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映画 「ミッシング(‘03)」荒野に生きる女の強さ

2006-05-29 14:06:19 | 映画
 ニューメキシコ州1885年、牧場を営み治療師でもあるマギー・ギルクソン(ケイト・ブランシェット)の所へ、家族を捨ててインディアンの部族に入った父サミュエル・ジョーンズ(トミー・リー・ジョーンズ)が治療を受けにと称して帰ってくる。
 しかし家族を捨てた父を素直に受け入れられるはずもない。マギーの心の中では、父はすでに死んでいた。冷淡に扱い追い出してしまう。
               
 ところが、町へ祭り見物に出た牧童のブレイク、娘のリリーとトッド達は一晩中待っても帰ってこなかったが、早朝無人の馬が一頭帰ってきた。
 それは末娘トッドの愛馬だった。娘たちを探しに出て目にしたものは、トッドの無事は確認されたものの、ブレイクの死とリリーが誘拐されたことだった。
 マギーは父が誘拐したと思い町の保安官事務所を訪れるが、そこには泥酔して留置された父がいた。
               
 翌朝単身捜索を覚悟しているとき、父があらわれ捜索に加わることになる。父とマギー、娘のトッドの三人が、ニューメキシコの荒涼とした原野に馬を駆る。
 娘を誘拐したのは、アパッチ族の呪術師が首領の人身盗賊団だった。マギーたちは待ち伏せに失敗したり、鉄砲水に襲われたりし、それに呪術師との格闘で父を失うが娘を救出する。

 マギーが父に戻ってきた理由を問いただす場面
父“ガラガラ蛇に咬まれた”
マギー“何ですって?”
父“祈とう師は守り札をくれて、1年うさぎの肉を断ち毎朝祈りをあげて家族によくしろと”
マギー“そのために戻ってきたの?それで毒が消えると祈とう師が言ったから?”
父“そうだよ。ガラガラ蛇に咬まれると魂も毒される。はっきり言えばそういうことなんだな”父は単純で素朴な男だった。

 家族を捨てた理由もマギーは問いただす。
マギー“なぜ家族を捨てインディアンのところへ、なぜなの?”
父“あるアパッチの男は、木にとまっている鷹を見て家を出てそれっきり。あの世でかみさんにわけを聞かれ「鷹が飛び続けたから」と。次から次に何かが起こり家に戻れなくなる。俺なんかいない方が家族のためだ。いても周囲に迷惑をかけるだけ。俺はそういう厄介な男だと自分で気づいたのさ。やることなすことが周囲を傷つける。特に愛するものたちをね”
マギー“許せないわ”
父“許しは乞わぬ”

 マギーはおそらく父が家に戻ってきたわけを考えたのだろう。父には理屈っぽいところは一切なく、ただ単純で素朴で直情的なだけ。父の行為は家族を思う一つの選択だった。家族に対する愛を失ってはいない。マギーは父を許すことにした。荒涼としたニューメキシコ州の原野を見ていると、西部劇の醍醐味を感じる。
 
 早撃ちガンマンやタフなカウ・ボーイが出てくるわけでもない。厳しい自然を相手にまた偏見に満ちた男どもとも対等に渡り合わなければならない。当時の強い女をケイト・ブランシェットは存在感あるものにした。
 末娘トッドを演じた子役のジェナ・ボイドも意志のしっかりした娘を完璧にこなした。特に泣く場面がうまかった。

 オープニングが一風変わっていて、屋外便所の場面から入っていく。あまりお目にかからない場面だろう。しかもケイト・ブランシェットを座らせているとは。意図を測りかねるが、ケイト・ブランシェットもよくOKしたものだ。

 監督はロン・ハワード1954年3月オクラホマ州ダンカン生れ。「バックドラフト」「アポロ13」などの作品があり‘01年「ビューティフル・マインド」でアカデミー監督賞を受賞。
 キャスト トミー・リー・ジョーンズ1946年9月テキサス州生れ。‘93年「逃亡者」でアカデミー助演男優賞を受賞。ケイト・ブランシェット1969年5月オーストラリア メルボルン生まれ。’04年「エビエイター」でアカデミー助演女優賞を受賞。エヴァン・レイチェル・ウッド1987年9月ノースカロライナ州生れ。この映画では、誘拐されるリリーを演じる。ニコール・キッドマンのように端正な顔立ちが印象的。期待される女優の一人。

ジョナ・ボイド1993年3月テキサス州ベッドフォード生れ。今後に期待がかかる。
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