわよってyes」やっぱり句読点がないと読みづらい。




監督
レジス・ロワンサル1972年フランス生まれ。

キャスト
ランベール・ウィルソン1958年フランス生まれ。

オルガ・キュリレンコ1979年ウクライナ生まれ。

アレックス・ロウザー1995年イギリス生まれ。

エドゥアルド・ノリエガ1973年スペイン生まれ。

シセ・バベット・クヌッセン1968年デンマーク生まれ。2015年「アムール、愛の法廷」でセザール賞助演女優賞受賞。

リッカルド・スカマルチョ1979年イタリア生まれ。

アンナ・マリア・シュトルム1982年ドイツ生まれ。

フレデリック・チョー1977年ベトナム生まれ。

マリア・レイテ出自未詳。

マノリス・マブロマタキス1962年アテネ生まれ。

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