1808年、フランス、ブルゴーニュ地方で小作人の息子として働くソブラン(ジェレミー・レニエ)は、いつの日か自分の手でヴィンテージ・ワインを作る夢を見ていた。そこへ現れたのが堕天使のザス(ギャスパー・ウリエル)だった。
“堕天使(だてんし)とは、主なる神の被造物でありながら、高慢や嫉妬がために神に反逆し、罰せられて天界を追放された天使、自由意志をもって堕落し、神から離反した天使である”とウィキペディアにある。
ということは最も人間くさく愛や憎しみを熟知し共感できる天使ということになる。まさにザスはソブランに愛を感じた。そして、苗木を与えた。ついでに心構えも。
「大事なのは土壌だ。土を味わうことから始める。ブドウにいい土壌は必要ない。やせた土地は鉱物や石が多くミネラル分がある。苗木は必要な養分を必死に吸収する。苗木と造り手の努力がワインの味を決める。それにいいワインは一生かかる」ザスは一束の苗木を置いて天空へ舞い上がった。
その苗木から世間が注目するワインが誕生した。この地方のシャトーの主は、ソブランを高く評価していて娘オーロラ(ヴェラ・ファーミガ)に「彼を管理責任者に雇え、ただし愛はダメだぞ!」と言い残してこの世を去った。
二人は共同でワイン造りを続けた。作柄の不順が続いた。映画の結末の見当がつくにしても、この堕天使の意味に戸惑う。なにも天使から苗木を貰わなくてもいいだろうし、天使に恋愛感情を持つ必要もない。男の天使だからなお複雑だ。
しかも、羽を切り取って人間になりワイン造りを手伝うに至っては私の思考は大渋滞に陥った。
どうしてかというと、天使のときは、ソブランの内なる葛藤を具象化したものと受け止めていたからだ。ともあれ、かなり地味な映画ではある。
監督ニキ・カーロ1966年9月ニュージランド、ウェリントン生まれの女性監督。
キャスト
ジェレミー・レニエ1981年1月ベルギー、ブリュッセル生まれ。
ギャスパー・ウリエル1984年11月フランス、グローニュー=ビランクール生まれ。
ヴェラ・ファーミガ1973年8月ニュージャージ州バサイク郡生まれ。
ケイシャ・キャッスル1990年3月ニュージランド生まれ。