↑ 講談社刊「週刊モーニング」月1回連載中 コミック1巻 (1989年09月発売) ~ 第28巻(2009/9/23発行)まで発刊中
第27回 平成15年度 講談社漫画賞一般部門 受賞
フジテレビ 水曜劇場 「天才柳沢教授の生活」 としてテレビドラマ化された。(2002.7.3 - 2002.9.18)
満天さん にお借りしています。
20年にわたる長期連載中のこのマンガを読んでいるとしみじみ感じることがある。
「サウイフモノニ ワタシハナリタイ」
と思ってしまうのだ。
御存じ 宮澤賢治の詩、『雨ニモ負ケズ』 の一節である。
柳沢教授は某大学の経済学の教授である。年は60歳を少し過ぎたあたり。滅多なことでは表情を変えず、いつでも冷静沈着で、私には理想の大人に見える。いつもこのように泰然と世の中を過ごすことができればそれだけで人生の勝利者というものだ。
50半ばを過ぎても人の評判を気に病み、いつも何かに怒りを覚えて暮らしている私なぞには到達できそうもない理想の生活に見える。
だが、教授も初めからこういう性格ではなく、子供の頃は大変賢い子供ではあったが、今とは違う感情もたくさん持っていた。その頃のエピソードから読めるのも、長期連載ならではである。
教授とて人間、現在でも不愉快な気持ちにさせられる学生もいるし、理解しがたい同僚、ご近所様もいる。大体最愛の (表立っては言っていないようだが) 妻のことも時々良く分からないようだ。(笑)
しかし、教授の えらいところ は、分からないを分からないで済ませず興味を持った対象を研究しようとするところだ。人はなぜそういう行動をするのか、とわかろうと努力して対象を研究する。
対象は多岐に渡り、愛猫やはては幽霊までと幅広い。経済学者なのに人間及び世界の不思議の観察が何よりも好きなのだ。経済活動も人間の行う行為なのだから、当然かもしれないが、度を越した観察・研究に読者はユーモアを覚え、大いに笑い、最後に考え込むことになる。
コミックスの巻数が少ないうちは単に教授の生活の一般人離れした行動を楽しく読んで行くが、途中から教授を 狂言回し にした人間観察マンガになっていく。これは同じ作者の
「不思議な少年」
と同じ。そちらは不思議な少年を狂言回しにして人々の営みを見せている。人間が好きなのは結局作者なのだ。そして又、人間を見たいのが読者であるということか。
人間より猫観察の方が楽しいトミー。