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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成29年(2017)9月10日(日曜日)弐
通巻第54287号
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中国、ロシア最大手の石油企業の大株主へ
中国華信能源(CEFC)、ロフネフツの14・2%を1兆円で
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不思議なディールである。
中国の「民間企業」(事実上は共産党の先兵)である「中国華信能源」(葉簡明CEO)は、夏頃から噂のあったロシア最大の資源企業「ロフネフツ」の株式14・2%を取得し、ロシア政府、BP(19・75%)に次いで第三位の株主となる。
この株式はカタール政府ファンドとスイスの資源企業グランコアの持ち分を買い取るかたちで、買収資金は93億ドルといわれる。
なにが不思議かと言えば、中国は5000万ドルを超える海外企業の買収を事実上、禁止している。このため王健林率いる万達集団などは、予定していたハリウッド映画や北欧の映画館チェーン買収ができず頓挫している。海航集団、安邦保険なども海外買収案件の悉くが暗誦に乗り上げている中、この例外的な、しかも巨額の買収がなぜ可能なのか。
習近平の外交戦略の目玉「一帯一路」の具体的構想に寄与できるうえ、資源企業への出資は、中国の「国家戦略」だからである。
既報のように中国はサウジのアラムコの大株主をめざしており、その取引条件は人民元建て取引。アメリカのドル基軸体制を迂回路で挑戦する仕儀でもあり、ワシントンは警戒している。石油先物取引を人民元建てとする取引所も近く上海に開設する。中国は世界最大の原油輸入国である。
さてロフネフツである。
ロシアの最大の資源企業であり、世界一の石油とガスの埋蔵量を誇るとされるが、ソ連時代からの資源企業と言えばガスプロムとルークオイルであり、このロフネフツなる新興企業は、いかなる経過で誕生し、かつ巨大化したのか。
ロフネフツはプーチンの利権いがいの何者でもない。
クレムリンの権力者が、たらいまわしに社長を務めるガスプロム同様に、このロフネフツも、プーチン政権直営企業と見て良いだろう。
▲設立の動機も、企業活動の中味も怪しいことばかりだ。。。。。。。
ソ連崩壊のどさくさに、多くの国有企業がクーポン、バウチャー方式で売りに出され、マフィアと組んだ新興勢力が、旧社員等からバウチャーを買い集め、合法的に旧国営企業を乗っ取った。
1990年、ミハイル・ドルコフスキーという先見力に富んだ新興成金はメナテップ銀行という怪しげな銀行を経営していた。この銀行はクレムリン高官らの海外秘密口座を運営し、権力と近かったために急成長した。
ホドルコフスキーはユダヤ人、モスクワ生まれ。その彼が1998年に「ユコス」を設立し、買収につぐ買収で、またたくまに有数の資源企業となった。
ふんだんな資金を元に、ホドルコフスキーはプーチン批判を始め、プーチンの政敵や敵対的政党に多額を寄付し、テレビ局も買収してさかんにプーチンを攻撃、しかも大統領選挙への出馬をほのめかすなど、プーチンにとって明らかな邪魔となった。
脱税など冤罪をでっち上げ(ホドルコフスキーはエクソンモービルにユコス株の40%を売却し、多国籍企業への脱皮を狙っていた)、プーチンはホドルコフスキーを逮捕し、あまつさえ、彼の経営したユコスを解体し、巧妙な手口でロフネフツが乗っ取った。
つまり政敵の資源企業が、プーチン系の大企業への生まれ変わったのだ。
2013年、プーチンはホドルコフスキーに恩赦を与え、ドイツへ出国させた。
背後にはドイツ政府の働きかけがあったと言われ、家族とともにホドルコフスキーは、その後、スイスへ移住した。
2015年からは政治活動も開始した。ロンドンなどへ出かけて「プーチンは裸の王様」などと舌鋒鋭く、ロシア指導部を批判しているが、所詮は犬の遠吠え、ほぼ影響力を失ったと見て良いだろう。
そしてロフネフツの大株主に中国が加わるのである。
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● 資源はやがて暴騰します。その前に投資しようというのですから、少なくとも
先見の目はあります。当面の成功は保証されるでしょう。ただし株式が
没収されず、企業も滅びないという前提ですが・・・。
● 少なくとも日本の企業よりは先見の明があると言えます。賢帝の時代=知恵者の
時代は江戸時代や今のサウジアラビアを見ても分かるように、国家の財産の
殆どは、将軍徳川家やサウディ一族のものです。
● 1990年から知恵者の時代=賢帝独裁の時代となった、ロシアも似たようなものになると
いう事なのでしょう。戦国時代とは異なり、安定した独裁政治が後240年余も
続くのですから、中共の投資は、その面では保証されたともいえるでしょう。
● それを打破するのは、ロシアやサウジのエネルギー資源を購入しないで、かの国の
資源企業を衰退させるしかありません。出来るのか? 当面は
USAのエネルギー資源を購入するという手もあります。
● その準備をしていることは、トランプ大統領がパリ条約に入らず、資源外交をしている
事からも分かることは、以前にも書きました。又中南米やオーストラリアの
資源の購入や新たな開発と云う手もあるでしょう。
● 又は将来的には、日本近海のメタンハイドレートの開発と云う手段もあります。
いずれにしろ、中共の関与する国々での投資は、セイブするのが正解かも
しれません。中共の成功を阻止するのは重要な経済戦略です。
● 又は、中共が株式を売却せざるを得ない状況に追い込むというのも重要です。
つまり早い話が、中国の企業の衰退を狙い、外貨を稼げなくするのです。
