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切られたザイル、不可能な生還「運命を分けたザイル ’03」劇場公開2005年2月

2015-11-26 17:37:59 | 映画

 アンデス山脈に聳える標高6600メートルのシウラ・グランデ峰西壁に挑んだジョー・シンプソンとサイモン・イェーツの二人のパーティが生死を分けるほどの体験をする。

 この体験をジョー・シンプソンは本にした。それをベースに’99年の「ブラック・セプテンバー/五輪テロの真実」でアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞したケヴィン・マクドナルドがドキュメンタリー・タッチで描いたもの。

 ジョー・シンプソンとサイモン・イェーツ両人も出演していて、当時の状況を説明する。登攀・下山の場面などは俳優が演じる。従って生還したのが分かっていて見ることになるので緊迫度は減殺される。

 それでも映像は緊迫した場面を描出し、孤高の存在感をかもし出すシクラ・グランデ峰西壁の美しさは些細なことを圧倒する。6600メートルの頂上から切れ落ちる垂直の壁には鳥肌が立つ。私のような登った山は、せいぜい3000メートルが一番高いという人間には見るだけの存在だ。

 頂上に向かって伸びる氷の壁。アイスアックスを両手に鋭い爪のアイゼンで蹴り込みながらの登攀。難所がいくつもあり恐怖に襲われることもある。闘志は頂上へと誘う。

 「事故は80%下山途中に起こる」エリックが呟く。その予見は的中する。「北稜が複雑でなければ歩くような調子で楽に下れると思った。だが、実際は難路だった。ゾッとした。西壁は垂直で雪庇(せっぴ)が張り出し、東壁は900メートル下まで急峻な雪ひだが続く。ショックだった。あまりにも危険で太刀打ちできないように見えた」とサイモン。

 雪庇を踏み抜いて落下。ジョーは右足の骨折という致命的なアクシデントに見舞われる。こういう場合、下山は難しい。一人が支点を確保して交互に降りるが、骨折状態では無理だ。

 サイモンが選んだのは、45メートルのザイルを二本結び90メートルにして片方をジョー、片方をサイモンに結べば90メートル下ろせる道理だ。支点が取れないので確保用のバケツを掘って体を支える。

 体感温度氷点下60度吹雪の中の下山。そんな中、ジョーは滑落して宙吊りの状態になる。25メートル下にはクレパスが口をあけていた。絶体絶命の危機。

 1時間半もジョーの反応を待ったサイモンは決断した。スイスアーミー・ナイフを取り出しザイルを切断した。映画のハイライトは、むしろここからだろう。

 巨大クレバスに落下しなかったジョーではあるが、上に登るという選択肢はない。下るとなればクレバスしかない。下りれば出口があるかもしれない。その目算は当たった。

 骨折した右足を引きずりながら這って行くのは地獄の苦しみだった。挑戦者や生き抜く人たちと言えども恐怖や諦めようという思いで自分を見失いそうになる。それを克服する手段はあるのか。恐怖は用心深さにとって代わり、諦めの思いは20メートル動こうと変化する。

 不可能の生還は、幸運をもたらす。もう誰もいないと思っていたベースキャンプにサイモンがいた。現地でのロケらしい。山の映像が素晴らしい。なお、シウラ・グランデ峰は、この二人の登頂後、だれも成功していない。
山の映像はこちらでどうぞ!
            
監督
ケヴィン・マクドナルド1967年10月スコットランド、グラスゴー生まれ。

キャスト
ジョー・シンプソン1960年9月マラヤ生まれ。
サイモン・イェーツ1963年イギリス生まれ。
ジョー役ブレンダン・マッキー北アイルランド生まれ。
サイモン役ニコラス・アーロン出自不詳
コメント
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