父親から突然「俺はゲイなんだ」と言われたらどのように対処するだろうか。大喜びすることは絶対にありえない。複雑な心境に落ち込むことは確かだろう。
一般に同性愛者といわれる人たちの「どうして同性がいいのか?」という疑問に明確な答えは今のところなさそうだ。ただ、「異常」「倒錯」「精神疾患」とはみなされず治療の対象にはなっていない。私にはどうしても生理的に受け入れるのは難しい。
オリヴァー(ユアン・マクレガー)の両親は1955年に結婚した。オリヴァーから見る家庭の空気はどことなくよそよそしくて父の顔が見えない。美術館長の父が出勤するとき妻におざなりな頬へのキスが思い出される。
母は風変わりだった。オリヴァーのいる部屋に入って来て左手を魔法の杖のように振り上げて真っ直ぐに降ろす。オリヴァーは、銃で撃たれたように倒れたりする。また、展覧会で踊りだしたり、見知らぬ人の肩に顔を載せたりする。家に帰ると母は自室に籠もってしまう。オリバーは取り残される。
そういう育て方で大人になったオリヴァーは内向的で人とのコミュニケーションが苦手。その母が亡くなると父ハル(クリストファー・プラマー)はゲイを宣言する。ゲイのクラブに入って人生を謳歌し始めると同時にガンも宣告される。
アートディレクターの仕事の傍ら父の看病もこなすオリヴァー。ある日、女優だというアナ(メラニー・ロラン)とめぐり合う。38歳のオリヴァーにとって思ってもみない出会いだった。
父の顔も見えるようになったし、父も新しいゲイ人生を楽しんでいるみたいだったが、今は写真立ての中で微笑んでいる。ぎこちなさと不器用が重なって一度はアナを失うが、オリヴァーの自宅で再会したとき父ハルのゲイ友達募集の原稿が二人の人生を変えようとしていた。
”セックスの相手を求む。出来ればその後、恋人か友人に、1対1でなくても。当方78歳の老人、まだ魅力も精力もある。引退した美術史家。美術、インテリア、ガーデニングが趣味。パーティや犬との散歩も。身長180センチ、体重72,5キロ、髪はグレー、目はブルー、むら毛(胸毛)あり。お互いに愛撫し合い、優しく愛し合うのが好み”
読み終わったアナ「愛に貪欲だったのね」見つめ合う二人に何かが起こった。
オリヴァー「僕たちどうなる?」
アナ「分からない」
オリヴァー「試してみよう」
なお、本作でクリストファー・プラマーは、2011年アカデミー助演男優賞を受賞している。
監督
マイク・ミルズ1966年カリフォルニア州バークレイ生まれ。
キャスト
ユアン・マクレガー1971年3月イギリス、スコットランド生まれ。
クリストファー・プラマー1929年12月カナダ、オンタリオ州トロント生まれ。
メラニー・ロラン1983年2月フランス、パリ生まれ。