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スポーツ映画のような音楽映画「セッションWHIPLASH ’14」劇場公開2015年4月

2015-11-04 20:33:52 | 映画

               
 音楽映画でこんなにスリルとサスペンスがあるとは思わなかった。107分が瞬く間に過ぎてしまった。それにしてもこの若手監督、目が離せない存在になった。1985年生まれだから、まだ30歳。2013年に「グランドピアノ狙われた黒鍵」というユニークな視点の脚本を書き、この「セッション」を脚本・監督を務めた才人と言ってもいいのではないか。べた惚れしてしまった。

 シェイファー音楽院の秋学期、1年生でドラム専攻のニーマン(マイルズ・テラー)は、フレッチャー指導教官(J・K・シモンズ)の嫌がらせとも思えるしごきを受ける。ドラマー3人を競わせニーマンは落とされる。頭に来たニーマンは、「殺してやる!」と言って掴みかかる。

 指から血がしたたり落ちるほど練習したドラム・セットも納戸に放り込んだ。ドラムからの決別だった。しかもかつての教え子が交通事故で亡くなったと涙ながらの教室での話が嘘だと判明する。

 そんなある日、街角のジャズ・カフェでかつての指導教官テレンス・フレッチャーが特別出演してピアノを弾いていた。何気なく足を踏み入れたが、フレッチャーに目ざとく見つけられて、密告があって学院を追われたという。
 別れ際に、いまさらこんなことは言えないがと言ってJVCのジャズコンサートでプロのバンドを編成してカーネギーホールで演奏する。曲目は「キャラバン」と「ウィップラッシュ」だ。これに慣れたドラマーが見当たらないから、よかったら出てくれ。

 この2曲はニーマンが必死で練習した曲だった。納戸からドラムセットが引っ張り出された。カーネーギーホールでドラムセットの前に座っているとフレッチャーが近づいて「私をナメるなよ。密告者はお前だな?」あっけにとられるニーマン。

 フレッチャーはマイクに近づいて新曲の「アップスウィンギン」を演奏すると言う。ニーマンは楽譜を探したがない。「殺してやる!」という言葉を忘れていないフレッチャーが、ニーマンの人生を破壊しようとしているとしか思われない。

 演奏が始まったら案の定メンバーから罵声を浴び、とどめは「お前は無能だ」のフレッチャーの言葉。どこまでも意地悪で陰湿なフレッチャー。

 一旦は舞台を降りたニーマンだが、思い直して再びドラムセットの前に座る。ここからは痛快な二人の男のバトルが展開される。フレッチャーがマイクで言い終わらないうちにニーマンは得意の「キャラバン」を叩きだす


 まるで怨念が乗り移ったようなスティックさばき。不満顔のフレッチャーも次第に乗ってくる。この場面は圧巻だ。やがて静かに曲が終わる。二人の顔に笑みが浮かぶ。

 この笑みは和解の笑みではない。フレッチャーにしてみれば、今日はやられたが、いずれみていろの思いだろう。ニーマンは、この欺瞞に満ちたくそ親父と心を通わせるつもりは毛頭ない。ドラムを叩けと言われれば叩いてやるが、過去は許しはしない。と私は受け取った。甘い感傷的なエンディングでないのがいい。二人の男の極端な対比が映画を面白くしている。
           
           
           
           

その圧巻の場面の「キャラバン」をどうぞ!
    
  
監督
デイミアン・チャゼル1985年1月ロードアイランド生まれ。

キャスト
マイルズ・テラー1987年2月ペンシルベニア州生まれ。
J・K・シモンズ1955年1月ミシガン州デトロイト生まれ。
コメント
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