↑ 秋田書店 AKITAレディスコミックス 1987年12月5日初版~ 1994年 大23回日本漫画家協会賞・優秀賞受賞作。初出 1986年~1999年「Eleganceイブ」(秋田書店)
tooru_itouさんにお借りしています。
とても骨太の作品です。TVドラマになったので、うっかり昼メロのような女の一生ドロドロメロドラマだと思ってたら違いました。(作者様、ファンの皆様すみません)
「女の一代記」 には違いなく、巻数は 25巻 と大変な長編です。そして戦前、戦中・戦後・昭和の終わりまでの歴史・風俗・建物などをよく検証して描いてあります。これも作者にとっては当たり前のことで、ここでこんな事を言うのは大変失礼なことかもしれませんが。
主人公の 瞳子(とうこ) は終戦時19歳という事ですから、うちに同居している84歳の叔母より一つ下の設定でほぼ同年代です。叔母の話や何かで読んだ終戦直後からしばらくの話があちこちに戦後の世相として出てきます。
特攻帰り (くずれ) のヤクザの話
配給物資の食糧だけで暮らし、死にそこなった大学教授
(実際に闇米を拒否して食糧管理法に沿った配給食糧のみを食べ続け、栄養失調で死亡した事で知られる佐賀県出身の裁判官がいる。)
当時流行りのファッションやバッグなどの造形
テキヤが仕切っていた闇市の活気のある様子
細かいところではケーキのことを 洋生(ようなま) という 等々
中でも百貨店の御曹司に嫁いだ 瞳子 が戦争で義父や百貨店を失くし、夫も帰ってこない中、失意の家族を励ましながら百貨店再生に奔走する、というくだりがあるのですが、叔母に聞いた話とちょっと重なります。
叔母が30歳になってから初めて勤めに出た会社は、女社長がやっているブラウスの問屋さんでした。そこの社長さんは戦争から帰って来て ふぬけ になっている夫を見限り、子供を育てるために米兵相手のお土産物から始まって銀座和光にあった PX (post exchange 基地内売店) にも店を出すようになったそうです。このエピソードがそっくりですね。当時はこういうしっかりした商売人は他にもいたでしょうが。
その後その女社長さんの会社は順調に成長し、叔母が入った昭和30年頃は人出不足でBG (ビジネスガール) の募集をしていたんでしょう。字の綺麗な叔母は気に入られ、その後34年ほどこの会社に勤めました。
昭和40年代、50年代くらいまでは業界でも有名な女社長さんだったようです。しかし娘婿の代になり、ブラウスそのものも以前よりは売れなくなって10年ほど前でしたかついに倒産してしまいました。叔母は元同僚にそれを聞いて寂しそうでしたね。
それはさておき世の中が落ち着き、夫も戻って商売もいよいよ大きくなっていく中盤でも、「おしん」 のモデルになった ヤオハン の創業者のひとりを思わせるエピソードがあったり、私鉄沿線の開発の仕方が描かれていたり。
中・高年の読者には戦後商業史の表裏を読めてこれが結構面白いんですよ。
モデル探しをしたり、文献を出せと言っているんではなくて、よく調べて噛み砕いて分かりやすく描いているな~と感心するんです。連載中も老若男女多くのファンからの支持があったといいますから、過去を知らない人でも楽しめるのでしょう。
瞳子の二番目の姉が前半の人間たちを繋ぐ狂言回し的な役割で出てきます。彼女は、 社会主義者の恋人 を殺され、戦後は新聞記者になったりテキヤの女房になったり、主人公の瞳子より波乱万丈な人生を送りますが、他にも様々な個性的女性が登場して女の人生見本市みたいです。これも自分の平凡な一生とひき比べてマンガを読む醍醐味を感じますね。
中盤の狂言回しは義理妹の 和音 (かずね) さん。彼女は女優になりますが、ずっと実家にいるのでみんなの事情がよく分かり、読者の目となって物語を俯瞰しています。しかし彼女の人生にもにもドラマがあり、実在の有名監督を彷彿とさせるような監督が出てきたりします。(もちろん、そのまま事実ではありません)
11巻からは子供達の時代が始まり、何とか表面は落ち着いてきた大人達に変ってあっちこっち悩んだり突っ走ったりやってくれます。(笑)
あまりあらすじばらししても何なのでもうやめときますが、時間のある時にじっくりと読みたい大河マンガの一つです。
大変面白く読みました。 tooru_itou様、ありがとうございます。m(_ _)m
tooru_itouさんにお借りしています。