これは日本は絶対やらなくてはいけない、経済の大戦略です。
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成29年(2017)9月10日(日曜日)弐
通巻第54287号
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
中国、ロシア最大手の石油企業の大株主へ
中国華信能源(CEFC)、ロフネフツの14・2%を1兆円で
****************************************
不思議なディールである。
中国の「民間企業」(事実上は共産党の先兵)である「中国華信能源」(葉簡明CEO)は、夏頃から噂のあったロシア最大の資源企業「ロフネフツ」の株式14・2%を取得し、ロシア政府、BP(19・75%)に次いで第三位の株主となる。
この株式はカタール政府ファンドとスイスの資源企業グランコアの持ち分を買い取るかたちで、買収資金は93億ドルといわれる。
なにが不思議かと言えば、中国は5000万ドルを超える海外企業の買収を事実上、禁止している。このため王健林率いる万達集団などは、予定していたハリウッド映画や北欧の映画館チェーン買収ができず頓挫している。海航集団、安邦保険なども海外買収案件の悉くが暗誦に乗り上げている中、この例外的な、しかも巨額の買収がなぜ可能なのか。
習近平の外交戦略の目玉「一帯一路」の具体的構想に寄与できるうえ、資源企業への出資は、中国の「国家戦略」だからである。
既報のように中国はサウジのアラムコの大株主をめざしており、その取引条件は人民元建て取引。アメリカのドル基軸体制を迂回路で挑戦する仕儀でもあり、ワシントンは警戒している。石油先物取引を人民元建てとする取引所も近く上海に開設する。中国は世界最大の原油輸入国である。
さてロフネフツである。
ロシアの最大の資源企業であり、世界一の石油とガスの埋蔵量を誇るとされるが、ソ連時代からの資源企業と言えばガスプロムとルークオイルであり、このロフネフツなる新興企業は、いかなる経過で誕生し、かつ巨大化したのか。
ロフネフツはプーチンの利権いがいの何者でもない。
クレムリンの権力者が、たらいまわしに社長を務めるガスプロム同様に、このロフネフツも、プーチン政権直営企業と見て良いだろう。
▲設立の動機も、企業活動の中味も怪しいことばかりだ。。。。。。。
ソ連崩壊のどさくさに、多くの国有企業がクーポン、バウチャー方式で売りに出され、マフィアと組んだ新興勢力が、旧社員等からバウチャーを買い集め、合法的に旧国営企業を乗っ取った。
1990年、ミハイル・ドルコフスキーという先見力に富んだ新興成金はメナテップ銀行という怪しげな銀行を経営していた。この銀行はクレムリン高官らの海外秘密口座を運営し、権力と近かったために急成長した。
ホドルコフスキーはユダヤ人、モスクワ生まれ。その彼が1998年に「ユコス」を設立し、買収につぐ買収で、またたくまに有数の資源企業となった。
ふんだんな資金を元に、ホドルコフスキーはプーチン批判を始め、プーチンの政敵や敵対的政党に多額を寄付し、テレビ局も買収してさかんにプーチンを攻撃、しかも大統領選挙への出馬をほのめかすなど、プーチンにとって明らかな邪魔となった。
脱税など冤罪をでっち上げ(ホドルコフスキーはエクソンモービルにユコス株の40%を売却し、多国籍企業への脱皮を狙っていた)、プーチンはホドルコフスキーを逮捕し、あまつさえ、彼の経営したユコスを解体し、巧妙な手口でロフネフツが乗っ取った。
つまり政敵の資源企業が、プーチン系の大企業への生まれ変わったのだ。
2013年、プーチンはホドルコフスキーに恩赦を与え、ドイツへ出国させた。
背後にはドイツ政府の働きかけがあったと言われ、家族とともにホドルコフスキーは、その後、スイスへ移住した。
2015年からは政治活動も開始した。ロンドンなどへ出かけて「プーチンは裸の王様」などと舌鋒鋭く、ロシア指導部を批判しているが、所詮は犬の遠吠え、ほぼ影響力を失ったと見て良いだろう。
そしてロフネフツの大株主に中国が加わるのである。
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● 資源はやがて暴騰します。その前に投資しようというのですから、少なくとも
先見の目はあります。当面の成功は保証されるでしょう。ただし株式が
没収されず、企業も滅びないという前提ですが・・・。
● 少なくとも日本の企業よりは先見の明があると言えます。賢帝の時代=知恵者の
時代は江戸時代や今のサウジアラビアを見ても分かるように、国家の財産の
殆どは、将軍徳川家やサウディ一族のものです。
● 1990年から知恵者の時代=賢帝独裁の時代となった、ロシアも似たようなものになると
いう事なのでしょう。戦国時代とは異なり、安定した独裁政治が後240年余も
続くのですから、中共の投資は、その面では保証されたともいえるでしょう。
● それを打破するのは、ロシアやサウジのエネルギー資源を購入しないで、かの国の
資源企業を衰退させるしかありません。出来るのか? 当面は
USAのエネルギー資源を購入するという手もあります。
● その準備をしていることは、トランプ大統領がパリ条約に入らず、資源外交をしている
事からも分かることは、以前にも書きました。又中南米やオーストラリアの
資源の購入や新たな開発と云う手もあるでしょう。
● 又は将来的には、日本近海のメタンハイドレートの開発と云う手段もあります。
いずれにしろ、中共の関与する国々での投資は、セイブするのが正解かも
しれません。中共の成功を阻止するのは重要な経済戦略です。
● 又は、中共が株式を売却せざるを得ない状況に追い込むというのも重要です。
つまり早い話が、中国の企業の衰退を狙い、外貨を稼げなくするのです。
これは日本は絶対やらなくてはいけない、経済の大戦略です。