とても骨太の作品です。TVドラマになったので、うっかり昼メロのような女の一生ドロドロメロドラマだと思ってたら違いました。(作者様、ファンの皆様すみません)
「女の一代記」 には違いなく、巻数は 25巻 と大変な長編です。そして戦前、戦中・戦後・昭和の終わりまでの歴史・風俗・建物などをよく検証して描いてあります。これも作者にとっては当たり前のことで、ここでこんな事を言うのは大変失礼なことかもしれませんが。
主人公の 瞳子(とうこ) は終戦時19歳という事ですから、うちに同居している84歳の叔母より一つ下の設定でほぼ同年代です。叔母の話や何かで読んだ終戦直後からしばらくの話があちこちに戦後の世相として出てきます。
特攻帰り (くずれ) のヤクザの話
配給物資の食糧だけで暮らし、死にそこなった大学教授
(実際に闇米を拒否して食糧管理法に沿った配給食糧のみを食べ続け、栄養失調で死亡した事で知られる佐賀県出身の裁判官がいる。)
当時流行りのファッションやバッグなどの造形
テキヤが仕切っていた闇市の活気のある様子
細かいところではケーキのことを 洋生(ようなま) という 等々
中でも百貨店の御曹司に嫁いだ 瞳子 が戦争で義父や百貨店を失くし、夫も帰ってこない中、失意の家族を励ましながら百貨店再生に奔走する、というくだりがあるのですが、叔母に聞いた話とちょっと重なります。
叔母が30歳になってから初めて勤めに出た会社は、女社長がやっているブラウスの問屋さんでした。そこの社長さんは戦争から帰って来て ふぬけ になっている夫を見限り、子供を育てるために米兵相手のお土産物から始まって銀座和光にあった PX (post exchange 基地内売店) にも店を出すようになったそうです。このエピソードがそっくりですね。当時はこういうしっかりした商売人は他にもいたでしょうが。
その後その女社長さんの会社は順調に成長し、叔母が入った昭和30年頃は人出不足でBG (ビジネスガール) の募集をしていたんでしょう。字の綺麗な叔母は気に入られ、その後34年ほどこの会社に勤めました。
昭和40年代、50年代くらいまでは業界でも有名な女社長さんだったようです。しかし娘婿の代になり、ブラウスそのものも以前よりは売れなくなって10年ほど前でしたかついに倒産してしまいました。叔母は元同僚にそれを聞いて寂しそうでしたね。
それはさておき世の中が落ち着き、夫も戻って商売もいよいよ大きくなっていく中盤でも、「おしん」 のモデルになった ヤオハン の創業者のひとりを思わせるエピソードがあったり、私鉄沿線の開発の仕方が描かれていたり。
中・高年の読者には戦後商業史の表裏を読めてこれが結構面白いんですよ。
モデル探しをしたり、文献を出せと言っているんではなくて、よく調べて噛み砕いて分かりやすく描いているな~と感心するんです。連載中も老若男女多くのファンからの支持があったといいますから、過去を知らない人でも楽しめるのでしょう。
瞳子の二番目の姉が前半の人間たちを繋ぐ狂言回し的な役割で出てきます。彼女は、 社会主義者の恋人 を殺され、戦後は新聞記者になったりテキヤの女房になったり、主人公の瞳子より波乱万丈な人生を送りますが、他にも様々な個性的女性が登場して女の人生見本市みたいです。これも自分の平凡な一生とひき比べてマンガを読む醍醐味を感じますね。
中盤の狂言回しは義理妹の 和音 (かずね) さん。彼女は女優になりますが、ずっと実家にいるのでみんなの事情がよく分かり、読者の目となって物語を俯瞰しています。しかし彼女の人生にもにもドラマがあり、実在の有名監督を彷彿とさせるような監督が出てきたりします。(もちろん、そのまま事実ではありません)
11巻からは子供達の時代が始まり、何とか表面は落ち着いてきた大人達に変ってあっちこっち悩んだり突っ走ったりやってくれます。(笑)
あまりあらすじばらししても何なのでもうやめときますが、時間のある時にじっくりと読みたい大河マンガの一つです。
大変面白く読みました。 tooru_itou様、ありがとうございます。m(_ _)m
戦後を逞しく生き抜いた女性の一代記…受賞もしたそうな大作なら読んでおかねば!と思いました
文庫も出ているようなので、bookoffに行ってみます~(笑)
この表現、エエと思います(笑)
まぁ、次ぎから次ぎへと…でしたもん(ハハハハ)
呆れる内容もあったんですが、それでも引き付けてやまないのは
やっぱり「華」かな?
一人、一人が「華」があり、人の目を気にせず
自分の人生を生きているから引かれたのかもです
瞳子が生きておったら幾つになる?とか思ってましたが…
そうですが…叔母上と…(ハハハハハ)
現在83歳とすれば、瞳子なら今も何かに没頭してるでしょうな~
富士の見える家で、ボーっと過ごすような女じゃない気がします(笑)
華やかな絵柄に、ドラマチックな展開と、ハーレクインを思わせる作品ですけど、トミー。様の仰るように、
>戦前、戦中・戦後・昭和の終わりまでの歴史・風俗・建物などをよく検証して描いてあります
これがしっかり描いてあるところが、一番の面白味だと思います。
そうです! 昼ドラになっていたんで、見たことなかったのにドロドロドラマだと思ってました。ちょっとはそういう要素もあったTVドラマに仕立ててあったのかしら ?
読み応えがあって、私も失礼ながら改めて 「佐伯 かよの」 さんという作家さんを認識させていただきました。
絵柄がそんなにも好きでなかったので、あまり読んだことなかったんです。
ぜひ機会があったら読んでみてください。
このマンガ読み始めてすぐ、瞳子が生まれるシーンで思わずのけぞりましたよ。うちの叔母とほぼ一緒の年だとね。
作者は 昭和 を描きたかったんだろうから、年は昭和と同じというのがいいんでしょう。うちの叔母は正確には大正末年の7月生まれで、昭和元年はわずか年末の1~2週間しかなかったはずですから、瞳子は昭和2年生まれの設定なのかなと思いました。
女の人生見本市
耐え忍ぶ女から瞳子のようなバリキャリまで、いろいろ出てきましたね。こちとらどっちにもなれないのでマンガで楽しませていただきました。(笑)
私はあまり読んでことなくて、長編は初めて読ませていただきました。これは文句なく面白いですね。女性の一生 + 昭和 という時代をあまねく見せてくれました。佐伯さんの代表作ですよね。
いろんな女性が出て来てちょっとした人生勉強にもなりましたね。みんな一生懸命生きてたな~。自分も頑張らなくちゃと思わせてくれます。
闇米を拒否して栄養失調で死亡のお話はあまりにも有名ですよね。
十人十色で同じマンガを読んで、(満天)さんと(とみー。)さんで
記事がまるで違うのを面白く拝見しました。
(とみー。)さんは私と同年代なんで感想も私と近いです(^o^)。
私は戦後の商業史とか時代背景を面白く読んでました。
「人生見本市」のストーリーが次どうなるの?とページを
次々めくってしまう面白さがあります(笑)。
(すず)さんも面白かったと言ってるのが解かります♪。
佐伯かよの作品では「姫」と「緋の稜線」は別格ですもの(笑)。
(すず)さんへ横レス
>私も佐伯さんの作品が好きで、他作品のコミックも持っているし、
~(すず)さんが持ってるコミックは何だろ?と予想
まず代表作のひとつ「星恋華」、芸能界のお話だから違うかな?
ドラマチックな展開とハーレクインを思わせる「口紅コンバット」かな?
では、私のお気に入り「錆(にび)色蝶々」と「ドリーム・ストリート」?。
とにかく、楽しんで佐伯かよの作品を読まれたようで
今回貸した私としては、なにより♪(^o^)。
大作を貸して頂き、じっくり読むことができました。ありがとうございます。m(_ _)mこちらこそ感想アップが遅れ、すみません。
一部経済小説を読むようで、なるほど~と楽しかったです。相当資料も読みこんでいらっしゃるんでしょうね。
せっかくですので、今2度目を読んでいます。以前から借りっぱなしの 「口紅コンバット」 他と一緒にお返ししようと思っていますが、今しばらくお貸しくださいませ。
m(_ _)m